「新卒信仰」が根強く残っているとされる日本社会。その中で、中途入社者も新卒で入社した人と分け隔てなく扱われ、存分に力を発揮できる日系大手企業とはいったいどこか?
オープンワークはこのほど、自社メディア「働きがい研究所」の調査レポ―トとして「新卒入社vs中途入社評価がフラットな日系大手企業ランキング」を発表した。
今回の調査レポートは、設立50年以上・従業員1,000人以上、総合評価が3.0点以上の日系大手企業を対象に、新卒入社者と中途入社者による総合評価スコアをそれぞれ集計し、差異が小さい企業をランキング化したものだ。
中途入社者による総合評価スコアが新卒入社者を上回ったのは、上位30社のうち17社
設立50年以上・従業員1,000人以上、総合評価が3.0点以上の日系大手企業を対象に、新卒入社者と中途入社者による総合評価スコアの差異が小さい企業を集計した本ランキング。
1位に住友生命保険、2位にあいおいニッセイ同和損害保険、3位にリクルートホールディングスが並び、トップ2社が保険業界の企業となった。業種別では、「SIer、ソフト開発、システム運用」「コンピュータ、通信機器、OA機器関連」がそれぞれ最多の4社、「半導体、電子、精密機器」が3社となった。
上位30社のスコアを見ると、中途入社者による総合評価スコアが新卒入社者による評価を上回ったのは17社となった。「新卒文化」のイメージがある日系大手企業だが、ランキング全体を通じて、中途入社者による評価のほうがわずかに高いという結果になった。
ランクイン企業に投稿されたクチコミで新卒、中途入社者の双方に共通していたのが、近年、自社が中途採用に力を入れており、入社形態にかかわらず社員が分け隔てなく意見を交わすことができる職場環境を評価する声だ。外部で得た経験やスキルを積極的に自社に取り入れようとする組織としての姿勢が、多様な人材を受け入れる土壌をつくっていることがうかがえる。
また、評価制度の特徴として「実力主義」「日系大手企業によく見られた年功序列からの変化が見られる」などの声も寄せられた。社員の頑張りに報いる報酬体系や評価制度は新卒、中途入社者の双方から高く評価されるポイントと言えそうだ。
特に、中途入社者にとっては、これまで新卒一括採用がメインだった企業に転職するにあたって、仕事に挑戦する機会や評価が平等であるかは懸念の一つではないだろうか。企業側もさまざまな人材が力を発揮できる報酬体系や評価制度への改善が必要と考えられる。
■ランクイン企業に寄せられた、多様な人材を受け入れる組織体制や公平な評価に関するクチコミ
「よくある大手日系企業の組織体制で基本的には年功序列だが、近年それが徐々に変わってきている。具体的には評価制度が一新され、これまでより評価次第で早く出世が出来る制度となった(営業、新卒、男性、あいおいニッセイ同和損害保険)」
「頑張りに見合った評価を得られやすく、きちんと指標を示してくれたことはとても良かった(損害業務サービス部門、中途、女性、あいおいニッセイ同和損害保険)」
「認定スキルを全てコンプリートすることで給料は大きく上がり、昔ほど年功序列の風土はない。勉強時間もしっかり確保してくれる。上昇思考が高い人材は成果に見合った行動できれば店舗のリーダクラスに
はすぐに上がれると思う。副店長以上からは社内の役員面接や適正検査で一定レベルを求められる(モバイル事業、新卒、男性、MXモバイリング)」
「採用の間口は広く、いろいろな社員がいる。中途と新卒の割合は半々くらいで、完全に実力主義である(販売、中途、男性、MXモバイリング)」
「役職や年次に関わらず意見を申し立てることができる環境は整っており、中途採用者でも積極的に発言できる環境(管理、新卒、男性、協和キリン)」
「自分の提案力、積極性次第で、任せられる仕事の幅が広がる。中途採用だからといって、意見が聞き入れられないことはない。むしろ外からの風をどんどん吹き込んでほしいといった環境がある。既存社員も、中途だから相手にしないといった雰囲気はない(事務職、中途、男性、協和キリン)」
「年功序列で古い体質の企業であったが、近年グローバルで活躍するために変わろうとしている。新卒採用はかなり少なくなり、中途採用などで人材を確保している(物流、新卒、女性、オリンパス)」
「中途採用を積極的に行い、社外の優秀な人を登用しようとする姿勢が最近顕著に見られる(管理、中途、男性、オリンパス)」
「同族企業ではなく、実績を残せば誰でも公平に評価される面はある(住宅設計、新卒、男性、大和ハウス工業)」
「中途入社に対するハンディキャップはほぼ無く、実力主義の会社」(営業、中途、男性、大和ハウス工業)」
丁寧な研修制度や豊富な学習機会でスキルアップできる環境が、中途入社者に好評価
ランクイン企業の中途入社者によるクチコミに限定すると、丁寧な研修制度や豊富な学習機会を評価する声も見られた。中途入社者は新卒入社者に比べ、新たに習得したいスキルが明確で、自分に合ったキャリアステップを歩める環境を求め、転職先を決定していると考えられる。人材の獲得競争が激化するなか、スキルアップや学びの機会を提供することも、成長意欲のある中途入社者に選ばれる企業となるために必要な方策と言えそうだ。
■ランクイン企業の中途入社者が投稿した研修制度や学習機会に関するクチコミ
「入社して3ヶ月の間にしっかり研修が設けられている。その後も定期的に研修制度があり、キャリアアップのための選抜研修や目標管理体制も設けられているため、学びやすい環境ではある(営業、中途、女
性、住友生命保険)」
「さまざまな資格取得を奨励している。金融系、士業、語学のスキルアップに対する自学自習ツールがたくさん用意されている(営業、中途、女性、あいおいニッセイ同和損害保険)」
「さまざまな研修があり、向上心があればどんどんスキルアップできる。個人の成長なくして会社の成長はないとの考え方なので、上司も含めて、貪欲に成長を求められるし、また成長する環境は整っている。
逆に成長を求めないような人や、競争を諦めた人には非常に働きにくいところになると思う(営業、中途、女性、リクルートホールディングス)」
「社外研修やトレーニーとして海外研修など自分で手を上げていけば自由に受けさせてもらえる環境でスキルアップに繋がった。仕事はたくさんあるため自ら手を上げれば色々と経験が積める。キャリア開発も
いくつかのモデルケースを想定し、定期的な異動を勧めていてさまざまな業務に従事できる。また、異動希望は年一度提出の希望キャリアシートに書いたり普段から上司に相談したりするなど、比較的容易に異
動希望が通る(財務経理、中途、男性、セイコーエプソン)」
「技術的なセミナーや有償の研修などは、毎年それなりの予算で受講することが可能。クラウドなど、会社が重点的に取り組む分野では、さらに予算範囲を広げて申し込むこともできるので、成長意欲のある方には恵まれた環境(インフラエンジニア、中途、男性、伊藤忠テクノソリューションズ)」
「年次や階層ごとの社内研修・eラーニングプログラム・公開講座など、教育制度が整備されているのは非常にありがたい環境だった。この制度を十二分に活用することで、仕事上必要なスキルや能力を身につけることが可能だった(営業、中途、男性、MXモバイリング)」
<調査概要>
OpenWorkに2021年以降に投稿された会社評価レポート回答137,804件を対象データとして使用。このうち、設立50年以上・従業員1,000人以上、総合評価が3.0点以上の日系大手企業として集計した。
出典元:OpenWork働きがい研究所
構成/こじへい