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会話の中で見聞きする英単語の中には、複数の意味を持つことから幅広い分野で使われる言葉がある。「CASE」は日々の暮らしで起きる物事に関連するだけでなく、医療用語にも使われるフレーズだ。
また近年では「CASE」が新しい概念となり、世界各国の自動車産業から注目を集めていることをご存知だろうか。
本記事では、「CASE」の意味や自動車産業に与える影響を解説する。英語でコミュニケーションをとる機会の多い方は、ビジネスシーンで役立つ英語表現もチェックしてほしい。
「CASE」は複数の意味を持つ言葉
まずは、「CASE」の意味やニュアンスの違いを見ていこう。
■個々の事例や状況を指す「CASE」
個々の具体的な事例や特定の状況を指す「CASE」は、事実をもとに物事が起きた経緯を考慮するニュアンスを含む。そのため事件が生じた際や、前例となる出来事を挙げる場合に使用する。
語源はラテン語の「cado」であるとされ、複数の外来語を取り入れたのち、英語で「CASE」と表すようになった。かつて「cado」は「人や物が落ちること」を指したが、アクシデントが起きるというニュアンスから派生して「出来事」を表す「casus」が生まれた。
時代の流れとともに語句や意味が変化し、古フランス語で「場合」を指す「cas」を経て「CASE」が誕生した説が有力だ。
■物を保管するための容器や入れ物を指す「CASE」
容器を指す「CASE」は、中身が入っているかどうかに関わらず、物を入れて保管することを目的としたアイテムを指す。日本語ではカタカナ表記の「ケース」と訳され、スーツケースが代表例だ。
語源は諸説あるとされるが、ラテン語で「箱」を指す「capsa」が転じた説が有力だ。なお、イタリア語やスペイン語で「case」は「家」を意味するが、箱型の建物に家具などを収めるという意図から、同じ「capsa」がルーツといわれる。
■過去の症例を指す「CASE」
医療において過去の症例を指す「CASE」は、疾患により引き起こされた患者の症状というニュアンスを含む。そのため、治療を受けている患者に対してではなく、ウイルスによる感染が報告された場合などに使用する。
また、「CASE」と混同されがちな言葉に「patient」がある。どちらも医療用語にあたるが、「patient」は医療関係者から見た患者のことを指す。「病気により苦しい状態に耐えている人」を意味し、疾患を指す「CASE」と区別できる。
自動車産業における「CASE」とは
自動車産業において「CASE」は、自動車メーカー各社の事業に影響を与えるイノベーションだ。ここでは、「CASE」の概念や注目されている理由を取り上げる。
■新しい車を開発する軸となる概念
自動車産業で用いられる「CASE」は、モビリティの革命を示唆する4つのフィールドの頭文字を結びつけた造語だ。語句を分けると「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング/シェアリングサービス)」「Electric(電気自動車)」が含まれ、新しい車を開発する軸となる重要な概念を表す。それぞれの言葉が持つ意味は以下の通り。
・Connected:外部と連携できる通信機器やセンサーを自動車に搭載し、インターネットを介して幅広い情報を得る技術を指す。
・Autonomous:自動運転技術の目覚ましい進化のことを指す。
・Shared & Services:自動車を必要な時に共有するなどの新しい使い方やサービスを指す。
・Electric:電気自動車(EV)やハイブリッド車の供給を増やし、自動車が排出する温室効果ガスを削減することを指す。
■自動車産業で「CASE」はなぜ注目されている?
自動車産業に革命をもたらした概念「CASE」は、ドイツの実業家でありメルセデス・ベンツ・グループ(旧ダイムラー)のCEOも務めたディーター・ツェッチェが発案者だ。
2016年9月に開催された「パリモーターショー2016」に登壇したディーター・ツェッチェは、モビリティ業界の新たな潮流として「CASE」の長期戦略を提唱。新車の製造や販売に力を注ぐだけではなく、移動手段のサービスを提供するほか、環境問題にも配慮した計画が注目を集めた。
のちに「CASE」は世界各国に広く浸透し、日本国内においても経済産業省と連携した大規模な取り組みを実施している。
「CASE」を用いた英語表現
最後に、ビジネスシーンで使える「CASE」を用いた英語表現を紹介する。使い方を具体的にイメージするために、例文も参考にしてほしい。
■That’s not always the case
“That’s not always the case”の意味は「必ずしもそうとは限らない」。相手の意見に対して事実を否定するほか、へりくだって謙遜する際に使用できる。“the case”が「真実」を指し、否定表現の“not”を副詞として成り立つ。
【例文】
A:“You’re such a nice person. Has it always been like that?”
(あなたはとても優しい人だね。いつもそうなの?)
B:“That’s not always the case.”
(そうとは限らないよ)
■As is the case with
“As is the case with”の意味は「~と同様に」「よくあること」。相手に対して「この出来事は日常的によくあることだ」と伝えたい場合に使用する。ただし、過去に起きた出来事と似た事例を挙げる場合は、“is”を“was”に置き換えて“As was the case with”と訳す。
【例文】
“As is the case, there are exceptions.”
(よくあることですが、例外もあります)
■On the case
“On the case”は、特定の事件や問題などを進んで調査することを意味する。警察が犯人の捜査にあたる場合や、チーム内の問題を解決する際に使用できる。なお、“On the case”は教訓や助言のニュアンスを含むため、ことわざにあたるフレーズだ。
【例文】
“Shed light on the case.”
(事件の問題を浮き彫りにする)
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部