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英語がベースとなっているカタカナ言葉の中には、さまざまな分野で独自の意味を持つようになったものが少なくない。「トランジション」もそんな言葉の一つだ。業界や分野ごとにまったく異なる意味で使われるため、「トランジション違い」が起きないように注意したい。
そこで本記事では、「トランジション」の基本的な意味を押さえた上で、ビジネス・スポーツ・映像・医療・IT・環境などの各分野における「トランジション」の意味について解説する。
「トランジション」とはどんな意味?
「トランジション(英:transition)」は、移行、移り変わり、転換、変遷(へんせん)、変化、過渡(かと)、変わり目などを意味する名詞。ラテン語の「transire(越えていく)」が由来で、「transi-(越えていく)」と「-tion(…こと)」の二語から成る。
トランジションは、英語でも多様な意味を持っており、話題の変化や政権の交替期間、音楽の転調、芸術様式の推移、生物学における塩基配列の置換などさまざまな分野で用いられる。
■「トランジション」は物事の変わり目を表す
「トランジション」は、ある状態から別の状態への移り変わりや、段階的な変化を指すために使われる言葉だ。どのような状態(事象)の移り変わりを表すかによって具体的な意味は異なるものの、段階的に変化していく物事に対して使われると捉えておくと理解しやすいだろう。
分野ごとに意味が異なる「トランジション」
移行や変化を意味する「トランジション」は、日本語でも業界・分野ごとに異なる意味を持つ。ビジネス、スポーツ、動画編集、医療、IT、環境の各業界・分野におけるトランジションの意味を見てみよう。
■ビジネス分野での「トランジション」はキャリアの転換を指す
ビジネスにおけるトランジションは、キャリアの転換期を指す。代表的なトランジションは、「学生から社会人への転換」「メンバーからマネジメント職への転換」「役職を外れる際の転換」の三つ。特に三番目のトランジションについては、役職を退いたあとの働き方やキャリアについて事前に考えておくことが望ましいとされる。
■サッカーやバスケの「トランジション」は攻守の切り替え
サッカーやバスケットボールにおけるトランジションは、攻守の切り替えを指す。これらのスポーツでは、攻撃(オフェンス)側はできるだけ長くボールを保持してゴールチャンスを狙い、守備(ディフェンス)側はできるだけ早くボールを奪い返して攻撃側に回ることが求められるため、トランジションを素早く行うことが重要となる。
■動画編集の「トランジション」は場面転換を示すための効果(エフェクト)
映像分野における「トランジション」は、動画編集においてカットとカットの間を自然に繋ぐために挿入される視覚効果を指す。
例えば、映画やYouTubeでは、場面転換時に画面が白くなったり(ホワイトイン/アウト)、半透明のシーンが前のシーンにゆるやかに重なったり(ディゾルブ)といった手法が用いられる。他にも、ズーム(拡大)、ブラックイン/アウト、スライド(押し出し)、回転(スピン)などのトランジションがある。
■医療・看護分野の「トランジション」は移行期医療
医療・看護分野における「トランジション」は、別名を「移行期医療」と言い、小児期医療から成人期医療への移り変わりを指す。医療技術の進歩により、先天疾患や小児期発症疾患の小児患者が思春期・成人期を迎えられるケースが増えていることから、患者の発達段階に応じて、成人診療科と連携し、本人の自律支援が行われている。
■IT分野での「トランジション」は本番環境に移行すること
IT分野における「トランジション」は、本番環境への移行を意味する。情報システムの運用・管理業務について定めたガイドライン「ITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)」で規定されたライフサイクルの一つで、設計したITサービスを実際の現場に導入し、稼働させることを指す。正式名称は「サービストランジション」。
■環境分野での「トランジション」は持続可能な社会への転換を意味する
環境分野における「トランジション」は、サステナブル(持続可能)な社会への移行を指す。例えば、脱炭素化に向けた企業の事業活動を後押しするための融資・投資を「トランジション・ファイナンス」と呼ぶ。
また、「トランジション・タウン」と呼ばれるイギリス発祥の市民運動・地域活動では、気候変動や経済的不安定からの回復を目指すさまざまな取り組みが行われている。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部