安芸高田市長 石丸伸二さん
付箋を貼りまくっている〝為政者としての参考書〟
1982年生まれ。三菱UFJ銀行での勤務を経て、2020年8月より広島県安芸高田市の市長を務める。議会における忌憚のない意見や討論がYouTubeなどを通じて話題を集めている。趣味はマンガ集め、ジャグリング、トライアスロン。
生涯で読んだマンガは何と2万冊以上!
37歳という若さで安芸高田市長に就任した石丸伸二さんは、元銀行員という肩書も相まって堅いイメージを持たれがちだが、実は大のマンガ好きという一面を持つ。
「生涯で読んだマンガは2万冊以上。自宅には7000冊ほど保有していて、電子書籍も数千冊持っています」
石丸さんが初めて読んだマンガは『ドラゴンボール』だったそうだ。
「当時放映されていたアニメから原作がマンガで連載されていることを知り、兄弟で小遣いを出し合って『週刊少年ジャンプ』を買っていましたね。単行本を集め出したのは大学生からで、バイトしつつ食費を削って買っていました」
現在は終業後、夕食を食べたあとに読んでいるそうだ。
「まとめ買いした電子書籍をちまちま読み進めています。子供の頃は激しいアクションのあるかっこいいマンガが好きでしたが、大人になった今は人間ドラマが凝縮された作品が好みになりました」
石丸さんの自宅には、壁一面に本がずらり! おもしろそうな作品はジャンルを問わず購入しているそう。
つらいことのほうが多いのに、それでも人はなぜ働くのか?
そんな石丸さんが、仕事のやる気をもらえる作品として挙げたのが『働きマン』だ。
「主人公はいわゆるバリキャリで、泥くさく動き徹夜も辞さない、ソルジャー系の働き方です。今の時代だと古くさく感じるかもしれません」
しかし、その本質は「何のために働くのか」を問い続けるというものだという。
「主人公は仕事や人間関係がうまくいかず陰鬱になることもあるんですが、やっぱりこの仕事が好きで楽しくて働いているのだと最終的に納得します。仕事ってつらいことのほうが多いんですが、その先にある一瞬のカタルシスがあるから続けられる。その初心を思い起こさせてくれる作品です」
今の時代にこそ、働く人たちに読み直してほしいと石丸さんは語る。
「20代後半という年齢でこれだけ仕事に本気で向き合う主人公の姿勢は応援したくなりますし、刺激をもらえます。僕も彼女のように納豆巻きを食べながら仕事しようと思います(笑)」
すべての人が生きるうえでの道しるべになる一冊
石丸さんがビジネスに限らず、生きるうえで頼りになると絶賛する作品として『蒼天航路』を挙げた。
「中国の三国志をベースとして、悪役として描かれがちな曹操を主人公とした物語です。作中では人間味にあふれた豪傑として描かれており、彼や周囲の人間の生き様からは多くのことを学びました」
石丸さんはお気に入りのページに付箋を貼っているほど何度も読み返しているそうだ。
「登場人物たちに共通しているのが、求められている役割を果たすということです。特に曹操はリーダーであろうという意識ではなく、人間的な魅力が強すぎて自然とそうなっていきます。まさに周りがついていきたくなるリーダー像を体現しており、今の自分にとってはひとつの理想だといえます」
今や安芸高田市のリーダーとなった石丸さんだが、市長になる際、思い返して読んだシーンがある。
「息子の曹丕に後継者となる太子の地位を与える話があるのですが、この時に曹操は曹丕に『もう心に潤いは望めぬぞ』と語ります。為政者である以上、一個人としての人生は後回しにしないといけない。俺がやっている仕事はそれくらい大変だ、それでもやるのか、という問いです。読みながら私自身もその覚悟を問われているような気がしました」
銀行員から市長への挑戦は、間違いなく人生最大の決断だっただろう。その一歩を後押ししてくれたのが、子供の頃から愛したマンガだった。石丸さんにとって、マンガはまさに人生におけるバイブルなのだ。