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狩猟に興味がある人のためのマッチングサービス「ハンターバンク」は鳥獣による農作物被害解決に貢献できるか?

2024.03.08

野生鳥獣による農作物被害は深刻だ。

農林水産省によれば令和4年(2022年)度の野生鳥獣による農作物被害額は約156億円にも上る。被害面積は約3万4000ヘクタールで、被害量は約46万9000トンにも及ぶという。さらに、ここ5年ほど被害額は150~160億円を推移しており、改善の兆しがあまり見えていない。

その背景にあるのが鳥獣駆除の担い手、いわゆるハンターの減少である。この問題の解決に期待されているのがマッチングサービス「ハンターバンク」だ。

狩猟に興味がある人と鳥獣被害に苦しむ農家をマッチングしてくれる。運営するのは、シカやイノシシによる列車への衝突事故も年に数回程度は起こり、自らも鳥獣被害に苦しむ小田急電鉄である。

「ハンターバンク」により増えている“週末ハンター”とは何か。その仕組みをみていきたい。

狩猟の担い手が不足している

停滞する有害鳥獣の駆除

まず、鳥獣被害の現状を把握したい。

昨年11月に農林水産省が発表した「全国の野⽣⿃獣による農作物被害状況(令和4年度)」によると、野⽣⿃獣による全国の農作物被害額は155億6300万円、都道府県別で最も多いのは北海道(56億4300万円)で、全体の36%を占める。次いで福岡県、熊本県(ともに5億9700万円、全体の4%)だったという。

農林水産省農村振興局「鳥獣被害の現状と対策」より

農林水産省によると、野生鳥獣による農作物被害額について「鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしている」と見解を述べている。

先にも述べたように、鳥獣被害対策が進まない一因なのが「ハンターの減少」である。

環境省のデータでは、2019年度の狩猟免許所持者数は21.5万人。その6割以上が60代以上だという。

環境省「年齢別狩猟免許所持者数」より

ハンターマッチングプラットフォーム「ハンターバンク」とは

ハンターの減少、高齢化は非常に深刻だ。

その救世主として期待される小田急電鉄が運営する「ハンターバンク」というサービスがある。

狩猟に興味がある人と鳥獣被害に苦しむ農家さんをマッチングするサービスだ。鳥獣被害の予防、対策だけでなく、狩猟人材の育成に大きく寄与する可能性がある取り組みなのだ。

ハンターバンクのサービスイメージ

アウトドア趣味の延長や地元の鳥獣被害対策への貢献など様々な理由で狩猟に興味を持つ人は多い。しかし、彼らの障壁になるのが「狩猟経験」だ。

狩猟免許の取得、狩猟者登録を行ない猟期に申請すれば誰でも狩猟はできる。しかし、実際に初心者が一から狩猟経験を積んでいくのは非常に難しい。

また、自治体に依頼される有害鳥獣の捕獲は地元の猟友会に依頼されることが多く、さらに猟友会の中でも熟練者が担うことが多い仕事である。

そもそも、自分が狩猟に向いているかのか、免許を取得する前に狩猟の経験ができる場はほとんどないというのが現状だ。

ハンターバンクでは、狩猟免許がなくても3か月のレクチャーを経て狩猟技術を学び、さらには都心部に住みながらも週末など限られた時間だけで狩猟に参加が可能なのだ。

ハンターバンクの発案者で責任者の有田一貴さんは次のように言う。

「ハンターバンクでは、狩猟に興味がある人と被害に困っている農家さんをマッチングしています。

わなの仕掛けなど、狩猟免許が必要な行為はスタッフが行ないます。参加者は複数人でひとつの箱わなを管理します。捕獲に向けた作戦会議、誘引のためのエサ撒き、捕獲できた時の止め刺し・解体、そして美味しく食べることは免許がなくてもできます。

もちろん狩猟免許を持っているけど狩猟経験を積みたいという会員もいます。

ハンターバンクのサービス内容

また、有害鳥獣捕獲において必要な行政への捕獲許可申請についてもハンターバンクがサポートしています。

小田急電鉄では年に数件から10数件、イノシシやシカが列車に衝突し遅延や車体の故障などの被害がありました。また小田急電鉄が通過する小田原市などでは鳥獣被害に苦しむ地域です。

ハンターバンクでは現在、小田原市と協定を結びハンターバンクを運営しています。狩猟に興味がある人にも向けてのサービスは2022年11月からになります。現在までの累計の会員数は360名ほど。これまでに50頭以上のイノシシを捕獲しています。

新鮮なジビエが楽しめる、週末だけ現地で狩猟に参加する『週末ハンター』ができるなど間口を広げることで狩猟をもっと身近なものに感じてもらい、ハンター不足の解消に貢献できたらと思っています。

ハンターバンクの経験をきっかけに狩猟免許を取得された会員様もいて嬉しい限りです」

小田原市の鳥獣被害防止計画によれば、2024年は578頭のイノシシを捕獲予定だ。単純計算でハンターバンクの活動で1割ほど鳥獣被害対策に貢献していることになる。

今後、小田原市だけではなく活動エリアを広げていく予定だという。ハンターバンクの活動が全国的に拡大すればさらにハンター不足の解消、そして鳥獣被害の減少につながることだろう。今後に期待したい。

***

ハンターバンク

https://odakyu-hunterbank.com/

取材・文/峯亮佑

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