野良猫の生涯は苦痛と辛抱の連続。一番は増やさないこと…
昨今、猫との向き合い方についてアップデートされた知識が徐々に広まっている。
野良猫に関しては特に顕著で、野良猫への安易な餌やりについては問題が多いとして、行政だけでなく市井の愛猫家からも否定されている。
その理由はいくつもある。
たとえば飼い主のいない野良猫への餌付けがそもそも無責任である点。
要は自分が差し出す餌と引き換えに、猫の可愛らしい側面だけを享受する行為であり、これでは猫もある意味で搾取されているに等しい。
餌付けをすると猫がその付近に集まるようにもなり、結果的に近隣の公衆衛生面にも影響を及ぼすというデメリットもある。
百歩譲って餌付けをする人が片付けてくれればいいが、それをやってくれなければ近隣住民が清掃をしなければならない。これは理不尽だ。
また、猫に餌付けをすることで、餌場となったエリアの猫密度も増加し、繁殖頻度も高くなる。
屋外で生まれた猫の平均的な寿命は数年程度でしかなく、夏は暑く、冬は寒い日本の環境に耐えられない猫は満足に生きられず、死んでしまう。
猫が屋外に、野良猫として存在することを好む人も未だ多いが、実際の野良猫の生活というのはとにかく苛酷。
だからこそ、そんな不幸な野良猫を増やさないように避妊・去勢手術を行う活動は地道ながら大切なものだ。
猫のまち、かほく市を知っていますか?
石川県かほく市。ここは市内外で「猫のまち」のイメージが定着している自治体である。
その由来は、2004年に合併によってかほく市に組み込まれた旧宇ノ気町(うのけまち)にある。
旧宇ノ気町出身の著名な哲学者である西田幾多郎(にしだ きたろう)が猫好きであったことに由来し、かほく市では現在、野良猫の保護などの活動を行う団体の支援に回っている。
「猫のまち」と書くと町のあちこちにいる猫を観光資源とみなすようにも思われるかもしれないが、かほく市の場合はそうではなく、屋外にいる猫の苦労を認識したうえで、民間の保護団体の活動をサポートし、市内においての猫のQOLを高めるために動いている、と認識していただけると実態が判断しやすい。
そのかほく市は昨年より、同市で活動する保護団体の「かほく猫の会」の管理の下、猫が入るとすぐにスマホやパソコンなどに通知が入る仕組みの捕獲器の設置が行われている。
この捕獲器設置に至った経緯について、今回はかほく市生涯学習課の四柳智恵さんと同市防災環境対策課の東賢一さんにメールでお話を伺うことができたので、ぜひ一読願いたい。
通知機能付き捕獲器完成までには地元企業の協力があった!
松本 かほく市では、猫が入った際に上部の通信機からスマホやパソコンに対してメッセージが送信される仕組みの捕獲ケージの導入が開始されたとのことですが、まずこのケージの作成に至った経緯と、完成にこぎつけるまでのご苦労、こだわり等を教えてください。
四柳さん まず、このねこ捕獲器は「かほく猫の会」という団体がねこの保護活動に活用しており、かほく市が導入したというものではないことをお伝えいたします。
ケージの作成に至った経緯ですが、以前「かほく猫の会」の会員の方とお話する機会があり、活動内容についてお聞きしていたところ、ケージを設置してから捕獲するまでのご苦労を知りました。その話を聞きながら「IT-CATSかほく推進協議会」で実施している小学生のプログラミングコンテストの作品に、宅配の荷物が家の宅配ボックスに配達されるとセンサーが反応してLINEでお知らせする、というものがあったのを思い出して、猫がケージに入ったのをお知らせすることができれば、捕獲された猫がケージの中で待つ時間や、猫が捕獲されるまで待つ時間、1~2時間ごとに捕獲されていないか確認に来る時間を省略または短縮できるのではと思い、プログラミング教室の講師をして下さっている地元企業の方に相談したのがきっかけです。
(ケージ完成までのこだわりについて)ケージの扉が閉まると「ガシャン!」と大きな音がして猫が驚いて暴れたり、屋外に設置するため雨や風の影響を受けたりしてセンサーが壊れたり作動しなくなるといったことも考えられましたので、小型コンピュータをプラスチックのケースに入れて、ケージの外側に固定してもらいました。
また、機械に苦手意識がある方が使用される場合でも 再起動させる手順が簡単になるように考慮してもらいました。さらに装置を完成させるまでの部品一式の手配や費用を抑えることにも苦慮していただきました。
あくまでプログラミング教室で実験的にできたものなので、実際のプログラムの入力やケージへの設置などは「かほく猫の会」の方がプログラミングを学び、装置を活用しています。