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なぜ高級腕時計の広告は時計を垂直に見せるのか?仕事に役立つ「行動経済学」入門

2024.03.03

世界のビジネス界が最も注目している経済行動学。グーグルやアマゾン、アップル、マイクロソフトといった世界の一流企業で行動経済学が経営に取り入れられ、COO(最高執行責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)といった肩書に加えて、CBO(最高行動責任者)という肩書が注目され始めた。

今回は行動経済学博士で米国行動経済学コンサルタントの相良奈美香先生に、世界の企業が求めている行動経済学について教えてもらおう。

経済における人間行動のメカニズムを解明するのが行動経済学

――ハーバードやマサチューセッツ工科大学などトップクラスの大学でも行動経済学を授業に取り入れ、博士課程を設定しています。経済学の中でも、最近、最も注目されている学問です。

相良先生 世界のビジネスエリートが行動経済学を学んでいますが、その理由は経済活動が人間の行動の積み重ねであり、だからこそ人間の行動を理解することこそが、キモになるからです。

「ウチはBtoBだから」と言われるかもしれませんが、企業間取引であっても、あなたの企業の顧客はまぎれもなく「人間」であり、あなたを取り巻く上司や同僚、取引先も皆、「人間」です。経済(活動)とは結局のところ、こういった人間の行動の連続で成り立っているのです。

そうした経済(活動)における人間の行動のメカニズムを解明する学問が行動経済学なのです。そして、行動経済学では「なぜ人はそう活動するのか」がわかる点が、重要なポイントです。

単に「ある人はAをして、Bをしなかった」という過去の行動の履歴だけでは、なかなか対策を導き出すのは難しいのですが、「なぜBをしなかったのか」がわかれば、どうすればBをしてもらえるかが導き出せるでしょう。

人がなぜそう行動するのか?を直感や主観的判断ではなく、サイエンス、つまり実験で証明された人間のセオリーとして理論家したのが、行動経済学なのです。

実際になぜそうした行動をするのかを理解し、フレームワークを駆使して多くの人々を一気に動かした事例はたくさんあります。こうした圧倒的なインパクトがあるからこそ、行動経済学が最強の学問であると言われる理由のひとつなのです。こうした点に気づいた世界のエリートたちが、行動経済学を注目するようになったのです。

しかし、実際に学んでいる人々の間では、行動経済学が新しい学問であることから、体系化されておらず、理論がバラバラで大変理解しにくいと言われてきました。いくつかの理論があり、それを丸暗記するしかなく、本質をつかみにくかったのです。

そこで、私は新しい学び方を提案し、主要理論を体系化して一冊の本にまとめました。新刊「行動経済学は最高の学問である」(SBクリエイティブ発刊、定価1870円)です。行動経済学の本質を明らかにすると同時に、本質を理解するための3つのカテゴリーに分けて解説しました。

オバマ大統領の再選選挙で活用された行動経済学

――行動経済学が人々を動かした事例があれば教えてください。

相良先生 行動経済学の第一人者で、データサイエンティストでもあるデビット・W・ニッカーソンが選挙対策チームに加わった、オバマ大統領の再選選挙の事例を紹介しましょう。

オバマ大統領に限らず、選挙戦のカギを握るのは浮動票です。選挙が盛り上がるアメリカですが、みんな忙しいのは日本と同じ。「選挙に行くつもりだったのに、用事が入って行けなかった」という人はたくさんいます。こうした選挙に行くか行かないか「微妙な人たち」の票をいかに集めるかで、選挙の命運が決まります。

民主党のオバマの支援者は主にリベラル層です、ニッカーソンらはまずデータサイエンスを使ってリベラル層の「微妙な人たち」が多く居住する地域を特定しました。そして、行動経済学を使って「なんとなく(選挙に)行かない理由」を取り除く戦略を取りました。

その戦略はとてもシンプルで、以下の3つの質問をするというものでした。

「選挙の日、何時に投票しますか?」
「その日はどこから投票所に行きますか?」
「直前にはどんな予定がありますか?」

この3つの質問をただ聞くだけでした。

「微妙な人たち」の頭の中に、当日、選挙に行くまでの過程を描かせてあげたのです。こうした働きかけて、頭の中の「何となく行かない理由」を取り除くことができました。

経済行動学に基づいたこうした戦略が浮動票の獲得に繋がり、オバマ大統領再選に寄与した事例としてよく知られています。そのほかにも、すでに行動経済学が盛り込まれたサービス事例はたくさんあります。

ネットフリックスでは第一話が終了するとすぐに第二話がスタートします。今では当たり前と思われるかもしれませんが、DVDが主流だった時代は、自分で続きを見るかどうか、選択して行動しました。でも、ネットフリックスでは、私達は何もしなくても当然のように続きが再生されます。これも行動経済学の理論に則った仕組みのひとつです。行動経済学では「現状維持バイアス」という理論で表されますが、人は無意識に今の状況を続けてしまうのです。

ポイント制度にも行動経済学が盛り込まれています。スターバックスなどのモバイルアプリにはスターというポイント制度があります。スターを集めると、期間限定ボーナスが「残り〇〇日」と表示されたり、「ゴールドスターまで残り〇〇スター」などと表示されます。人はゴールが近づくほど意欲が増す、bというものが働くのです。これはコンピューターゲームの理論をビジネスに応用した、ゲーミフィケーションでもあります。

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