キャリアアップのために必要な〝スキルの複線化〟という考え
今回はキャリアアップのための〝スキルの複線化〟についてロールプレイングゲームのキャラクターを例に挙げながら考察します。
同じ会社(フィールド)の中で異動することは、会社を替える転職と同じような意味を持ち、ひとりのキャラクターが得意なこと=アビリティーを増やしていく手段のひとつだといえます。異動による〝スキルの複線化〟は、今後ますます重要になってくるでしょう。
例えば、ロールプレイングゲームの中には、武骨な体に強力な防具を身に着け、大きな剣を振り回してモンスターを倒す〝戦士系〟のキャラクターがいます。移動するスピードは遅くて素早い行動が苦手なものの、強さと忍耐力を持ち、冒険を前に進めるうえでとても頼りになる存在です。
しかし現実の世界において、もしもあなたが〝戦士系〟のキャラクターとして強さや忍耐力といったスキルをウリにしているとしたら、それだけに頼ることは必ずしも〝良い戦略〟ではありません。
どんなに忍耐強くても力を消耗すればするほどパフォーマンスが低下してストレスを抱えるほか、疲れたり空腹になったりすることがなく、与えられた仕事をこなすAIのテクノロジーに置き換えられてしまう可能性があるからです。
したがって、これからは、ひとつのスキルに頼ることなく、特性を増やすことに注力すべきです。
もしもあなたが〝戦士系〟のキャラクターなら、自身の体力を回復させる魔法を覚えると、非常に強力になります。
〝スキルの複線化〟の近道は社内で他部署へ異動すること
同じように、自身のキャリアを考える際も、得意な分野をひとつだけに絞るのではなく、新たなスキルを獲得しましょう。自分の価値が高まり、自己の成長を加速させることができます。
このような〝回復魔法が使える戦士〟になることは決して難しくはありません。異業種への転職や資格試験の勉強を行なわなくても、ほかの部署への異動による〝キャリアパスの変更〟でも十分に可能です。〝社内の職種転換〟は転職に比べてハードルが低く、例えばマーケティングから開発部門へ、文系だけど研究部門へ、理系だけど営業へ……といった具体的な動きを考えてみてください。
もちろん、あなた自身に能力があれば、製造業から流通業へ進むなど、業種を替える転職によって〝スキルの複線化〟を目指すことは可能です。ただし、このようなケースではもとの経験を生かせることを納得させられないと難しいことも覚えておきましょう。
中途採用の担当者は、往々にして「経験豊富な人がより良い成果を出す」という仮説を持っています。だからこそ、転職の場合には同業種での経験を問われるケースが多く、逆に未経験の業種へ転職するハードルは非常に高いのです。
そのため〝スキルの複線化〟には、ほかの企業への転職を検討するよりも、現在所属している会社で信頼を積み重ね、新たなポジションに挑戦するほうが、はるかにハードルは低いでしょう。
今持っているスキルを鑑みて新たなチャンスをつかみ取ろう
誰かしらの休職や退職に伴って、あるポジションが空いた時は〝スキルの複線化〟のチャンスです。
そのポジションを引き受ける意思を見せられれば、新たな道が開かれるでしょう。そういった機会に備え、ほかの部署からあなたを推薦してもらえるような立場を築いておくことも重要です。
このような〝スキルの複線化〟を考えるうえで、自身の〝アビリティー〟をまずは正確に把握し、それをどのように生かせるのかを考えてみてください。例えば、情報システム部からマーケティング部門へ異動する場合、それまでに培ったスキルを、プログラマー向けのマーケティングに生かせる可能性があります。自分のスキルに基づいて、新たな仕事のアイデアを考え出すことも心がけましょう。
新しいことへの挑戦は、あなたをワクワクさせるのはもちろん、得意な分野やスキルだけに縛られることなく、幅広い視野を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。自分のスキルを結集させること=スキルコンバージェンスによって、何ができるのかをイメージしてみてください。そうすれば、新たなキャリアのオプションがきっと見えてくるはずです。
AIとロボットに関する技術は、これから本格的に自律した動作を行なう段階に移行するところであり、今後ますます進化が加速すると予想されています。「ChatGPT」のような対話型AIは、それを象徴する一例です。単に強さや忍耐力を持つだけではなく、多様な能力を持つことがより一層重要となります。
越川慎司/クロスリバー代表取締役。複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革を提供。最新の著書『最速で結果を出す超タイパ仕事術』(小社刊)発売中。
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世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援する、クロスリバーの代表取締役。小誌連載「ショートカット仕事術 個人で始める働き方改革!」を担当中。