「才能の無駄遣い、だが欲しい」「意味がわからなさすぎて最高」「真面目にふざけてるの好き」…そんな一癖ある言葉で称えられた商品がSNSで話題になった。
しかも、その製作工程が魅力的なので公式動画から抜粋させていただく。
洗練されたレザーアイテムを生み出してきた老舗企業が作ったまさかのアイテム
なんだろ?
手のひらサイズよのようだが、
コインケース?
え?
は?
石?
まさか?
え???
おわかりいただけただろうか。
静謐な世界観の動画では、職人の確かな腕が軽やかに舞い、一つの作品が造り上げられていく。完成したのは、まさかの鞄。
川遊びやキャンプの際に水切り石を運ぶための『水切り石専用バッグ』だ。
手掛けたのは、ご存知「土屋鞄製造所」。
1965年創業。ランドセルをはじめ、洗練されたレザーアイテムを生み出してきた老舗企業だ。
2年前には創業者でランドセル職人の土屋國男氏が「現代の名工」に選出。確かな技術と歴史に満ちた企業が、なぜとてつもなくニッチな商品に匠の技を注ぎ込んでしまったのか?
今回、株式会社 土屋鞄製造所PRチームの山登有輝子さんに話を伺った。
――「水切り石専用バッグ」を開発・製作したきっかけを教えてください
「日頃、鞄づくりを担当している職人が子どもの頃、水切りに夢中になった懐かしい記憶を思い出し、とっておきの水切り石を運ぶことができたなら…という大人の遊び心から製作しました」
――こだわった点は?
「職人技が光る点としては絞り加工です。「ヌメ革」に水分を含ませ、伸ばしながら立体的に成形する職人技です。
「ヌメ革に水分を含ませると可塑性(固体に力を加えて変形させた後、その力を取り除いても形を保ち続ける性質)が高まるので絞り加工がしやすくなるんです。成形に使用した木型もオリジナルで製作し、革に傷が付かない仕様になっています」
こうして作られたニッチな鞄。だが、土屋鞄独自の挑戦はこれが初めてではなかった。
水切り石専用バッグは2020年から始まった「『運ぶ』を楽しむ」シリーズの一つで、これ以外にも職人の技術力や知識を活かしたオリジナル鞄が登場している。
例えばこちらは、スイカを運ぶための「スイカ専用バッグ」。
洗練された球体フォルムで丈夫さと柔軟性に優れたイタリアの高級牛革を使用した逸品。
そしてこちらは、「だるま専用バッグ」だ。
だるまの手をイメージした魔矢を挿したり、お守りを掛けられるフック付きなど遊び心溢れるデザインが特徴。
「スイカ専用バッグは21個限定で販売し2週間で完売。だるまバッグは8個限定で発売開始から1時間で完売いたしました」(山登さん)
「運ぶを楽しむ」というテーマ通り、既存の鞄の使われ方にとらわれない自由なアイデアを形にした本シリーズ。ものづくりを通した「わくわく感」や「ときめき」を伝えたいという想いが込められている。
現在このシリーズは第5弾まで展開されており、老舗の大胆な試みにユーザーからも大きな反響が寄せられているという。