「バイトテロ」は「社員テロ」へ
前薗さんが「伝えるべき」と考えるポイント、1つ目は、今までにバイトテロを起こした人の末路をできるだけ生々しく伝えることです。
「炎上後すぐに実名を特定され、時には住所まで晒され、損害賠償をさせられ、時には就職先から入社を断られたり、進学が不利になった例もあります。しかも記事がデジタルタトゥーとして残り、結婚する時はもちろん、家を買うために金融機関からお金を借りる時にさえ審査に悪影響を及ぼします。バイトさんには必ず、これらを伝えてほしいんです」
研修は運転免許証の更新に似ているかもしれません。「わかってるよ」と思うことも再度聞かされ、事故の加害者側が受けた実刑や、被害者の遺族のつらい思いを幾度も伝えられているから、いざという瞬間、踏みとどまれるのかもしれません。
「2つ目は、バイトテロを起こす側のほとんどに悪意はないことです。
例えば店長さんがアルバイトさんの確保に困っていて、バイトの高校生が『うちの制服かわいいでしょ? バイト募集中だよ』と写真付きで投稿したとしましょう。背後にお客様やバイト仲間が写っていればプライバシーの侵害、売り上げ目標やレシピが写っていたら企業秘密の漏洩にあたるかもしれません。もし幹部の退任の情報や新たなコラボの情報など株価に影響を与えかねない情報が写っていたなら目も当てられません。ちなみに私たちが研修のプログラムを組む時は、こういう投稿を行って何分後に拡散され始め、何分後に怖くなって削除したけど拡散は続き、何分後に本社が炎上を確認し……と、かなり怖めの研修を実施します」
昨今は社員であっても同じような「テロ」を行ってしまう時代です。2023年11月には、兵庫県のゴルフクラブ「オータニにしきカントリークラブ」の予約業務を委託されていた株式会社ダイナックパートナーズの従業員が有名実業家と参議院議員の名前が入った予約画面を「おっと~手が滑った」と投稿しています。そして……。
この「テロリスト」はなんと52歳の社員だったそうです。あなたの会社は、大丈夫でしょうか?
取材・文/夏目幸明