CMや作品で多用される竹内まりやの楽曲
この他、竹内まりやの楽曲は多くのCMや作品で聴くことができる。
2000年から毎年、冬が訪れると放映されるケンタッキーフライドチキンのCM曲「すてきなホリデイ」。この曲が流れると、だれもが自然と「クリスマス」が近いことを実感する。まさに季節を感じさせるロングヒットCMだ。
また、ストップアニメーション「ポケモンコンシェルジュ」の主題歌として昨年12月に発売された「君の居場所(Have a Good Time Here)」は、彼女らしいリズムとメロディで、ふんわりしたポケモンリゾートのイメージをストレートに届ける。
こんなにCMや作品で使われていれば、彼女の楽曲は今でも自然と耳に入ってくる。ファン以外にも、年齢層を問わず彼女の楽曲は知られていて当然だ。
現代の竹内まりやといえば…あいみょん?
同世代の友人には竹内まりやのヘビーリスナーが複数人いるので、私は竹内まりやリアル世代なのだと思う。ファンというにはおこがましい、受身的リスナーだが。
そんな私が今の若い世代に竹内まりやを説明するとしたら、「あいみょんかな」と答える。
こんなことをいうとファンに反論されるかもしれないが、私にはどうしてもそう感じられてしまうから仕方ない。
2人の曲に登場する女性は、とても似ているのだ。強がったり、見栄をはったりしていても、現在の自分をきちんと受け止められている、と感じる。そして、いずれも「0.5だけ前を歩く」女性であり、少しだけかっこいい。
以前、男性の友人がこんな面白い発言をしていた。「俺たちは竹内まりやが描く女性に振り回されている」と。彼曰く「『けんかをやめて』では、自分勝手な女性だと嫌になったが、『駅』では切なくてほっとないと感じる女性がいて、結局惹かれる」のだという。
それを言えば、あいみょんが描く女性像も負けていない。「ロックなんか聴かない」では簡単には靡かない女性にもやもやさせられながら、「マリーゴールド」のピュアでかわいい女性に最後はコロッと心を持っていかれてしまう。
竹内まりやの楽曲はなぜ令和になっても色褪せないのか
さらに、音楽家である知人に意見を聞いてみると、「竹内まりやの楽曲はちゃんと構成があるし、自然な流れで歌いやすい」と教えてくれた。
確かに、リズムも音の流れも難しいと思えるところは少ない。声にしても歌い方にしても同じで、個性的ではあるけど、個性が強いわけではない。つまり、これは耳障りのよさや心地よさにつながるように思う。
また、歌詞にも着目したい。竹内まりやの歌詞には、日々の「振り子のように揺れる思い」がストレートに表現されている。1つの楽曲のなかに悲観的な部分と前向きな部分が同居しているのだ。
これにより、切り取り方によって意図的にイメージが変わる。楽曲を部分的に使うCMなどに使いやすく、時代に合わせた印象を生み出せるのだろう。
歌詞の一つ一つを細かく分析すると、「ちょっと違うかな」と思うところがあっても、基本的にはそれぞれの世代に共感できる部分が必ず見つけられる。
誰もが「私のための曲」だと思える、そんなマジックが隠されている気がしてならない。
取材・文/内山郁恵