■連載/石野純也のガチレビュー
クラウドファンディングで先行販売し、5000万円以上の出資を受けたファーウェイの新製品が登場した。耳にかけるイヤホンの「HUAWEI FreeClip」だ。一般的なイヤホンは、カナル型であれ、インナーイヤー型であれ、耳の穴に機器を入れるのが一般的。これに対し、FreeClipは耳を挟むようにかけるだけ。耳の穴には何も入れないのが特徴だ。スピーカーから、耳に対して指向性のある音をダイレクトに届けている。
その形状を見ると、盛大に音漏れしてしまいそうに見えるが、ファーウェイはここにノイズキャンセリングの技術を応用。流れている音と逆位相の音を周囲に出すことで相殺する。あたかも通常と同じようなイヤホンを装着しているかのように、自分にだけ音が聞こえるような仕組みになっているという。その技術は、「HUAWEI Eyewear」などの製品で培ってきたものだ。
では、実際の音や使い勝手はどうか。音漏れしづらいといううたい文句も本当なのか。実機を使い、FreeClipの実力をチェックした。
クラウドファンディング先行で発売されたFreeClipだが、現在は一般販売も始まっている。価格は2万7800円
イヤホンとは思えない軽いフィット感、周囲の音もしっかり聞こえる
以下の写真を見ると分かるように、FreeClipはイヤホンとして非常に特殊な形状をしている。豆のような形にも見えるパーツと球状のスピーカーが、U字型のパーツで接続されている。このデザインをファーウェイは「C-bridge Design」と呼ぶ。湾曲したパーツは柔らかく、少し力を加えただけでグニャっと曲がるようになっている。この形状で、人によって異なる耳の形や厚さをカバーする。装着時のフィット感がいいのは、そのためだ。
2つのパーツを柔らかな線でつないだような形状。丸型の方が、スピーカーだ
装着時には、両端が耳の内側と外側に配置されるようにかける必要がある。耳の穴に差し込むタイプのイヤホンと違い、耳に引っ掛けているだけなので、やや不安感があるかと思いきや、適度な力がかかりしっかりと耳に合うよう固定される。かと言って、一般的なイヤホンのように、耳の中に異物が入っているような違和感はない。一言で言えば、自然な着け心地だ。
こうした特徴もあるため、長時間着けていても耳が痛くなるようなことが少ない。むしろ、着けているのを忘れてしまうかのように存在感が薄い。もちろん、これはいい意味でだ。そのため、例えば1時間以上に渡るビデオ会議で着けていても、耳が疲れなかった。自然に装着できるという意味では、既存のイヤホンを大きく上回る。
豆型の「コンフォートビーンズ」と、ドライバーユニットのある「アコースティックボール」で耳を挟み込む形で装着する
また、耳の穴をふさがない形状のため、周囲の音をしっかり聞き取ることが可能だ。サウンドを止めてしまえば、イヤホンを着けていない時とまったく変わりがない。音が小さければ、スピーカーから流れてくるサウンドと、周囲の環境音が両立する。外音取り込み機能を備えたイヤホンも徐々に増えているが、FreeClipの場合、外音そのものが耳に入ってくるため、自然さでは群を抜く。
そのため、外出時に装着して、そのまま1日過ごすこともできる。一般的なイヤホンのように、音を聞く時だけ装着し、聞き終わったら外すといった作業が必要ない。その意味では、日常生活になじむイヤホンと言っていいだろう。連続駆動時間は8時間。音楽を再生していなければ、この時間はさらに長くなる。帰宅が夜遅くにならないようであれば、十分、丸1日バッテリーが持つ。常時装着が前提にできる点で、既存のイヤホンとは立ち位置が大きく異なると言えそうだ。
写真は発表会でのスライド。音楽再生時間は8時間だが、装着したまま無音で過ごす時間が長ければ、1日装着したままでもバッテリーはなくならない