3. 私募債発行の主な2つのパターン
私募債は、主に以下の2つのうちいずれかのパターンで発行されることが多いです。
(1)少人数私募債
発行会社関係者の家族、友人、取引先など、狭い範囲の投資家に対して私募債を発行します。私募債を引き受ける投資家は、発行会社が自ら探すのが一般的です。
少人数私募債については、勧誘対象者を50名未満(適格機関投資家を除く)とすること、発行総額を1億円未満とすることなどの条件を満たす必要があります。
(2)銀行引受の私募債
銀行が一括して私募債を引き受けた上で、各投資家に対して販売します。
一般に銀行または信用保証協会による保証が付されるため、投資家は比較的安心して購入できます。
4. 私募債投資のリスク
私募債については、発行会社が社債要項で定められた期日に正しく償還すれば、投資家は出資額に一定の利回りを上乗せした金額を得られます。
しかし、発行会社の財務状況が悪い場合には、私募債が正しく償還されるとは限りません。償還期日が来る前に、発行会社が倒産してしまうケースもあります。
このような場合には、投資家は出資額をすべて失ってしまうおそれがあります。
私募債を取得する際には、発行会社の事業内容や財務状況などが信頼に足るかどうかを十分に検討すべきです。
一般的には、私募債は国債や上場されている金融商品(上場株式・上場投資信託など)に比べてリスクが高いので、投資を始めたばかりの方はやめておいた方が無難でしょう。
5. SNS等を通じた私募債への投資勧誘には応じないように|詐欺の可能性も
SNS等を通じて私募債への投資を勧誘する例がありますが、基本的に応じるべきではありません。
私募債への投資は、発行会社の経営者などが身内を中心に声をかけるか、または銀行を通じて勧誘するのが一般的です。
経営者の身内であれば、普段の付き合いなどから、その経営者が信頼できるかどうかを判断しやすいでしょう。銀行引受であれば、銀行側で審査が行われているという安心感があります。
これに対して、SNS等で見知らぬ人から私募債への投資を勧誘された場合、投資家が発行会社や経営者の情報を正確に知ることは困難です。
発行会社が倒産すれば投下資金を回収できなくなるところ、十分な情報を得られない時点で、その私募債には投資すべきでないと思われます。
また、事業の実態がない会社が発行する私募債への投資を勧誘し、投資家が振り込んだ資金を持ち逃げする詐欺行為が横行しています。
高利回りなどをアピールして投資初心者を狙う「私募債詐欺」には十分ご注意ください。
参考:投資詐欺にご注意を 気をつけるべき6つのポイント。相談窓口もご紹介。|政府広報オンライン
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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