マーケティングとテクノロジーの両方を扱うためのスキルアップ術
具体的にはどのようなスキルアップ方法が考えられるか。
マーケティング戦略のコンサルティングとマーケティング人材育成企業の経営を行いながら、マーケティング職のキャリア形成に関する書籍なども手がけるインサイトフォース株式会社 取締役の山口義宏氏にインタビューを行った。
マーケティングとテクノロジーの両方を扱える人材は、現場ではどのようなスキルが求められるのか。
「マーケティングの基礎知識に加え、データと統計の基礎と、システム関連の技術の知識の2つが挙げられます。マーケティング活動においては施策の効果や顧客について分析し、意味のある示唆を見出して改善を重ねることが重要ですが、その際、『仮説』と『データに関する知識』の両方が必要。仮説のない分析は工数がふくらむだけでたいした成果が出ません。そのためデータ分析のスキルを身につけた人々が、マーケティングや顧客理解のスキルを学び、しっかりした仮説をもって分析する、分析で出てきた示唆を施策に落とし込むといった流れが生まれています。
システム関連では、目的に応じたシステムの選定・活用もしくは開発要件をまとめるスキルが重要です。マーケティング視点からシステムの目的と要件が見えてこそ、それを実現する技術が生きてきます」
●テクノロジーのスキルを身につける手段
例えばマーケティング職の個人がスキルアップしてテクノロジースキルを身につける場合に、どのような手段があるか。
「現在は、MBAのような時間やお金のハードルが高い手段だけでなく、手軽なeラーニング、ウェビナー、マーケティングの有識者によるオンラインサロンなどの有効な手段は劇的に増えています。知識だけのインプットであればeラーニングで良いと思いますが、実際に施策として実践してみて、そこで感じた疑問や不明点を解消していく相談相手を見つけたり、共に刺激を与え合う仲間を必要としている場合は、コミュニティとして人との出会いと交流が発生するリアルなセミナーイベントやオンラインサロンへの参加も有効です。そこで出会った仲間や先輩から、さまざまな情報や経験談を得られますし、転職機会も、そうしたコミュニティで知り合ったことから発生することも多いです」
●マーケティング職がテクノロジースキルを身につけるときの注意点
マーケティング職がテクノロジースキルを身につけるときに、何か注意したほうが良いことはあるだろうか。
「身につけた知識は一人だけ持っていても組織内で有効に活用されにくく、周囲との連携がむずかしくなることも。可能であれば、自分のチームや同僚と同じ時期に同じ知識を身につける学習方法を取ること、そして学習した内容をしっかり実践することを推奨します。実戦経験のない知識は定着せず絵に描いた餅で終わってしまいます。
また、一人だけでは意志が続かない学習も、同僚と実施することで継続率は上がりますし、何より同僚と共通言語が生まれ、連携しやすくなることで成果も出やすくなります」
これからはますますマーケティングとテクノロジーの融合が進み、それに伴い、求められる人材のレベルも上がっていくだろう。ぜひ自分に合った方法を見つけて取り組みたい。
【取材協力】
博報堂テクノロジーズ
山口義宏氏
1978年、東京都生まれ。ソニー子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長、リンクアンドモチベーションでブランドコンサルティングのデリバリー統括などを経て、2010年に企業のブランド・マーケティング領域特化の戦略コンサルティングファームのインサイトフォースを設立。 これまで100社を超える戦略コンサルティングに従事。マーケティング人材育成の事業を展開するグロースXの取締役COOも担う。著書に『マーケティングの仕事と年収のリアル』、『デジタル時代の基礎知識 ブランディング』など。
https://www.insightforce.jp/
文/石原亜香利