日本の特徴
AIに対する認識と理解について、日本は調査対象国のなかで最も低い水準にあり、信頼、受容、認識が不足し、多くの人がAIを学ぶことに関心を持っていない。
人々はAIには十分な保護措置があるとは考えていないが、依然としてその有用性を認識している回答者が過半数を占めている。
(1)AIの信頼と受容
・AIを信頼したいと考えている回答者はわずか 23%。77%は「信頼したくない」または「わからない」と考えている
・56%がAIを受け入れていると回答しており、これはオランダに次いで2番目に低い結果となった
・否定的な感情(心配:55%、恐怖:52%)を示している回答者の割合が肯定的な感情(楽観:42%、興奮:40%)を上回り、73%がAIに不安を感じている
(2)AIの潜在的なメリットとリスク
・75%の回答者が、「AIにはさまざまなメリットをもたらす」と考えている
・68%がさまざまなリスクを懸念しているが、調査対象国のなかで日本だけがシステム障害を最も大きな懸念事項(81%)として挙げている
・42%が、AIのメリットがリスクを上回ると考えている
(3)誰にAIの開発と管理を任せるか
・公共の最大の利益のために AIを開発・管理することに関し、「テクノロジー企業や国立大学、国際的な研究機関が、最も信頼できる」と考えられている(77~81%)
・日本は韓国、シンガポール、BICS 諸国と同様、テクノロジー企業に対する信頼度が高い
・ほぼ半数(47%)が政府に対する信頼がない、あるいは低く、43%が営利組織を信頼していない
(4)責任あるAI
・半数強(52%)が、「AIが社会に与える影響は不確実で予測不可能」と感じており、これは調査対象国のなかで 2 番目に低い数字となっている
・77%は AIには規制が必要だと考えており、政府による規制(55%)よりも、産業界による規制(61%)を望む傾向がある
・「現在の規制や法律、保護措置でAIを安全に利用できる」と考えている回答者はわずか13%で、調査対象国のなかで最も低い
・96%が、「信頼できる AI の原則と実践は AI システムへの信頼にとって重要だ」と考えている
(5)職場におけるAI
・31%が、「仕事で利用するAIを信頼したい」と考えている。この数字は低いものの、より広範に利用されるAIを信頼したいと回答した割合よりも高い
・AIに仕事が奪われるよりも雇用創出の方が多いという考えには 37%が反対しており、これはシンガポール、インド、中国を除く他の調査対象国よりも低い結果となった
・21%は、「自身の仕事がいずれ AIに置き換わる」と考えており、これは調査対象国のなかで最も低い
(6)AIに関する理解
・75%が AIへの理解度が低いと回答しており、これは調査対象国のなかで最も低い結果となった
・「AIについてさらに学びたい」と考えている回答者は 55%で、これも調査対象国で最も低い数字である
・56%がAIを含む一般的なアプリケーションを使用しており、それとほぼ同じ割合の回答者(53%)が、それらのアプリケーションでAIが使用されていることを知っている
AIがさらに受け入れられるための 4つの要因
AIに対する信頼に影響を与え、責任あるAIの利用を強化する要素として、4つの明確な道筋が特定できた。それは、「制度」「動機付け」「不確実性の低減」、および「知識」の観点だ。
これらの重要かつ補完的な要素のうち、「制度」が信頼に最も強い影響を与え、次に動機付けが挙げられる。
・制度
AIを安全に利用するための保護措置・規制・法律、および AIの開発・利用・管理を行う政府機関や営利組織に対する信頼が重要。
・動機付け
AIの活用がもたらす潜在的なメリットを実証することで、AIへの信頼感を高める。
・不確実性の低減
AIリスクへの懸念に対処する必要がある。
・知識
AIの利用に対する人々の理解と、テクノロジーを利用する際の有効性を高める。
関連情報
https://kpmg.com/jp/ja/home/media/press-releases/2024/01/kc-trust-in-ai.html
構成/清水眞希