Vpal
2014年に公開された映画「her/世界でひとつの彼女」は、主人公の男性が人工知能OS「サマンサ」に惹かれていく物語を描いた作品であり、当時は先鋭的な近未来の世界と感じた方も多いのではないでしょうか。ところが近年のAIの進化によって、そんな未来が現実となりつつあります。
たとえば「Vpal」というAIキャラクターチャットアプリもその一例です。
筆者も実際にiPhoneからVpalをダウンロードしてプレイしてみると、予想以上のスムーズな会話に驚きました。
その仕組みを調べてみると、VpalにはChatGPTなどに加えて独自の生成AI技術が用いられており、従来のゲームでは実感しにくい「ユーザーとの関係性」が重要視された設計になっていることがわかります。これは今後のチャットアプリの方向性を示していると率直に感じました。
実際、従来のビジュアルノベルゲームに見られるような選択式のストーリーでなく、進捗次第で無数の展開が広がる点も面白い特徴です。
また継続的にキャラクターの精度が向上していく方針を打ち出しており、Vpalを通じてAIキャラクターと日常生活を過ごすユーザーが一定数生まれる世界について、ある程度のリアリティを感じることができました。
今後期待したい部分としては、会話をする際のキャラクラーのアングルが変わるなどのバリエーションが増える、さらにボイス入力ができるとより日常に溶け込んだサービスとなるのではと、個人的には思いました。
とはいえ、Vpalが広く認知されていけば、同じようなサービスのマネタイズが期待できるかもしれず、Vpalをフックに本格的なAIチャットブームがやってきても、何ら不思議ではない時代に突入したといえるのではないでしょうか。
おわりに 日本発のアートとマンガのプラットフォームの行方
2024年現在、日本のアートとマンガの新しい時代が始まろうとしているのではないでしょうか。
歴史ある日本のコンテンツがテクノロジーとの融合により、新たな価値や楽しみ方が生まれ、世界中で注目されていくかもしれません。
またAniqueやVpalをはじめとする企業の取り組みは、日本のカルチャー産業のプラットフォームになる可能性を秘めており、日本経済にとって未来を切り拓くものとなるかもしれません。
とはいえ、ブロックチェーン技術を駆使した作品保有の在り方は、現代アートなどの分野でも浸透しており、例えば世界最大級のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaなど、多くの競合他社が競いあう過渡期でもあるため、今後数年でどんな勢力図やトレンドの変化があるのか、その結果を知るにはもうしばらく時間が必要かもしれません。
文/鈴木林太郎