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食事補助や社宅借り上げなど福利厚生を活用して実質的な手取りを増やす「第3の賃上げ」は有効か

2024.03.04

2024年初頭、岸田首相は「2023年を上回る水準の賃上げ」を要請した。各界で“賃上げ機運”が高まる一方で、主に中小企業からは賃上げは苦しい状況もある。そこで注目されているのが福利厚生を活用した賃上げだ。どのような仕組みで賃上げとなるのか、その「第3の賃上げ」について探ってみた。

「第3の賃上げ」とは?

食補補助サービス「チケットレストラン」を手がける株式会社エデンレッドジャパンと、借上げ社宅サービス「freee福利厚生」を展開するフリー株式会社は、今年2月初旬に福利厚生を活用した賃上げを「第3の賃上げ」と定義し、プロジェクトをスタートした。

福利厚生サービスを賃上げの代替策として導入する中小企業が急増していることが背景にある。

同プロジェクトによれば第3の賃上げとは福利厚生サービスを導入することで、社員の手取りを「実質」増やすことによって賃上げにつなげる試みだという。

企業が従業員に支給する現金や物品などは原則として給与となり所得税がかかる。しかし一定の要件を満たした上で支給する特定の福利厚生には税金がかからない。

「第1の賃上げ」が定期昇給、「第2の賃上げ」がべースアップであるとした場合、第3の賃上げは「非課税枠」の分だけ手取りが増えることになる。

食事補助、社宅などの福利厚生費は、一定の要件を満たせば非課税で処理でき、また制度によっては社会保険料にも影響しないため、給与で還元するよりも従業員は実質手取りを増やすことができるという。加えて企業は、全額経費扱いにできるため、税負担の軽減につながる。

「賃上げ額と福利厚生費が同額だった場合」

※図はチケットレストランの場合について、簡略化して表現している。福利厚生の賃上げ効果は他にも複数の仕組みがある。

●「#第3の賃上げ」プロジェクト立ち上げの背景

同プロジェクトを立ち上げた背景として、先日行われた発表会では、昨今、人手不足や採用難の課題を抱える企業が増加していることが挙げられた。今後、人材難がさらに深刻化する事態も見込まれる。一方で社員側も苦境といえる状況だ。賃上げ率よりも物価上昇率が上回り、手取り収入は減少の一途をたどっているからだ。

賃上げは、人材確保・定着のために有効な施策ではあるものの、中小企業を中心に早急な賃上げがむずかしいケースは少なくない。

そうした状況に一石を投じるべく、プロジェクトをスタートし、賃上げがむずかしいと感じている企業などに第3の賃上げ方法があることを呼びかける。

エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野総太郎氏は、発表会で次のように話した。

「実質手取りを増やす福利厚生『第3の賃上げ』の採用を広く呼びかけ、賛同者を増やしていきたいと思います」

エデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野総太郎氏

ところで、なぜエデンレッドジャパンとフリーがタッグを組むことになったのか。その背景について天野氏は次のように述べた。

「当社は昨今の物価高やインフレの中で、福利厚生の導入によって手取り額が上がるという取り組みをサービスの軸として展開していました。サービス内容は異なりますが、フリー社も同様の取り組みをしていたので、当社からプロジェクトの声かけをさせていただきました。他にも思いを同じくしている企業があれば、プロジェクトを一緒に盛り上げていきたいと思います」

フリー株式会社 HR事業部 社宅事業責任者 相澤茂氏

「第3の賃上げ」になり得る福利厚生の種類

実際、どんな福利厚生が「第3の賃上げ」になり得るのだろうか。現状の2つの事例を紹介する。

事例1:食事補助サービス

エデンレッドジャパンの食事補助サービス「チケットレストラン」の例。例えば会社が食事補助として社員に半額を支給するとする。社員に支給したICカードに毎月7,000円分の食事代をチャージし、7,000円までなら社員は食事や飲食物が実質半額で利用できるようにする。

現行法では、「食事を支給したとき」において次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として所得税は課税されない。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。

出典:国税庁「食事を支給したとき」

つまりこの例で、会社が負担する3,500円は社員への給与にはならず、非課税扱いとなる。年間にすると「3,500円×12ヶ月」で合計「4万2,000円」が非課税となる。この分だけ、社員の手取りが増えるため、実質、賃上げとなる。

事例2:借上げ社宅サービス

freeeの借上げ社宅サービス「freee福利厚生」の例。

このサービスは、賃貸物件を法人契約で借り上げ、社員に貸し出す仕組みとなる。社員が自由に住みたい家を選択し、法人が契約するのだ。これにより、実質、賃上げにつながる。

通常の「家賃補助」は社会保険の対象となるが、「借り上げ社宅」の場合は、社員に支給される「社宅家賃」が社会保険の対象とならないため、社員は税負担が減る。結果的に手取りが増えるというわけだ。

「第3の賃上げ」のメリット

「第3の賃上げ」は、第1と第2の賃上げと比べてどんなメリットがあるか。エデンレッドジャパン天野氏によれば、経営者と社員それぞれにおいて次のメリットが期待できるという。

●経営者としてのメリット

まず福利厚生の費用は、一定の要件を満たせば経費として扱われ、企業にとって税負担の軽減になる。少額で導入できるため、中小企業でもトライしやすいのも魅力だ。

そして企業がどのような福利厚生を導入するかによって、社員や、これから採用する潜在社員に向けた前向きなメッセージとなる。

従業員満足度の向上、企業のイメージアップ、人材確保・定着といった効果を見込んで戦略的に福利厚生を導入する企業が増加しているという。

●社員としてのメリット

社員にとっては食事や住居など、日常に根差した福利厚生があれば生活コストが抑えられる。また要件を満たせば課税や社会保険の対象にならないため、実質の手取りが増える点もメリットといえる。

食事補助を実際に導入した企業の声から探るメリット

エデンレッドジャパンのチケットレストランを導入している企業からは、次の声が挙がっている。賃上げだけでないメリットがあるようだ。

(1)アイシーティーリンク株式会社 取締役副社長 吉野真吾氏

「コロナ禍後、ランチで外食をする機会が戻ってきましたが、ランチ代を節約する社員が目立っていたのでエデンレッドのサービスを導入しました。“保養所”のような福利厚生は非日常時に活用するものですが、食事補助は日々の暮らしの中で、企業からのサポートを実感できるものだと思います。社員の満足度は総じて高いです」(吉野氏)

(2)株式会社ハートコーポレーション 常務取締役 岡嵜将志氏

「当社は高齢者の介護事業を展開しています。介護業界は、国が定める介護報酬が絡んでおり、企業単位での積極的賃上げがむずかしい業界です。介護業界の人材の採用・定着のためには、給与面以外の待遇を改善する必要があるので、食事補助を導入しました」(岡嵜氏)

賃上げはこれからも各企業で進んでいく。そうした中、代替策の一つとして、第3の賃上げには期待がかかる。そしてただの賃上げにはない自社の社員が喜ぶメリットがあるのなら、導入の余地が出てきそうだ。

文/石原亜香利

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