世界的求人サイトのIndeedは、女性が就労環境で直面する不平等と活躍の機会を明らかにするため、11か国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、オランダ、シンガポール、イギリス、アメリカ)の18歳以上の有職女性を対象に「女性の就労環境と将来の予想についての調査」を実施。
先日、Indeed Japanから同調査における日本における女性の賃金・給与や男女賃金格差、管理職への昇進等に関する結果報告が届いたので、その概要をお伝えする。
日本の調査結果詳細について
11カ国で実施した「女性の就労環境と将来の予想についての調査」のうち、日本の有職女性(1506名)を対象とした調査結果を、
A.日本全体の傾向(11か国比較を含む)
B.役職による傾向
という2つの軸で集計・分析した結果を紹介する。
なお、役職による傾向は、「経営層(経営者・経営責任者)」、正規雇用者である「課長職以上社員(課長、部長、本部長、執行役員)」「主任・係長層(係長、主任、リーダー)」「一般社員」、そして「アルバイト・パート」の5カテゴリーで比較を行なっている。
■働く女性の仕事に関連する要素に対する「重要度」と「現在の職場における満足度」
A. 日本全体の傾向
仕事に関連する12要素(※)のうち、「賃金・給与・賞与」が最も重要視されている(88.4%)が、現在の職場における「賃金・給与・賞与」の満足度の高さは12要素中6番目(27.6%)。
働き方や制度、職場環境など仕事に関連する12の要素について、自身にとってどの程度重要であるかを、「極めて重要」「非常に重要」「ある程度重要」「全く重要ではない」の4スケールで尋ねたところ、重要である(「極めて重要」「非常に重要」「ある程度重要」の合計)と回答した割合が最も高かったのは「賃金・給与・賞与」で88.4%に達した。
また、現在の勤務先における12要素について満足しているかどうかを、「非常に満足」「ある程度満足」「どちらともいえない」「やや不満」「非常に不満」の5スケールで尋ねたところ、満足している(「非常に満足」「ある程度満足」の合計)と回答した割合は12要素の全てで半数以下であり、満足している人の割合が最も高かった「ワークライフバランス」でも46.2%という結果となった。
最も重要度が高かった「賃金・給与・賞与」については、満足している割合は12要素中6番目(27.6%)にとどまっている。
※12要素…「賃金・給与・賞与」「福利厚生・各種制度(休暇制度など)」「ワークライフバランス」「研修と自己開発の機会」「昇進の機会」「雇用の安定」「柔軟な時間帯で勤務できる」「勤務地を柔軟に選べる制度」「勤務先の企業のパーパスやミッション」「優れた環境への貢献(グリーン企業)」「育児休業/育児休暇制度」「ポジティブな職場のカルチャー」
■働く女性の自身の賃金・給与に対する意識
A. 日本全体の傾向
働く女性の4割以上(44.2%)が、賃金・給与が「十分に支払われていない」と感じている。
現在の役職・仕事に対して、十分な賃金・給与が支払われているか否かを聞いたところ、4割以上(44.2%)が「十分に支払われていない」と回答。
「適切な賃金・給与が支払われている」(35.7 %)および「多すぎる賃金・給与を支払われている」(1.7%)の合計(37.4%)を上回る結果となった。
11か国中10か国で、「十分に支払われていない」の回答割合が「適切に支払われている」と「多すぎる」の合計を上回っており、「十分に支払われていない」と思う割合は、11か国全体で55.8%になる。
B. 役職による傾向
正社員の非管理職(課長職よりも下の役職)の女性の半数以上(52.6%)が、自分は「十分な賃金・給与を支払われていない」と感じている。
日本の結果を役職別で確認した。特に賃金・給与が「十分に支払われていない」と感じる割合が高かったのは、正社員女性のうち非管理職(課長職よりも下の役職)の女性で、52.6%(一般社員:51.9%、主任・係長層:55.4%)に達した。
一方で、課長職以上の役職につく女性では3割未満(課長職以上社員:29.8%、経営層:28.9%)となり、さらに「適切に支払われている」の割合が半数以上(課長職以上社員:59.4%、経営層:50.9%)の結果となっている。
正社員女性のうち非管理職(課長職よりも下の役職)の女性が特に、給与に対する納得感が低い傾向にありそうだ。
■働く女性の男女賃金格差に対する意識
A. 日本全体の傾向
日本で働く女性の81.0%が「(自国に)男女賃金格差がある」と感じている。そのうち、約6割(58.0%)は「今後5年間で賃金格差が解消する可能性が低い」と考えており、「解消する可能性が高い」と考える人の約5.5倍に上る。
自国全体で男女の賃金格差が大きいと思うかを「非常に格差が大きい」「かなり格差が大きい」「少し格差がある」「格差はない」の4スケールで聞いた。
その結果、日本では81.0%が「格差がある」(「非常に格差が大きい」「かなり格差が大きい」「少し格差がある」の合計)と回答している。
「格差がある」と回答した割合は、11か国全体で77.4%であり、最も多かったのはイタリアで83.8%、次いでイギリス81.0%(81.01%)。日本は81.0%(80.98%)で11か国中3番目に多い結果となった。
働く女性のうち「自国に男女賃金格差がある」と感じている人に対して、将来的に男女賃金格差が解消される可能性が高いと思うか、低いと思うかを聞いた。
日本では、今後5年間で男女賃金格差が解消される可能性が低い(「非常に低い」「やや低い」の合計)と思う割合は約6割(58.0%)で、可能性が高い(「非常に高い」「やや高い」の合計)と思う人(10.6%)の約5.5倍となった。
今後25年間では、男女賃金格差が解消される割合が低いと思う人は29.5%で、解消される可能性が高いと思う人は26.5%とほぼ同水準という結果に。
B. 役職による傾向
「男女賃金格差がある」と感じる割合は、特に「主任・係長層」「課長職以上社員」で高く9割以上にのぼる。一方で、そのうち「今後5年間で賃金格差が解消される可能性が高いと思う」割合は「課長職以上社員」「経営層」で高く3割以上に。役職が高いほど賃金格差解消への期待が高まる傾向。
さらに、日本に男女賃金格差があると考える働く女性(1219名)に、将来男女賃金格差が解消される可能性があると思うかを聞いた。
今後5年間で「解消される可能性が高い」と思う割合(「非常に高い」、「やや高い」の合計)は、アルバイト・パート女性では7.5%、正社員女性全体(一般社員、主任・係長層、課長職以上社員の合計)では11.5%だったが、課長職以上社員、および、経営層で他の役職の女性よりも顕著に高い傾向となり、課長職以上社員で30.3%、経営層で34.3%となった。
これは日本平均のそれぞれ2.9倍、3.2倍に相当しており、役職が高いほど、将来の日本の男女賃金格差の解消に対して期待が高まる傾向にあることがわかる。
■昇進のしやすさにおける男女格差
A. 日本全体の傾向
日本で働く女性の4割以上(41.7%)が「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じている。
勤務先の企業における昇進のしやすさに男女差があるかを質問したところ、日本の働く女性の41.7%が「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と回答した。
11か国全体は46.4%で、オランダが最も低く38.3%、イタリアが最も高く55.4%でした。世界的に「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じている女性は4〜5割程度存在していることがわかる。
B. 役職による傾向
「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じる割合は、主任・係長層の女性で特に高く、約6割(57.6%)に達している。
日本の結果を役職別で確認した。特に主任・係長層で、女性よりも男性の方が簡単に昇進できると感じる割合が高く、57.6%という結果が出た。
一方で、実際に自分が管理職(課長職以上)に昇進した経験があると考えられる課長職以上社員や経営層になると、その割合が下がっている。
■今後5~10年間で女性管理職が増えると思う割合
A. 日本全体の傾向
今後5〜10年間で「女性管理職が増える」と思う割合は日本は3割以下(27.8%)。
今後5〜10年間で、管理職に就いている女性の人数が増えると思う割合は、日本では3割未満(27.8%)で、最も低かったフランス(27.7%)と0.1ポイント差でほぼ同等の割合となった。
B. 役職による傾向
課長職以上の正社員・経営層女性の4割以上が、今後5~10年間で女性管理職が増えると予想。
日本の結果を役職別で確認した。今後5〜10年間で女性管理職が増えると思う割合は、課長職以上社員で最も高く44.1%に上った。
また、経営層でも同様に高く41.7%に。実際に管理職(課長職以上)に就いている女性や経営に携わる女性ほど、将来的な女性管理職の増加を予想している様子が推察できる。
調査概要
調査主体/Indeedの委託によりYouGovが実施
調査対象/オーストラリア(1013名)、カナダ(1504名)、フランス(1336名)、ドイツ(1377名)、インド(1193名)、イタリア(1343名)、日本(1506名)、オランダ(1467名)、シンガポール(1196名)、イギリス(1398名)、アメリカ(1344名)でフルタイムまたはパートタイムで働く1万4677名の女性
補正/各国の労働人口構成比にあわせて補正。日本は総務省「労働力調査」2023年(令和5年)を基に補正。
調査方法/インターネット調査
調査期間/2023年11月14日~11月23日
関連情報
https://jp.indeed.com/press/releases/20240307
構成/清水眞希