メールの文面は相手との関係性や文脈、状況によって大きく変わる。よくあるテンプレートでは表現できない〝その人の顔が見える、心が通ったメール〟も、AIのアシストがあれば簡単に作成できるうえに、メール作成にかかっていた作業を圧倒的に効率化できる。具体的なプロンプトとともに紹介していこう。
Cynthialy代表取締役
國本知里さん
大手外資IT・SaaS企業、AIスタートアップなどを経て、生成AI領域のコンサルティングサービスやリスキリング・教育研修を提供するCynthialy株式会社を起業。
「誰に向けた」メールかを指定して最適な文面を生成
「生成AIは、日常的にやりとりするメールよりは、御礼や謝罪、案内といった、形式を重視する内容のメールを書かせるのに向いています」と語るのは、AIを活用したリスキリングや社員研修を手がけている國本知里さんだ。これらのメールには一定の形式やトンマナが存在しているため、あらゆるデータから文章を生成するAIが得意とするところだという。
「冒頭の挨拶やクッション言葉が正しく使われた文面になるだけでなく、例えば案内メールに必要な日時や場所、費用といった項目をAIが出してくれるので、ヌケや漏れを防ぐことができます。また、長文のメールを書くことに慣れていない新入社員の教育などにも使えます」(國本さん)
一口にメールと言っても、取引先や顧客に対するメールと、社内向けメールではトーンが異なるべきだ。生成された文章を、「よりフォーマルに」「よりカジュアルに」などと修正させてもよいが、最初に「誰に対して」のメールかを指定しておくことで、最適な文章が生成されるという。
「同じ謝罪でも、顧客や目上の人に対してなのか、チームのメンバーに対してなのか、相手やことの重大性によって謝り方は変わります。最初に誰に対してのメールなのかを指定すれば、それに適したトーンになります」(國本さん)
また、会社が発行するメルマガやプレスリリースなどにも生成AIが役に立つ。一定のフォーマットに沿って文面を作るだけでなく、より開封率が高くなるようなタイトルも複数考えてくれるからだ。多国語のメール作成も容易なため、海外への販路拡大などにも役立つと國本さんはいう。
もちろん注意点もある。メール作成でのAIの使用は、まだ過渡期であるため、相手にAIを使用していると知られない配慮も必要だろう。受け取る側にとっては「誠意がない」「手を抜いている」といった否定的な反応を引き起こしかねないからだ。そのためにも、AIの文章はあくまで叩き台として、人の手で確認し調整する必要があるだろう。
「さらに、入力した情報の機密性が担保されていない限りは、相手のメールや個人情報をそのまま入力することは避けましょう。固有名詞や具体事例などは別のテキストに置き換えて指示するなどの配慮が必要です」(國本さん)
御礼・謝罪など事務的なメールの下書きを作成したい
CASE1|御礼メール
〈CAUTION!〉
そのまま使うことは基本的にNG! 下書き作成としてあくまでアシスタントであることを忘れずに。
CASE2|謝罪メール
改まった御礼メールや、気が重い謝罪メールの作成は、よほど慣れた人でない限りハードルが高い業務だ。生成AIであれば、感謝や謝罪したいポイントを入力するだけで、実にそつのない文面を作成してくれる。数パターン出力させて、組み合わせて使うことで、自分が納得するメールにするのもアリだ。