何かを始めるのに必要なのは〝チョコっとの好奇心〟
様々な葛藤を抱えながら、この仕事を続けるか悩んでいた沢口さんの心に浮かんだもうひとつのマンガが『ハイキュー!!』だった。
「バレーボール部のマネージャーとして主人公たちをサポートする清水さんの『スタートに必要なのはチョコっとの好奇心くらいだよ』ってセリフが頭をよぎったんです」
15歳で本格的に芸能界入りし、つらいことも多く経験してきた。それでもグラビアを続けたいという気持ちは、まだ沢口さんの心でくすぶっていた。
「当時の私は、世間に胸を張れるほど確固たる意志で仕事をしていたわけではありませんでした。それを負い目に感じていましたが、同時に自分の居場所を作ってくれた『グラビア』
という仕事に感謝もしていました。グラビアを通じていろんな出会いや、雑誌の連載など新しいお仕事に触れる機会ももらいましたから。『つらいこともあったけど、もう少しこの仕事を続けてみたい』というのが、私の〝小さな本心〞だったんです。
そんな時にこのセリフを思い出して、『今の私でも、芸能の仕事を続けていいんだな』と考えられるようになりました。じゃあこの気持ちに嘘をつく理由はないな、と思い〝再スタート〞できたんです」
■沢口さんオススメ作品(2) ハイキュー!! 古舘春一 集英社 全45巻
地元のエース〝小さな巨人〟に憧れた小学生の日向翔陽はバレーボールを始める。中学3年生のとき、最初で最後の公式戦で「コート上の王様」の異名を持つ天才、影山飛雄に敗北する。影山へのリベンジを果たすため、日向は烏野高校に合格しバレーボール部に入部するが、そこには影山の姿もあった。
自分の物差しを持つことが好きでいるための秘訣
グラビアという仕事を好きでい続けるための考え方は『ちはやふる』で養った。
「私って結構ひねくれた性格で、すぐ他の子と自分を比較して嫉妬しちゃうんですよね。でも、千早はずっと真っ直ぐに百人一首が好きなままなんですよ。それってきっと、ひねくれた目線を持っていないからこそ。千早の百人一首に向き合う姿に感動したし、そうなりたいと思いました」
どうなったら千早のようになれるのか――沢口さんの答えは、自分自身ではなくグラビア界全体に視点を広げることだった。
「私はグラビア界にいていいし、『あの子は羨ましい』と思われる存在でいなければならない。そうじゃないとこの世界は成り立たないし、私の仕事も生まれないんだって考えにたどり着きました。
その時に気づいたのが、好きなものに関して、人や世間の物差しで測らないことが大事だ、ということです。自分の物差しで測り続ければ、好きという気持ちはずっと自分のものなんだなってことを学びました」
グラビアアイドルを好きでい続けるための考え方、そして移籍という決断に至れた背景には、大好きなマンガの存在があったのだ。
■沢口さんオススメ作品(3) ちはやふる 末次由紀 講談社 全50巻
小学校時代、ともにかるたで切磋琢磨した綾瀬千早と転校生の綿谷新、そして幼ななじみの真島太一。3人は高校生になり、別の道に進もうとしていたが、千早の競技かるた部設立を機に、再び絆を紡いでいく。
沢口さんプロフィール
沢口愛華/
2003年2月24日生まれ。15歳の時に「ミスマガジン2018」グランプリを受賞し、グラビアアイドルの最前線へ躍り出る。『踊る!さんま御殿!!』(日テレ系)では「国民的漫画家&漫画で人生を学んだ有名人」に出演し話題に。
DIME4月号の特集は読者とマンガ好き10名が選んだ仕事に効く56冊を大特集!
***********************
DIME2024年4月号
◆詳細情報はこちら
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。