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2023年の企業倒産は8497件、飲食店は前年から7割増

2024.02.14

業種別…15年ぶりに全7業種で前年を上回る 「飲食店」は前年から約7割増

業種別にみると、2008年以来15年ぶりに全7業種で前年を上回った。『サービス業』(前年1601件→2099件、31.1%増)が最も多く、『小売業』(同1207件→1783件、47.7%増)、『建設業』(同1204件→1671件、38.8%増)と続いた。

『サービス業』は2012年(2091件)以来11年ぶりに2000件を超えた。『運輸・通信業』(同334件→453件、35.6%増)は、ドライバー不足に悩む「道路貨物運送」(同238件→315件)の大幅増もあり、全体では2010年(452件)以来13年ぶりに450件を記録した。

業種を細かくみると、『小売業』では、「飲食店」(前年452件→768件)が前年から約7割の大幅増となった。人手不足と資材価格の高騰が続く『建設業』では、内装工事など「職別工事」(同505件→763件)の増加が目立った。

倒産主因別…『不況型倒産』は632件、19カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が6672件(前年4836件、38.0%増)で最も多く、全体の78.5%(対前年2.6ポイント増)を占めた。

「売掛金回収難」(前年15件→44件、193.3%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は6797件(同4923件、38.1%増)となった。前年からの増加率は、2000年以降で初めて30%を超えた。

「その他の経営計画の失敗」(前年255件→295件、15.7%増)は3年ぶりに前年を上回った。「経営者の病気、死亡」(同279件→278件、0.4%減)は、2000年以降で最多であった前年と同水準となった。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

倒産態様別…「破産」は7986件、2015年以来8年ぶりの高水準

倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は8265件(前年6186件、33.6%増)となり、全体の97.3%(対前年0.3ポイント増)を占めた。『再生型』倒産は232件(同190件、22.1%増)発生し、4年ぶりに前年を上回った。

『清算型』では、「破産」が7986件(前年5912件、35.1%増)で最も多く、2015年(7985件)以来8年ぶりの高水準となった。「特別清算」は279件(同274件、1.8%増)と、3年ぶりに前年を上回った。

『再生型』では、「民事再生法」が230件(前年186件、23.7%増)発生した。個人事業主(151件)が2年連続で、法人(79件)が2年ぶりに前年を上回った。

規模別…負債「5000万円未満」は5000件を超え、構成比は6割近くに

負債額規模別にみると、「5000万円未満」の倒産が5024件(前年3682件、36.4%増)で最も多く、構成比は59.1%(対前年1.4ポイント増)となった。「5億円未満」では1722件(同1341件、28.4%増)発生し、2016年(1781件)以来7年ぶりに1700件を上回った。

資本金規模別では、『1000万円未満(個人事業主含む)』の倒産が5853件(前年4297件、36.2%増)発生し、全体の68.9%を占めた。

業歴別…業歴「30年以上」が最多 『新興企業』は11年ぶり2500件超え

業歴別にみると、「30年以上」が2740件(前年2138件、28.2%増)で最も多く、全体の32.2%(対前年1.3ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は96件(同65件、47.7%増)発生し、4年ぶりに前年を上回った。

業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年319件→361件、13.2%増)、「5年未満」(同469件→596件、27.1%増)、「10年未満」(同1087件→1570件、44.4%増)]は2527件(前年1875件、34.8%増)と、11年ぶりに2500件を超えた。

内訳を業種別にみると、「サービス業」(同608件→785件、29.1%増)が最多、「小売業」(同395件→614件、55.4%増)、「建設業」(同360件→495件、37.5%増)が続いた。

地域別…15年ぶりに全9地域で前年を上回る 4地域はコロナ禍前の水準超える

地域別にみると、2008年以来15年ぶりに全9地域で前年を上回った。このうち、『北海道』(前年191件→258件、35.1%増)、『東北』(同348件→443件、27.3%増)、『関東』(同2348件→3066件、30.6%増)、『九州』(同504件→708件、40.5%増)の4地域では、コロナ禍前にあたる2019年の水準を超えた。

『北海道』は、「建設業」(同20件→62件)の大幅増が全体の件数を押し上げた。『関東』は、「東京」(同1157件→1549件)の大幅増もあり、全体でも2017年(3129件)以来となる3000件超えを記録した。

『九州』は、「小売業」(同108件→175件)などで増加が目立った。『東北』は、東日本大震災の影響を受けた2011年(446件)以来12年ぶりの水準となった。『近畿』(同1578件→2106件、33.5%増)は、「サービス業」(同398件→516件)が4年ぶりに500件を超えた。

注目の倒産動向

■ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産…2023年は651件発生 22年比1.7倍、倒産全体の8%を占める

「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、2023年に651件(前年386件、68.7%増)発生、20年以降で最多を更新した。ゼロゼロ融資を利用後の倒産が全体の8%を占める。

実際の融資額が判明した約400社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となり、「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約716億3800万円にのぼる。

■人手不足倒産…2023年は260件発生 22年比 1.9倍、過去最多を更新

「人手不足倒産」は、2023年に260件(前年140件、85.7%増)発生した。年間で初の200件台となり、過去最多を更新した。業種別では、『建設業』(91件)が最も多く、全体の3割を占めた。

『サービス業』(57件)では特にソフトウェア開発などIT産業や人材派遣などの業種が目立った。『運輸・通信業』(44件)は前年(20件)から倍増した。

■後継者難倒産…2023年は564件発生、初の年間500件超え

「後継者難倒産」は、2023年に564件(前年476件、18.5%増)発生した。年間で初めて500件を超え、過去最多を大幅に更新した。

後継者難倒産のうち、「経営者の病気・死亡」による倒産が全体の約4割を占めるものの、過去最高の21年(49.1%)に比べると低下している。後継者不在を最後のきっかけとして、事業継続を自らあきらめるケースが増加した。

■物価高(インフレ)倒産…2023年は775件発生 22年比で2.4倍、建設や製造で急増

物価高(インフレ)倒産は、2023年に775件(前年320件、142.2%増)発生した。年間で初めて700件を超え、過去最多を大幅に更新した。

業種別では、『建設業』(186件)が最も多く、前年(70件)から2.7倍に増加。『製造業』(160件)も前年(61件)から2.6倍に増加した。『サービス業』(52件)は宿泊業で初めて物価高倒産が発生した。

今後の見通し

■2023年の企業倒産は8年ぶりの水準、増加率もバブル崩壊後で最も高く

2023年の企業倒産は8497件に達し、前年(6376件)を2121件上回った。2年連続で前年を上回り、2015年(8517件)以来8年ぶりの水準となった。

コロナ支援策の縮小に加え、物価高や人手不足等によるコスト増に耐え切れなくなった中小企業の倒産が急増した。前年からの増加率(33.3%)は、バブル崩壊後で最も高くなった。

月別推移をみても、2022年5月から20カ月連続で前年同月を上回った。とくに12月(806件)は2023年で最多となり、中小・零細企業を中心に年後半にかけて増加基調を強めた。

負債総額は2兆3769億300万円で、前年(2兆3723億8000万円)からほぼ横ばい(0.2%増)となった。負債トップはパナソニック液晶ディスプレイ(9月特別清算、負債5836億円)で、全体の4分の1を占めた。

上場企業など大企業では原則として私的整理スキームを活用する経営再建が定着しており、年間を通じて大型倒産は沈静化が続いた。

■「令和6年能登半島地震」による企業活動への影響注視

2024年元旦、石川県・能登半島を震源とする大地震が発生した。今回の「令和6年能登半島地震」による死者は1月9日に200人を超えた。

被害の全容は明らかになっていないが、最大震度7を記録した能登地方を中心に、今後は企業活動への影響も無視できない。

帝国データバンクが1月5日に発表した調査で、能登地方に本社を置く企業数は、2023年11月時点で4075 社を数えた。建設業のほか、伝統工芸や観光産業、エレクトロニクス産業でとくに影響が懸念される。

地元企業だけでなく、大手企業の工場進出もある。東日本大震災や平成28年熊本地震など過去の震災を振り返っても、直接的な被害を受けた企業だけでなく、取引先の被災や原材料の調達難など間接的な影響を受けた関連倒産も多発した。

被災住民の安全確保や生活再建が最優先であることは言うまでもないが、復旧・復興が長期化すれば、これらのサプライチェーンを通じて全国の企業にも影響が広がりかねない。

■2024年はさらなる増加局面へ、「4月」以降に倒産リスク高まる可能性

2024年の企業倒産も増加局面が続くとみられる。とくに年度初めとなる「4月」以降にさらに加速する可能性がありそうだ。

すでに深刻な人手不足と人件費高騰に直面する建設業や運輸業を中心に「時間外労働の上限規制」が4月から適用され、「2024年問題」の影響が本格化する。

また、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済開始を迫られる企業が昨年7月に続き、4月に最後のピークを迎える。返済負担に耐えかねて、年度末前後の節目に事業継続をあきらめる経営者がさらに増える可能性がある。

金融庁による金融機関向けの監督指針も今春に改定される。金融機関は資金繰り支援からの転換が求められるなかで、従来のような安易な返済条件の変更(リスケ)や借り換えに応じることは難しくなりそうだ。

とくにリスケはコロナ禍以降、企業からの要請に対して金融機関は原則応じてきたが、融資先の「選別」が進むことで4月以降、金融機関が返済条件の変更に応じる比率が下がる可能性も十分ある。

「金利のある世界」に向けて、日銀が4月にもマイナス金利解除に動くとの見方も根強い。今後、ゼロ金利・利上げに進めば、新たな借り入れに苦慮する企業が増えることも考えられる。

ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務の返済もままならず、物価高や賃上げ等によるコスト増に苦しむ中小・零細企業にとっては死活問題となりかねない。

帝国データバンクが2022年12月に発表した調査では、借入金の利払い負担を事業利益で賄えない『ゾンビ企業』は、2021年度で推定18万8000社を数える。

倒産予備軍ともいえるゾンビ企業の数は、足元でさらに増加している可能性が高く、その動向は潜在的なリスク要因のひとつとして注視していく必要がある。

<調査概要>
集計期間:2023年1月1日~12月31日
発表日:2024年1月15日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
集計機関:株式会社帝国データバンク

出典元:帝国データバンク

構成/こじへい

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