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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
Xさん
「妊娠したことを伝えたら、よくわからないままに退職扱いにさせられていました……」
会社
「いや、退職の合意をしました」
裁判所
「いや!そんな合意はなかったね。合意の有無はチョー慎重に判断します」
(TRUST事件:東京地裁立川支部 H29.1.31)
以下、わかりやすく解説します。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
建築物の測量などを行う会社
▼ Xさん(女性)
建築測量などに従事
どんな事件か
▼ 妊娠が判明
入社して約1年3か月後のH27.1.21、Xさんが妊娠しました。上司に相談したところ「現場業務を続けることは難しい」との話になりました。
▼ 派遣会社に登録
そこで社長が、派遣会社への登録を提案しました。社長としては、Xさんの生活を保障するための代替手段として提案したようです。
―― 派遣会社への登録については納得したんですか?
Xさん
「はい。でも会社を辞めるつもりはありませんでした。当分の間は派遣先で働いて、出産後に今の会社に戻れると思っていました」
▼ 社会保険に加入したい
Xさんは、派遣で働く前に2度、会社に対して「社会保険に加入したい」と申し入れました。その申し入れに対して会社は特に、「我が社では加入は無理です」などの返答はしませんでした。
▼ 派遣先で働き始める
Xさんは派遣会社に登録し、派遣先も決定し、H27.2.6から働きはじめました。働いたのはこの1日だけです。
▼ 退職扱いになっている!?
そんな中、寝耳に熱湯です。H27.6.10、社長がXさんに対して「我が社では退職扱いになっています」と連絡をしました。
―― 社長、なぜ退職扱いにしたんですか?
社長
「我が社に在籍しながら派遣会社にも登録すると、派遣先の選定や受け入れに支障が生じる可能性があると考えたからです」
―― Xさんは、いかがですか?
Xさん
「退職届を出してないのに。そんな扱い納得できません……」
というわけで、Xさんは提訴しました。請求内容は「まだ社員としての地位がある」ということと「慰謝料を払え」というものです。