集中スペースにはホワイトノイズ。オフィス全体で音量グラデーションを
オフィス回帰をしたがWEB会議する場所がない、集中して作業するスペースがない、といった課題を解決する「こもれるオフィス(集中力を最大まで引き出すオフィス)」も、提供例の一つだ。
集中するには、ある程度の雑音が必要といわれるが、音環境の工夫はどうすればいいか。
同社法人営業部の新井詩乃氏は「ホワイトノイズ」を勧める。
「人間の脳は身近な環境を監視するように進化してきたせいで、近くの音や動きですぐに気が散ってしまうといわれています。雑音については賛否両論あるようですが、ホワイトノイズには一定の効果があるという研究もあるようです」(新井氏)
音環境は、オフィス全体のグラデーション状のゾーニングがポイントになるという。
「ミーティングやアイデア創出のためのワイガヤスペース(ワイワイガヤガヤしているスペース)と、こもれるオフィスのような静かな集中スペースといったように、オフィス内の音量はグラデーションをさせるようにゾーニングすることがオフィスレイアウトの基本です。
例えば、こもれるオフィスのファミレスブースは、2~4人程度の少人数のチームで集中して話し合うために設置し、個室ブースはワイガヤスペースで出たアイデアを静かな環境下にて一人で落とし込みをするために設置。業務の目的によって、オフィスの音量の影響を考えてワークスペースを選べるように整備することが必要と考えます」(新井氏)
よくあるオフィスの失敗例3選
加登氏によれば、よくあるオフィスの失敗例として、「総務やファシリティ部門が、ワーカーや現場の意見をヒアリングせずに、よかれと思ってメーカーの最新家具を購入したり、レイアウト変更を行ってしまったりする」ケースを指摘する。
例えば、こんな3種のパターンはよくあることだという。
1. 業務に合わないレイアウト変更
・チーム業務の部門に対し、セミクローズの集中型レイアウトを導入。デスクパネルやパーテーションを設置した結果、コミュニケーションがスムーズに取れなくなってしまった。
・コミュニケーションを重視し、すべてフリーのワークスペースに変更したことで、デザイナーやプログラマーなどの個人作業ワーカーの生産性が下がってしまった。
2.一方的なコミュニケーションスペース
・世代間のコミュニケーション不足解消のため、フリーのコミュニケーションスペースを導入。しかし役員ばかりが集まって使用してしまい、下部メンバーが誰も利用しない結果に。
・集中スペースの付近にコミュニケーションスペースを配置したことによって、話し声がうるさいとクレームが発生してしまった。
3.家具の機能が機能しない
・健康経営を意識し、昇降テーブルを導入したが、実際、誰も立って使用していない。
・組織間のコミュニケーションを創出するためフリーアドレスを導入したが、決まった場所にしか座らず固定席化した。
これらの失敗の予防策として「オフィス作りには、その企業で実際に働く皆さんへの徹底したヒアリングの上での要件定義・コンセプト設定が必要になる」と加登氏はアドバイスする。
しかし「ヒアリングをしてもスペースや働き方が本当にフィットするかは、導入をしてみないと分からない」(加登氏)側面もあるため、まずはレンタル家具で試してみるのも選択肢の一つになる。
「また明日も出勤したくなる」オフィス作りを目指して
トライ&エラーを繰り返す中で大事なのは、やはり目的設定だ。
「今のオフィスはただ出社するだけでなく、『人、モノ、場所、時間が交差しながら価値を生む場所』として再認識されています。私たちはお客様の働き方に合わせて、さまざまな家具やレイアウトを提案しますが、根本的には『また明日も出勤したくなる』オフィス作りの提案を心掛けています」(新井氏)
オフィス作りに悩む経営層やオフィスの使い勝手に疑問を感じる社員が共に、ポジティブになれるオフィスを目指したいものだ。
文/石原亜香利