局地戦に強みを持つスタートアップの弱点を露呈
ベースフードはもともと、2024年2月期の自社ECによる月間平均顧客人数を22.8万人と予想していました。これを20.2万人に修正しています。月間で累計3万人近い顧客が離れたことを意味しています。また、小売も1店舗当たりの月間売上高を8,000円と予想していましたが、7,000円に引き下げました。
イオンや明治のように、多岐にわたる商品のうちの一部に何らかの問題が生じて自主回収、買い控えが起こるのであれば、大きな問題にはなりません。しかし、ベースフードはパンやクッキーが大部分を占めています。一つの商品のイメージが全体に波及しやすいのです。
スタートアップは選択と集中の一点突破力に強みがあります。LINEヤフーの会長である川邊健太郎氏は、かつて「大企業の倒し方」という講演を行いました。その中で、スタートアップは局地戦に経営資源を集中投下するべきだと語っています。大企業は限られた予算を、多岐にわたる事業に配分します。そのため、製品開発やマーケティングコストへの投資が限られます。しかし、スタートアップは手持ちの資金を一つの事業に投じることができます。
Yahoo!はヤフオクやYahoo!ニュースなどの数々の事業を手掛けています。メルカリやスマートニュースは、それらと近いサービスです。こうした会社がYahoo!という巨大企業を押しのけて急速に成長できたのは、集中的に投資を行っているからに他なりません。
ベースフードにおいては、スタートアップが持っていた強みが、悪い方面へと傾いてしまった印象を受けます。
1月15日に自主回収に必要な資金を賄うため、りそな銀行から5億円の借り入れを行ったと発表しました。足元では資金繰りに窮することはなさそうですが、我慢強く需要が回復するのを待つ局面に入ったと言えるでしょう。
取材・文/不破聡