ファンの期待に応えられるか?人気シリーズの難しさが露呈
「シャニソン」は、アイドルの育成とリズムアクションを楽しむヒットシリーズの一つ。2023年11月にリリースしました。アイドルマスターには、2015月9月にリリースした『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(デレステ)、2018年4月の『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(シャニマス)という人気作があります。
大人気アイマスシリーズの最新作(2024年3月4日現在)も…
新作の「シャニソン」は、2023年11月のセールスランキングで一時旧作の「デレステ」を下回るなど、その不調ぶりが話題となりました。
アイドルマスターの新作を開発した背景として、プロデューサーの高山祐介氏はファミ通.comのインタビューで「3Dで表現されたアイドルたちのパフォーマンスを見たいというお声をいただいておりました」と回答しています(「『シャニソン』高山祐介氏インタビュー」)。
「シャニマス」のライブシーンは、デフォルメされたキャラクターが歌って踊るというものでしたが、「シャニソン」は3Dによる精緻なキャラ造形がなされました。しかし、表情や動きが硬いといった声が一部のファンから聞こえていました。
また、ゲームの難易度が高すぎるのも不評を買った要因でした。このゲームはアイドルを育成するプロデュースと、リズムゲームの2つで成り立っています。特にプロデュースの仕組みが複雑で、リズムゲームを楽しみたいというファンから敬遠されました。
アイドルマスターは強力なファンに支えられているシリーズであり、こうした声が出ること自体が根強い人気を持っている証拠ではあります。しかし、従来のファンの期待を汲み取り切れないことが、業績不調の一要因になってしまったのは間違いないでしょう。
新社長を迎えるが早くも暗雲が……
2023年6月リリースのアクションRPG『ブループロトコル』(ブルプロ)も大苦戦しました。このタイトルはバンナムが威信をかけて開発したもの。新たなIPを創出する目的で2014年にプロジェクトがスタート。2019年と2020年にテストが行われており、ゲームファンからは絶大な支持が得られていました。
「ブルプロ」は、美しいグラフィックが最大の特徴であり、それをセールスポイントにしていました。しかし、ゲームの根幹をなす戦闘シーンなどで表示の遅延が起こるなど、パフォーマンスの低さが露呈しました。
スムーズに動かないことへのストレスが、プレーヤーのモチベーションを下げてしまったのかもしれません。グラフィックの質を追求しすぎたため、ハードへの負荷が高いことがその背景にあると指摘されています。
バンナムは5タイトル以上の開発中止を決定。開発したタイトルの評価損と、開発途中のプロジェクトの処分損210億円を計上。それ以外の複数タイトルも開発を中止しています。
ゲーム事業を統括するバンダイナムコエンターテインメントは、2023年2月に宇田川南欧氏が代表取締役社長に就任しています。2009年にバンダイナムコゲームスに異動し、ソーシャルゲームの全盛期に事業のど真ん中にいた人物です。
現在の国内モバイルゲーム市場は縮小に転じており、伸びしろは失われています。人気シリーズの投下で確実にファンが獲得できるのかは疑問が残ります。
バンナムに限らず、多くの会社がゲーム開発に苦戦しています。ブシロードが手掛けた人気アイドルシリーズ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル2 MIRACLE LIVE!」はリリースから1年ほどでサービス終了。gumiの大作「アスタータタリスク」も人気を獲得できていません。
ゲーム業界の潮流は大きく変化しているように見えます。
取材・文/不破聡