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英語由来のビジネス用語には、「ニュアンスはわかるけれど、正確な意味を説明するのが難しい」と感じる言葉が少なくない。「キャッチアップ」もそんな言葉の一つだ。「◯◯をキャッチアップしておいてくれ」と言われた場合、なんとなく、「調べるという意味かな?」と考えがちだが、業界や分野によっては、まったく異なる意味となる場合がある。
そこで本記事では、さまざまな意味を持つ「キャッチアップ」について、業界・分野ごとの意味と使い方を解説する。
「キャッチアップ」の意味は?
英語の「キャッチアップ(catch-up)」は、「追いつくこと」「追い上げること」を意味する名詞だ。動詞では「catch up」となり、特にスポーツシーンなどでの巻き返しや、ノルマなどの遅れを取り戻すことを意味する。
ビジネスでの「キャッチアップ」は「先行するものや情報を追いかけること」
ビジネスで一般的に使われる「キャッチアップ」も、英語の意味を受けて「(先行するものを)追いかける」「追って理解(把握)する」といった意味で使われる。
ビジネス分野での「キャッチアップ」の使い方
・新たに配属された部署のマニュアルを読んで業務手順をキャッチアップした。
・競合他社の動きをキャッチアップする。
・まだ同期の成果にキャッチアップできていない。
キャッチアップが早い人の特徴は?
ビジネスパーソンであれば、仕事の成果や進捗が思い通りにいかず、キャッチアップの必要性を感じる場面も多いはずだ。キャッチアップの早い人は、主に以下のような行動を心がけていることが多い。
・不明なことはすぐに質問する
・執着やこだわりが少ない
・固定観念にとらわれない
・情報収集を心がけている
・自分なりのモチベーション(メンタル)のコントロール方法を持っている
・作業に優先順位を付け、重要度の低いものは断る
業界・分野によって異なる「キャッチアップ」の意味
「キャッチアップ」は、業界や分野によって意味が異なる。一般的なビジネス用語以外の「キャッチアップ」について見てみよう。
経済用語としての「キャッチアップ」
経済分野での「キャッチアップ」は、経済発展・技術水準などが一定レベルに追い付くことを意味する。
医療分野で使われる「キャッチアップ」
医療分野での「キャッチアップ」は、主に以下の意味で使用されている。
・キャッチアップ接種:定期接種が行なわれているワクチン(主にHPVワクチン)について、対象年齢(HPVワクチンは小学校6年から高校1年相当)のうちに接種できていない人に接種を呼びかけること。
・キャッチアップ現象:胎内にいる赤ちゃんの生育現象。成長が遅れ気味だったものが何らかの原因により改善することを指す。
・キャッチアップ障害:排卵後の卵子を卵管に取り込む「卵管采(らんかんさい)」が機能せず、妊娠しにくくなること。別名を「卵管采不全」「ピックアップ障害」ともいう。
IT分野で使われる「キャッチアップ」
IT分野での「キャッチアップ」は、サービス内容によりさまざまな意味を持つ。代表的な「キャッチアップ」は以下の通り。
・キャッチアップ機能:ニュースリーダーの機能で、未読の記事が大量に蓄積されている場合、それらを既読(もしくはスキップ)して、最新の生地に追い付く。
・画像のキャッチアップ:インターネット上の画像をワンクリックで一括ダウンロードすることを指す。
放送業界の「キャッチアップ」は再放送のこと
放送業界での「キャッチアップ」は、正式名を「キャッチアップ放送(配信)」といい、「再放送」を意味する。リアルタイムで番組や配信を視聴できなかったユーザーに対して再放送を行うことで、今後の放送をリアルタイムで視聴してもらい、視聴率獲得につなげるねらいがある。
水泳の「キャッチアップ」は泳法を指す
スポーツ分野では水泳の泳法の一つに「キャッチアップクロール」がある。クロールの基礎となる練習用の泳ぎ方のことで、主に前方で手と手が重なるようなストローク(腕で水をかく動き)を繰り返すことで、腕を大きく回し、本格的なクロールの動きを身に付けるために行なわれる。
なお、野球の用語には「タッチアップ」はあるものの「キャッチアップ」は存在しない。野球分野で「キャッチアップ」と聞いた場合は、別の言葉(タッチアップなど)の誤りである可能性が高い。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部