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日本のEC市場は成長過程か?低迷状態か?ECの世界的権威に聞いてみた

2024.03.04

オン・オフライン使い分けている日本の消費者

――調査の結果、世界のEC市場と日本のEC市場でどのような差がみられましたか?

サンダースさん パンデミックの際、日本はシンガポールを除くすべての調査対象国よりもオンライン売上が急増しました。これは、パンデミック以前に日本のオンライン・ショッピングの普及率がやや低く、成長の余地が大きかったためとも考えられます。

しかし、2026年までには、日本のオンライン・ショッピング普及率は、調査した市場の中で最も高くなるでしょう。日本の消費者、特に高年齢層において、パンデミックの際にオンラインの利点を知り、様々な形態のオンライン・ショッピングのタッチポイントを採用する人が増えています。

しかし、マルチチャネル・ショッピング(※1)において非常に強力な基盤を持っている日本は、買い物客が非常にデジタルに精通しており、オンライン・ショップと実店舗をシームレスに使い分けています。

――1月30日に行われた「消費者動向とウエルビーイングから考える地域の未来とECの役割」セミナーでは、日本の小売業の市場規模に関するデータを提示し、2024年以降、約2%程度の成長を予測されていますが、その理由について教えてください。

サンダースさん 成長の原動力となっているのは、一部のカテゴリーにおける継続的なインフレ、パンデミックからの回復、観光客数の増加、日本の消費者の消費意欲の高まりなどです。

これらすべてが相まって成長を後押しています。歴史的な文脈から見れば、小売消費が低迷しがちな日本にとって、2%の成長率は非常に良いですが、消費支出の伸びは、調査対象となった他の多くの国々に比べ、依然として鈍いです。

日本のEC市場の成長率は高い

――今回の調査によると、日本のEC市場は2024年に11.3%、2025年は10.7%、2026年は10.6%と約10%程度の成長率が予想されています。この成長率の数字をどのように評価されていますか?

サンダースさん この10%というのは非常に立派な成長率であり、重要なのは、小売業全体の成長率よりも速い、ということです。

また、今後数年間、日本の消費者の多くが、コロナ禍で身につけたオンライン消費の習慣の、少なくとも一部を堅持することを、物語っています。

とはいえ、オンライン・ショッピングの成長の多くは、他のチャネルや、それらを横断して買い物をする人々によって支えられているという点で、実際にはマルチチャネルの成長と言えるでしょう。

これは、実店舗の小売業者がマルチチャネル・サービスを提供することで、「より高い成長率で利益を得ることができる」ということを意味するため、肯定的なことです。

マルチチャネルの可能性に期待

――日本の消費者は店舗で商品を見て、ネットで安いものを購入するケースが多いようですが、マルチチャネルの可能性について教えてください。

サンダースさん マルチチャネルの小売が強いのは、日本の買い物客にオンラインと実店舗の両方の良さを提供できるからです。

人々はさまざまなチャネルを使い分けて買い物をします。まずオンラインでさまざまな選択肢を調べ、購入する前に店舗に行って実際に商品を見るかもしれません。あるいは、オンラインで購入し、すぐに手に入るように店舗で受け取るかもしれません。また、適切なものを適切な価格で購入することもあるでしょう。日本の買い物客の4分の3以上が、購入先を決める前に複数の小売店を訪れているので、これは、非常に競争の激しい小売市場であることを示しています。

オンラインと比較して、消費者は買い物のしやすさ、商品を素早く見つけること、友人と時間を共有すること、楽しい経験をすること、そしてカスタマーサービスにおいて、店舗環境の方が優れていると感じています。

特に、食料品を購入する際には実店舗が人気で、4分の3近くの買い物客が、食料品を購入する際に実店舗を最も頻繁に利用すると回答しています。

最安値、利便性、品揃えの豊富さといった点では、オンライン・チャネルは実店舗よりも優れています。消費者は、何を買うか、なぜ買うかによってニーズは変わるため、ニーズに対応すべくオンライン、実店舗の両方を利用します。

――マルチチャネルを成功させるために重要な課題とは?

サンダースさん マルチチャネルの小売を成功させるための最大の課題は、シームレスな体験を確保することです。

チャネルをまたいで買い物をする消費者は、情報が一定であること、価格が同じであることを望んでいます。また、つながりのある体験も求めています。

例えば、消費者がオンラインで商品を探していて、店舗で購入したい場合、行きたい店舗にその商品の在庫があるかどうかを確認できるのは便利です。この実現のために、小売業者はシステムを連携させる必要があります。

――最後に、今後、日本のEC市場成長のためには何が必要だと考えていますか?

サンダースさん 日本のEC市場が成長を続けるためには、継続的なイノベーションが必要です。多くの小売業は、新しいサービスを追加し、複数のチャネルをまたいだショッピングを容易にすることで、これを実現しています。市場は競争が激しく、ダイナミックであるため、イノベーションに拍車がかかっています。

――ありがとうございました。

「マルチチャネルの成功にはシームレスな体験を確保」というサンダースさん。システムをいかに連動させて、お買い物しやすい環境づくりをするかが、成功のカギになりそう。

※マルチチャネル
実店舗やECサイト、SNS、アプリ、カタログなど、複数の販売チャネルを組み合わせて集客や販売を行うこと。

ニール・サンダース氏
GlobalDataの小売部門のマネージング・ディレクター。企業への小売提案と調査を担当。また、顧客と協力して小売、買い物客、市場の状況を理解しながら、ビジネス戦略を開発、実行する最善の方法をアドバイスしている。GlobalData入社以前は、小売調査会社Verdictに10年間勤務。その後、コンサルティング、企業開発、プランニングを担当する取締役に就任。Verdict以前は、John Lewis Partnershipに勤務し、新店舗の計画・移転、eコマース事業の開発、技術・情報システムの構築などに携わる。渡米前は、グレート・ウェスタン鉄道の非常勤取締役を11年弱務めた。現在は、サウサンプトン大学のビジネス・法学部の諮問委員、ニューハンプシャー大学の名誉講師、サリー大学の客員フェローを務めている。

文/柿川鮎子

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