「日本版ライドシェア」の話題は、あまりに展開が早過ぎて少々ついていけないとも考えてしまう。
筆者がこの記事を書いてから@DIME編集部へ入稿、そしてその記事が公開されるまでにはどうしても多少の時間がかかる。
その間に日本版ライドシェアに関する新発表が雨後の筍のように出てくるという具合で、せっかく出した記事がその瞬間から古くなっていることもよくあるのだ。
しかし、この展開の早さこそ「新興分野」の特徴ではないかとも思う。
日本交通がライドシェアに参入
今回の記事では、「守旧派」と呼ばれてしまうことが多い既存タクシー会社の動きに話を絞って解説していきたい。そしてこの記事を執筆しているのは2024年2月12日であることもお断りしておこう。この瞬間にも、大手タクシー会社が新たな発表を行う可能性もあるからだ。
日本のタクシー会社の第一人者といえば、日本交通である。この日交は日本版ライドシェアに真っ向から反対……というわけではまったくなく、むしろライドシェア事業に乗り出そうとしている。
今年1月31日からドライバーのプレエントリーを受け付けているのだ。その条件はPR TIMESでのプレスリリースに記載されている。
予定している雇用形態:パートタイム雇用(副業可)
対象となる方:自動車運転免許取得後1年以上経過されている方
業務内容:自家用車による有償運送
予定している勤務地:東京23区、立川市、さいたま市、横浜市
勤務時間:タクシー繁忙時間帯のみを予定(週20時間未満の勤務)
(「日本型ライドシェア」ドライバーのプレエントリーを開始します-PR TIMES)
勤務地は23区内のみならず立川市、さいたま市、横浜市にも広がってはいるが、注目すべきは勤務時間。「週20時間未満の勤務」とある。
あるドライバーが週3日の勤務に出るとしたら、1日に働けるのは7時間未満。週5日、繁忙時に4時間ずつの勤務というようなスケジュールになるのだろうか
「ライドシェアはあくまでも副業」として捉えるなら妥当な勤務時間ではあるが、一方でライドシェアを専業にすることはまず無理だろう。
配車アプリ『GO』でライドシェア呼び出しも
さて、日交と言えば配車アプリ『GO』を持っている点を見逃してはならない。
GO株式会社の筆頭株主は日交とDeNAだが、運営会社と名を同じくする『GO』は今現在の日本の配車アプリの中で最も先鋭的な機能を持っていると言えよう。筆者自身も記事に書いた「チップ機能」は、手数料実費相当分を引いた額がドライバー個人の実入りとなる設計である。
その『GO』は、既に日本版ライドシェアへの参入を表明している。
GO株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:中島 宏、以下当社)は、東京ハイヤー・タクシー協会の「日本型ライドシェア」開始表明を受けて、タクシーアプリ『GO』での配車を含む「日本型ライドシェア」への対応を決定しました。
これに伴い、導入を検討するタクシー事業者様の支援を開始します。当社では「日本型ライドシェア」専用の相談窓口を本日より開設し、導入のための様々な必要項目に対しご要望ごとに柔軟に対応します。また、全国の自治体様からのご相談も受け付けます。
当社では、この取り組みを通じて社会的な課題となっている地域住民や観光客の移動の足の不足という交通課題の解消に向けて貢献できるよう尽力してまいります。
(タクシー事業者が取り組む「日本型ライドシェア」導入支援を開始 『GO』配車対応のほか採用支援等を予定-GO)
『GO』によるライドシェアの取り扱いが行われるということは、ライドシェアのドライバーに対してもチップ機能が適用されると考えるのが自然ではないか。
もちろん、具体的なアプリの仕組みがどうなるのかは未だ未知数ではあるが、『GO』と日交は「副業として稼げるライドシェア」の仕組みを構築している最中のようだ。