グーグルの「MusicLM」をはじめ、音楽を生成するAIサービスも急速に増えてきた。そんな音楽の生成AIについての最新事情を伺ったのは、2016年から音楽生成AIの開発に着手してきた、Amadeus Codeの井上純さん。曲作りを仕事とする音楽クリエイターがAIに音楽を作らせるメリットとは? AIによって変わる音楽制作の現場、そして一般の人々にも及ぶであろうインパクトについて聞いた。
Amadeus Code
代表取締役CEO
井上 純さん
バークリー音楽大学卒業後、レコーディングミュージシャンを経て、音楽ディレクター/プロデューサーとして活躍。2012年に同社を設立し、2016年よりAI開発事業を開始した。
才能のある人がテクノロジーをポジティブに使いこなしていく時代へ
Amadeus Codeが展開している「Amadeus Topline」は、雰囲気やテーマに関するテキストを入力すれば、AIによって音楽が生成されるサービスだ。生成ソースには同社で独自開発したLLMの技術が使用されている。
「音楽の生成は文章や画像に比べて難易度が高くなります。音楽は時間軸を伴った芸術であり、楽器の組み合わせなどにも意味があり、演算の量がとてつもなく膨大になるからです」(井上さん)
この課題を解決すべく、同社のLLMでは演算に一定の制限をかけているという。また、同社では音楽の要素を「リズム」「メロディー」「ハーモニー(和音)」「スタイル(様式)」「楽器の音色」「人間が生み出すソウルや熱量」という6つに定義。そのうちAIが担うのは前者の3つに絞り、後者の3つはクリエイターに委ねている。それでもAIは1秒間に10万~15万通りの計算を行なうそうだ。
「実際に使用するプロの音楽家に求められているのは、ベースとなる『メロディー』です。0から1を生み出す作業をAIに委ねて、何パターンも提案させ、依頼者のイメージに近い『メロディー』を選んでもらいます」(井上さん)
プロの音楽家が扱うことを考慮し、著作権をクリアにしている。
「学習元のデータはすべて弊社が制作したオリジナルの楽曲です。著作権侵害の心配はいりません。しかも同サービスで制作した曲の著作権は利用者に帰属し、作られた楽曲はテレビ番組のテーマ曲やホテルの館内音楽などに幅広く使われています」(井上さん)
今後はこのような音楽生成AIを使いこなすことが音楽家にとって重要だと、井上さんは見ている。
「才能のある人がテクノロジーをポジティブに使いこなしていく時代になるでしょう。既成概念に縛られない新規性のある『メロディー』などからインスピレーションが湧き、名作を次々に生み出していくと思います。さらにAmadeus Codeは音楽の知識や技術を持たない人でもオリジナルの曲をAIで作れる未来を目指しています。音楽創作の楽しさを幅広い人々に味わってほしいです」(井上さん)
AIが音楽を生成する流れは音楽家の思考を忠実に再現!
Amadeus CodeのAIは「Lick(リック)」という断片をつないでメロディーのパターンを生成(右)。導き出された無数の候補から最適と思われるメロディーパートを選択する(中)。こういった作業をAメロ、Bメロ、サビというセクションごとに行なってひとつにまとめ(左)、リズムとハーモニーも組み合わせる仕組み。
Amadeus Codeが展開中のAIサービス
音楽制作者向けに提供中のAI作曲支援アプリ。AIが新しいメロディーをわずか4秒で生成。MIDIファイルとして出力された曲はGarageBandなどにインポートでき、編曲などの音楽制作に使える。生まれた楽曲の著作権が帰属するのは利用者であるクリエイター。利用料金は年額5000円、対応プラットフォームはiOS。
主にYouTubeやTikTokなどの動画クリエイターに対し、著作権フリーの楽曲を提供するライブラリーサービス。楽曲は現在約6万曲で、そのすべてが同社のAIによって作成されたもの。また、曲の検索アルゴリズムにもAIが使われている。料金プランは3種類(月額1050円~)。世界145か国、約13万人が利用している。
取材・文/小口 覺
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