小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

米国近代美術の巨匠エドワード・ホッパーの作品から読み解く資本主義とアメリカ社会

2024.02.27

ホッパーとヘミングウェイとアメリカ

ホッパーとヘミングウェイの関係にも言及しておきたいと思います。

1882年生まれの画家ホッパーと1899年生まれの小説家ヘミングウェイは共に20世紀前半のアメリカを舞台に活躍したアーティストです。

「ナイトホークス」の着想となった作品のひとつにヘミングウェイの「殺し屋」という作品があります。この小説の舞台は1920年代の禁酒法時代のイリノイ州サミットを舞台に書かれており、食堂にやってきた殺し屋の男2人が食事を済ませたあと、店内でスウェーデン人のオーレ・アンダーソンの殺害予告をして、その場に居合わせた少年ニックや料理人サムを縛り上げて、銃を持ってアンダーソンがやってくるのを待ち伏せします。ところが予定時刻を過ぎてもアンダーソンがお店にこないため、2人の殺し屋が店から出ていきます。その後、ニックはアンダーソンに一連の事件を伝えに行きますが、アンダーソンは命が狙われているにも関わらず逃げようとしません。仕方なくニックが店に戻り給仕人のジョージにそのことを伝えたあと、ニックは腹を決めて街を出ていく決意をして話は終わります。

当時の禁酒法時代といえば、アメリカを代表するギャングであったアル・カポネが実在する時代であり、おそらくアンダーソンは殺し屋から逃れることは不可能な運命です。

こうした安易な救いを残さないヘミングウェイの姿勢に対して、ホッパーは強く惹かれたようです。実際、この短編集が掲載された数ヶ月後には、ホッパーは編集部宛に手紙を書くほどの感銘を受けています。

おわりに ホッパーとロストジェネレーション

最後にホッパーのプロフィールとロストジェネレーションについても触れておきます。

ホッパーはニューヨークのアートスクールでイラストレーションとペインティングを学びました。

その後はイラストで生計を立てながら、合間でペインティングをする生活を続け、1909ー10年の2年間はヨーロッパに滞在しています。
まだ歴史の浅いアメリカにとって、芸術分野はヨーロッパ文化の影響が今よりも大きかったのです。そしてホッパーがヨーロッパに渡った時期と、ヘミングウェイに代表されるロストジェネレーション(失われた世代)に該当する芸術家がヨーロッパに滞在した時期は重なる部分もあり、この時代のアメリカの芸術家に共通する命題がアメリカのアイデンティティの獲得であったことから、ホッパーはヘミングウェイに感銘を受け、またホッパー作品は多くのアメリカの芸術家や文化人を触発したのです。

最後になりましたが、今回は大好きなエドワード・ホッパーについて書く機会に恵まれたことを嬉しく思います。今後も時代ごとにホッパー論が登場し、多くの解釈や再考が続くことが予想されます。こうした余白があることもホッパー作品の持つ魅力ではないでしょうか。

以上、アイデアノミカタ「エドワード・ホッパーから読み解くアメリカと資本主義」でした。

文/スズキリンタロウ(文筆家・ギャラリスト)

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年5月16日(木) 発売

新NISAで狙え!DIME最新号は「急成長企業55」、次のNVIDIAはどこだ!?

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。