皆さんはどんなイヤホン・ヘッドホンを使っているだろうか。近年はワイヤレスが完全に主流になってきた。また音楽の鑑賞だけでなく、スマートフォンの通話やWebミーティングなど、用途が以前よりも広がっている。それに伴って、どんな性能や機能が求められているのだろうか? 完全ワイヤレスイヤホン「Jabra Elite」シリーズや、業務用・ゲーム用ヘッドセット、補聴器を手がけるGNオーディオグループのコンシューマー部門トップ・Ehtisham Rabbani (エティシャン・ラバーニ)氏にインタビューした(聞き手:小口覺)。
GNオーディオグループコンシューマー部門プレジデント・Ehtisham Rabbani (エティシャン・ラバーニ)氏。2014年9月に、SteelSeriesのCEOに就任し、ゲーミングギア業界では新興企業であった同社を世界的リーダーへと成長させる。2022年1月、SteelSeriesがGNグループ傘下に加入したことに伴い、GNグループに入社後、Jabraのコンシューマー部門とゲーミング部門のプレジデントに就任。
完全ワイヤレスイヤホン率が高い日本市場
――海外と比べて、日本のイヤホン・ヘッドホン市場に特徴はありますか?
ラバーニ氏:まず、日本のマーケットは イギリスやフランスなどヨーロッパの各国に比べても大きく、特に150ドル以上のプレミアムセグメントの比率が半分弱と高いことも特徴です。日本人はテクノロジーに対する興味が高く、 よく調べてから購入される方が多いと感じています。
――御社は完全分離タイプのイヤホンに特化していますが、市場的にはヘッドホンとイヤホンの比率はどうなっているのでしょう。
ラバーニ氏:現在、イヤホンに比べるとヘッドホンの市場は縮小しています。グローバルでヘッドホンはイヤホンの約4分の1の規模。日本ではさらにヘッドホンのマーケットサイズはさらに小さいのが現状です。
――その理由は?
ラバーニ氏:やはりコンパクトでどこへでも持っていけることが最大の理由だと思います。また、かつてはヘッドホンの方がノイズキャンセリングの効果が高かったのですが、 今は技術が向上して完全ワイヤレスイヤホンでも十分にノイズキャンセルできるようになりました。
――日本の場合は電車通勤も理由にありそうです。荷物を増やしたくない。
ラバーニ氏:そう思います。海外でも都市部は電車やバスといった公共交通機関を使う人が多い。私はアメリカのシカゴに住んでいるんですが、車を持っていないので、このイヤホンをずっと持ち歩いて使っています。
――逆に、若者は大きなヘッドホンがファッションとしてカッコイイみたいなイメージもあります。
ラバーニ氏:確かにそういう傾向はありますね。面白いのはジムです。ランニング や ジョギングの人は完全ワイヤレスイヤホンが多いですが、ウェイトリフティングなどでヘッドホンを使っている方が多い。外界から遮断されて自分の世界に浸りたいという心理が働いているのではないでしょうか。
――まあ、ヘッドホンの方が見た目も強そうなイメージはあります(笑)。
日常でも求められるMIL規格のタフ性能
ラバーニ氏:イヤホンは自分の生活に欠かせない相棒のような存在になってきています。仕事と個人の生活、家庭の境目がだんだんなくなってきているからです。イヤホンもその境目なく使うことが一般的になってきました。
――コロナ禍以降はとくにそうですね。音楽鑑賞だけでなく、仕事のオンラインミーティングでも利用される。
ラバーニ氏:オンラインミーティングでは自分の声が相手にクリアに聞こえることが重要です。「Jabra Elite 10」や「Jabra Elite 8 Active」は 6つのマイクを搭載し、周囲の雑音を自動的にカットします。また、イヤホンを使うシーンにグローバルと日本で違いはあっても根本的なニーズには共通点があると考えています。IP68の防塵防水性能を持つ「Elite 8 Active」は、アクティブと銘打っていますが、それが必要とされるシーンは日本と世界ではかなり違っています。例えば東京のような所だと通勤がすでにエクササイズになっていますし、突然の雨にあっても安心できることが求められます。海外ではジムで使っている時に汗で濡れても壊れないことが求められます。使用状況は違いますが、消費者のニーズ自体は似ています。
――「Elite 8 Active」は米国MIL規格(MIL-STD-810H・米国国防総省が制定するMIL仕様書)に準拠しています。
ラバーニ氏:高温・低温、高湿、耐衝撃、高度など9項目のテストをクリアしています。スペックだけでなく、このようにジャンプしたり頭をガンガン振っても落ちません(立ち上がって実演する)。特殊なコーティングを施すことで、耳にしっかりフィットして外れないのです。
――よく駅のホームに落ちてるのを見かけますが、そうした心配がない。
ラバーニ氏:私も以前、飛行機の中でなくしたことがあります(笑)。こうしたニーズに合わせた開発がマーケティングでは最も重要だと考えています。
6つのマイクを搭載し、自分の声と周囲の音をアルゴリズムで区別してノイズキャンセリングを行う。動画のデモでは、キーボードの打鍵音やバイオリンの音を自動で判断して完全にカットされていた。