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「微力ながら」「微力ではございますが」という表現を耳にしたことはありませんか。
ビジネスや目上の人との会話で、「微力」はよく用いる言葉です。本来は自分の力量をへりくだって表現する言葉ですが、使い方やシチュエーションによっては相手を不快にさせてしまうことがあります。
「微力」がふさわしいシチュエーションや使い方を例文でご紹介するので、ぜひ円滑なコミュニケーションに活かしてください。
微力とは?読み方もご紹介
微力は「びりょく」と読み、次の2つの意味があります。
・力が弱く足りないこと
・自分の力量をへりくだっていう言葉
意味が異なると使い方も変わります。それぞれ日常生活でどのように使うのか、例文を通して見ていきましょう。
参考:デジタル大辞泉
■力が弱く足りないこと
力が弱く足りないことを「微力」と表現します。微は「かすかな(微かな)」とも読み、ごく少ない様子を示す漢字です。微かな力しかないときや、必要と思われる力が出せない・出ないときは、微力と表現できるでしょう。
・猫が一生懸命ドアを押している。しかし、あまりにも微力でドアはびくともしない。
・風が吹いているが、微力でまったく涼しくならない。
■自分の力量をへりくだっていう言葉
自分の力量をへりくだって表現するときに「微力」という言葉を使うことがあります。役に立たないほどのわずかな力というニュアンスがあるため、謙遜するときに使うことが一般的です。
・微力ではありますが、あなたのお役に立ちたいと考えています。
・わたしでよければ、微力ですが尽力したいと思います。
ビジネスシーンでの微力の使い方
微力は自分の力量を本来よりも低く表現する言葉のため、相手を立てることや自分を謙遜することが多いビジネスシーンではひんぱんに使われます。次の2つの状況に分けて、微力の使い方を見ていきましょう。
・目上の人を立てるとき
・自分の能力を謙遜するとき
それぞれの使い方を例文でご紹介します。
■目上の人を立てるとき
微力という言葉で自分の力量を低く表現することで、相対的に相手を高められます。「わたしは微力で能力がないけれども、あなたは能力が高い」というニュアンスを醸し出し、目上の人を立てるときに使いましょう。
・微力ではございますが、精一杯お手伝いをしたいと思っております。
・わたしも微力ではございますが、お役に立てるように尽力いたします。
■自分の能力を謙遜するとき
相手の能力にかかわらず、自分の能力を謙遜して低く表現するときにも、微力は適した言葉です。
「わたしなんて能力が低いですが……」とストレートに表現すると、相手も思わず「そんなことはないですよ」と否定してしまうかもしれません。しかし、「微力ですが……」と伝えるなら、相手に謙遜していることは伝えつつも、否定するほどもないためスルーしてもらいやすいでしょう。話の腰を折らずに、謙遜のニュアンスを挟みこむためにも、微力は使い勝手のよい言葉といえます。
・微力ながら尽力いたしましたが、ご期待に添えず申し訳ございません。
・微力ではありますが、プロジェクトを成功させるために頑張ります。
微力を使うときの注意点
微力は、謙遜しつつ相手を高められる便利な言葉です。とりわけマナーにうるさくなりがちなビジネスシーンで活躍します。また、微力はさりげなく謙遜できるため、相手に社交辞令的に「そんなことないですよ」といわせる隙を与えにくく、円滑なコミュニケーションにも役立ちます。
しかし、微力の使い方によっては、相手を不快にさせる可能性があるため注意が必要です。とくに注意したいポイントとしては、次の4つが挙げられます。
・相手から協力を要請されたときに用いる
・自分の力量が不十分なときには用いない
・明らかに優れた能力があるときにも用いない
・自分以外の人には用いない
それぞれのポイントについて解説します。
■相手から協力を要請されたときに用いる
例文でご紹介したように、微力は協力するときや手助けするときに使うことが多い言葉です。しかし、相手に協力するときならいつでも使えるわけではありません。
たとえば、相手が協力してほしいと思っていないときに「微力ですがお手伝いいたします」と発言するなら、親切の押し売りと受け取られてしまう可能性があります。それどころか、「微力なら手伝っていらないよ!」と相手が不快に感じるかもしれません。
せっかく手伝うのであれば、相手に喜んでほしいものです。謙遜しつつも相手を喜ばせるためにも、微力は相手から協力を要請されたときに用いることをおすすめします。
■自分の力量が不十分なときには用いない
微力は自分の力量を謙遜して表現する言葉です。本当に力量が低い場合は謙遜にならないため、微力とは表現しないほうがよいでしょう。
苦手な分野に関しては、「微力ですがお手伝いします」と無理に手伝うよりは、「お手伝いしたいのはやまやまですが、不得手でお手伝いできません。ほかのことをぜひお申し付けください」というほうがスマートです。
■明らかに優れた能力があるときにも用いない
能力が高いことを誰もが知っている状態で、「微力ですが……」というのは、嫌味と受け取られかねません。そのようなときは無理に謙遜せずに、「お手伝いしましょうか?」と申し出るほうがよいでしょう。
■自分以外の人には用いない
微力はあくまでも自分の力量についての言葉です。相手の力量について「微力」と表現するのは避けましょう。
たとえば、相手が少しだけ手伝ってくれたときに、「微力ではありましたが、手伝ってくれて嬉しかったです」と伝えるのは失礼です。少しのサポートでも有難く受け取り、「ご尽力をいただいたおかげで完成しました」のように感謝を伝えましょう。
謙遜する場面で適切に用いよう
微力は謙遜する場面で使う言葉です。しかし、力量が不十分なときにも十分すぎるときにも不適切な点に注意してください。
一般的なレベルでこなせるときや、十分に能力はあるけれども明らかに優れているわけでもないときに、「微力ですが……」とスマートに協力を申し出ましょう。
構成/林 泉