その国の経済が不安定になると、アートやカルチャーが面白くなる。
こうした言葉にどこまで確実な根拠があるかはわからないものの、70年代のイギリスのパンクカルチャーが登場した時代、イギリス経済はオイルショックなどの影響で深刻な不況の最中にありました。
では、日本はどうでしょうか。
日本経済はバブル崩壊後から現在まで、失われた30年ともいわれるような長い低迷期にあり、ようやく日経平均株価も30数年ぶりに最高値を更新することが期待される状況にあります。
この間、日本の基幹産業は米国や中国にシェアを奪われていくなか、日本のマンガやアニメは国内にとどまらず海外へと人気が波及していった成長の時代といえるでしょう。
こうした日本独自のカルチャーが現在、新たなテクノロジーと融合することで、次のフェーズへと突入しようとしています。その一例として、今回はAniqueやVpalというサービスに注目しながら、日本の新時代のカルチャーを読み解いていきたいと思います。
Anique
Aniqueはこれまでの日本のマンガやアニメに新たな価値基準を創造する野心的なサービスです。
その根幹にはブロックチェーン技術が使われています。
そもそもブロックチェーンが何かといえば、石版や台帳に例えられるように、すべての取引が記録され、中心となる一つのサーバーが管理しない「P2Pネットワーク」という仕組みで成立しており、改ざんすることができません。
こうしたベースがあるからこそ、デジタルアートなどの資産が誰の所有物であるのかを保証することができるのです。
そしてAniqueはブロックチェーンの技術を使って、日本の漫画などのコンテンツのIP(知的財産)を売買しています。そのほかにも、WebGLという3Dグラフィックスを描画する技術を用いて、日本を代表するアニメ作品のオンライン展覧会を実施しています。
またオンラインショップも併設しており、グッズの購入も可能です。
こうしたAniqueの面白さは単に作品の鑑賞や保有だけに留まらない点にあります。
例えばデジタル作品を購入後、作品の保有を示す証明書が発行されるため、証明書をSNSなどでシェアすることが可能です。また1回に限りデジタルデータを額入りの額装注文(有料)することも可能であるため、デジタル資産の証明をリアルな場で楽しむことが出来ます。
これは2000年前後にアニメ業界のデジタル技術の進化により、セル画が激減したことから、額装されたセル画のような効果も期待されます。これはデジタルオーナーならではの特典として、今後も人気が広がるのではないでしょうか。
またデジタルデータをAnique上で売買をすることも可能であり、売買が成立した場合は著作者にも売上の一部が入る仕組みとなっています。
こうした作品保有者の所有欲や承認欲求を満たしながら、著作者にも還元されるサービス設計がされていることが、大きな特徴です。
ちなみに「アニメ産業レポート2023」によれば、2022年の日本アニメの国内と海外を合わせた関連市場は2兆9277億円であり、これは前年比6.8%増とのことです。
つまりマーケットは拡大を続けており、それはチャンスがさらに増えていくことを意味します。
そのため日本のマンガ・アニメコンテンツの成長とともにAniqueの影響力も増していく可能性があるといえるでしょう。