収益力、借り入れ負担は依然厳しく、自己資本比率がさらに悪化
ゾンビ企業の財務状況について、「売上高経常利益率」「有利子負債月商倍率」「自己資本比率」の指標でそれぞれ平均値を算出し、全企業の平均[1]と比較した。なお、平均値は1%トリム平均(最大値および最小値からそれぞれ1%分を除外)としている。
企業の収益力を示す「売上高経常利益率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△4.04%となった。全企業平均(2.75%)を6.79ポイント下回っており、2021年度から改善したものの、ゾンビ企業の収益力は依然として低いままであることがわかる。
「有利子負債月商倍率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は9.87倍と、月商の約10倍の債務を抱えていることがわかる。
2021年度からわずかに改善傾向はみられるが、ゾンビ企業の有利子負債は全企業平均(5.58倍)の2倍近くにのぼり、依然として過剰債務の状態が続いている。
企業の安定性を示す「自己資本比率」をみると、2022年度のゾンビ企業平均は△5.36%。2021年度からさらに悪化しており、債務超過状態が続いた。
全企業平均(28.29%)と比べると、ゾンビ企業は会社経営の安定性で大きく見劣りする状態にあることがわかる。
ゾンビ企業数は25万1000社、2011年度(27万4000社)に次ぐ2番目の社数
2022年度のゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」収録の約147万社を母集団として当てはめると、2022年度のゾンビ企業数は約25万1000社と推計された。
集計開始の2007年度以降で、2011年度(約27万4000社)に次いで、2番目の推計社数となった(2010年度と同数)。
2021年度(約19万6000社)から5万5000社増え、ゾンビ企業数は3年連続の増加となった。
「経常赤字」かつ「過剰債務」かつ「債務超過」企業、4万1000社
2022年度の約25万1000社について、収益力・過剰債務・資本力の3項目から分析した。
収益力については、経常赤字企業は推計14万4000社で全体の57.4%にのぼった(2021年度[2]=推計11万2000社、59.8%)。過剰債務状況については、有利子負債が月商の8.5倍以上の企業が推計10万4000社で全体の41.5%(2021年度=推計8万3000社、44.4%)。
加えて、資本力については、債務超過企業が推計9万5000社で全体の37.7%にのぼった(2021年度=推計6万8000社、36.4%)。
3項目すべてに該当する企業は推計4万1000社、16.4%(2021年度=推計3万3000社、17.7%)となり、1年で推計8000社増加している。
政府は昨年11月、金融機関による事業者支援の軸足を「コロナ禍の資金繰り支援」から「経営改善・事業再生支援」に移す姿勢を鮮明にした。
金融機関の取り組みを推進すべく、金融庁は今春に金融機関向けの監督指針を改正する。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務に苦しむゾンビ企業への金融機関の対応も、今後はこれまでの安易な返済猶予や借り換えを繰り返すことが事実上難しくなるかもしれない。
ゾンビ企業の動向は、2024年の企業倒産動向にも少なからず影響しそうだ。2023年の企業倒産は8497件に達し、バブル崩壊後で最も高い増加率(前年比33.3%増)を記録、2015年(8517件)以来8年ぶりの水準となった。
金融機関の支援スタンスの変化次第で、2024年の倒産件数が大きく増えるおそれもある。
「金利のある世界」に向けて、日銀が4月にマイナス金利解除に動くとの見方もある。実際に利上げとなるのは先になるかもしれないが、企業にとっては借入金の利払い負担が増すことになる。
物価高や人手不足、賃上げ等にともなうコスト増に苦しむ中小・零細企業にとっては死活問題となりかねず、ゾンビ企業のさらなる増加につながる可能性は十分ある。
[1] 全企業の平均は、帝国データバンク「第66版 全国企業財務諸表分析統計」より算出
[2] 2021年度の数値は、帝国データバンク『「ゾンビ企業」の現状分析(2022年11月末時点の最新動向)』(2023年1月13日発表)より算出
<調査概要>
※調査対象:3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上の企業(ゾンビ企業)
※調査期間:2023年11月時点まで
※調査機関:株式会社帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい