KPMGコンサルティングは、トムソン・ロイターと共同で、企業における地政学・経済安全保障リスクへの対応と課題状況に関する調査を実施。その調査レポート「地政学・経済安全保障リスクサーベイ2024」の発刊に先立ち、速報版を発表した。本稿はその概要をお伝えする。
今回、両社は共同で日本企業の地政学・経済安全保障リスク対応の現状について、国内の上場企業および売上高400億円以上の未上場企業計328社の経営企画、リスク管理部門を対象に独自調査を行なった。
約6割の企業が台湾情勢の緊迫化や米中による規制強化を懸念
図表1:特に影響が懸念される地政学・経済安全保障リスク
回答企業の64.3%が「台湾情勢の緊迫化」を特に影響が懸念される地政学・経済安全保障関連事象として挙げている。さらに、「中国による貿易管理規制強化」(58.2%)と「米国による対中規制強化」(57.3%)といった米中間の規制の応酬も過半数を占めた(図表1)。
■約4割の企業がサプライチェーンの可視化に課題
図表2:サプライチェーンリスク対応上の課題
サプライチェーンリスク対応上の課題として、地政学・経済安全保障の観点から「サプライチェーンの可視化」を挙げた企業が38.7%で最多となった。
また、その後の段階にあたる「リスクシナリオの策定」(35.1%)や「リスクシナリオに基づいた対応策の策定」(30.8%)に課題を抱える企業も比較的多く、サプライチェーンリスク対応はまだ道半ばであることが推察できる(図表2)。
■1割弱の企業が経済安全保障の専門部署を設置、過半数が情報収集・リスク評価に課題
図表3:経済安全保障に関する専門部署の設置状況(設置していない場合、担当部署)
専門部署の設置状況/組織・業務上の課題については、回答企業の7.2%の企業が経済安全保障に関する専門部署を設置していることがわわかった。一方で、 54.5%の企業は所掌する部署を設けて、経済安全保障にかかわる業務を行なっていると見られる(図表3)。
図表4:経済安全保障に関する組織・業務全般における課題
また、経済安全保障に関する組織・業務全般における課題として、56.1%の企業が「情報収集・リスク評価」を挙げている。今後、情報収集やリスク評価の取組みを強化していく企業が増えてくることも予想される(図表4)。
■情報収集の利活用のPDCAサイクル(インテリジェンスサイクル)が機能している企業は2割以下
図表5:リスク情報を共有・活用する取組み
企業のインテリジェンス機能において、4割弱の企業が収集した情報の共有や議論を実施していることが判明した。
とはいえ、情報収集にあたり、情報提供先の関心・課題事項をヒアリング(15.5%)したり、現場からフィードバックを受け収集活動を改善(11.3%)する企業は少なく、情報収集の利活用のPDCAサイクル(インテリジェンスサイクル)が回っていない状況が考えられえる(図表5)。
関連情報
https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/jp/pdf/2024/jp-kc-geopolitics-survey2024.pdf
構成/清水眞希