IT職種における転職前のポジション別、転職前後の平均年収増加幅1位は「セキュリティエンジニア」
転職前に就いていたポジションを軸に、転職前の平均年収と転職後の平均決定年収の変化を見ると、増加幅が最も大きかったのは「セキュリティエンジニア」(+64万円)となった。次いで「データサイエンティスト」(+63万円)、「インフラエンジニア」(+44万円)となっている【表2】。
前述の通り、「セキュリティエンジニア」と「データサイエンティスト」はいずれも採用ニーズに加え、市場価値も高いポジションであることから、より良い給与条件やはたらきやすい環境が揃う大手企業へ転職する傾向にある。そのため、決定年収が上がったと推測される。
それぞれの転職事情を深掘りしてみると、「セキュリティエンジニア」の経験者は“同業種×同職種転職”が多く、業界経験を活かしてさらにセキュリティレベルの高い業務ができる企業へ転職するパターンが目立つ。同業種の例として、金融業界やインフラ業界などが挙げられる。
「データサイエンティスト」は“異業種×同職種転職”が多く、なかでもIT・通信業界からコンサルティング会社への転職が多い印象だ。「経営課題の解決に向けて、データをどのように活用すればよいか知見が欲しい」とアドバイスを求める企業が増えたのに伴い、コンサルティング会社が「データサイエンティスト」の即戦力採用に積極的なことが背景にあるといえるだろう。
3位にランクインした「インフラエンジニア」は、システムのインフラであるネットワーク・サーバー・データベースなどの構築や管理を専門とするポジションだ。安全性を保ちつつ「どれだけのデータを蓄積するか」「通信環境をいかによくするか」「いかに早くデータを抽出できるか」といった業務を担っている。
コロナ禍にリモートワークが浸透したことで、スムーズなデータ連携を行うべくクラウド化を進める企業が増加。その結果、「インフラエンジニア」の中でもクラウドの知見、特に、クラウドサービスとしてシェアの高いAWSやAzureを扱えるエンジニアのニーズが高まり、人材獲得競争が激化している。採用成功率を高めるために決定年収を引き上げる企業が増えたことから、増加幅が大きくなったと考えられる。
総括
IT人材の採用難易度が極めて高い状況にある今、企業は採用成功率向上のために決定年収を引き上げている傾向があることが今回の調査から読み取れる。その中でも、特に採用ニーズが集中しているポジションでは、転職後の年収増加幅が大きいことがわかった。
「IT職種」経験者は“超売り手市場”の状態が依然として続き、転職によって年収が上がりやすくなっている。それゆえ、「給与が現職よりも上がるから」といったメリットを優先させて転職先を考える人も増えてきた印象だ。
もちろん給与は、はたらく場を選ぶうえで重要なポイントの1つだが、「その転職を通して何が得られるか」に立ち返ることも大切だ。長期的なキャリアプランを見据えた上で今回の転職で重視すべきポイントは何かを考え、選択することで、自身が本当に望む「はたらく」を叶えることに繋がるのではないだろうか。
<調査概要>
調査期間:2023年1月~6月
対 象 者:上記期間に「doda」のエージェントサービスを利用して転職した個人
雇用形態:正社員
出典元:転職サービス「doda」
構成/こじへい