徹底したシールドで雑音を排除
「BATT2」の重さは2.9kgと電源などの電気回路を持たないパッシブ型アッテネータとしてはズシリと重い。その理由はアルミNC精密加工筐体を採用したことにある。アルミを採用した理由は高周波ノイズ対策。1MHz付近での吸収減衰量は同じ2mm厚の鉄板と比較して、100dBのシールド効果が期待できるという。さらに4個のアッテネータユニットは、独立したシールド壁で隔てられ、最も電気抵抗が低い純銀メッキワイヤーを使って1点アース処理されている。
アッテネータは 音質最優先のラダー回路採用
パッシブ型アッテネータの心臓部は、もちろん連続可変型アッテネータである。ここで問題になるのが、連続可変型か固定抵抗切替型かだ。使い勝手がいいのは連続可変型で、音が途切れることなく音量調整ができる。スライダーと呼ばれるパーツを半円状の抵抗を移動させて抵抗値を可変させている。これに対して固定抵抗切替型は、ロータリースイッチに減衰量の異なる固定抵抗を取り付けて抵抗値を変更する。左右の音量差を意味するギャングエラーを抑えられるメリットがあり、固定抵抗の種類やメーカーを吟味すれば音質も追求できる。しかし、切り替えられるステップが有限で、切替時に音が途切れるという弱点がある。
BATT2を設計した山陽化成の西尾仁孝氏は「抵抗切替型の耐久性は1万回程度で、1日10回アッテネータに触ると3年持たない計算になります。弊社の採用したラダー型アッテネータは10万回の耐久性があり、25年程度、問題は発生しておらず、メーカーの寿命スペックに信憑性ありと実感しています」と語る。BATT2に使われるラダー型アッテネータは、コンダクティブ・プラスチック抵抗基板採用で低摺動ノイズ。ラダー回路と調整で角度減衰量の精度が高く、高寿命という特徴がある。
今回、比較試聴に使ったアッテネータはアルプス電気「RK501」を使用している。BATT2とどのように音質が違うのだろう。
リアパネルから見るとバランスの入出力2系統がピッタリ収まるサイズであることを実感
音色の違いと音像定位がより正確になった
BATT2はバランス接続専用なので、パワーアンプはJDF「HQS2400UPM」、DACはResonessence Labs「INVICTA MIRUS PRO」を使い全てバランスで接続した。スピーカーはフロア型のApogee「Duetta Signature」とブックシェルフ型の「Ishida model」で再生した。音源はハイレゾ音源とAmazon Music HDのストリーミング音源を使用。Apogeeはインピーダンスも能率も低いため、ボリュームは全開に近づき、小型スピーカーを小音量で聴いた方が違いが明確になった。
小型フルレンジの得意分野である音像定位と音場感で威力を発揮したのが、BATT2である。ボーカルの音像定位がよりシャープになり、楽器の輪郭もハッキリして位置関係がより明確に感じられる。Apogeeで再生すると、アッテネータなので色付けがなく、硬質な音を予想していたが、リファレンスと比較するとBATT2の方が明るい音色になった。もしかすると、これはパワーアンプかDACかスピーカーの音色で、それをアッテネータが無色透明化して引き出したのかもしれない。S/N感の良さ、左右に広い音場、フォーカスの良さなども実感できた。試聴するまではプリアンプならともかく、パッシブ型のアッテネータ同士を比較しても、そんなに差はないだろうという予想は見事に裏切られた。さらに音色の違いまであり、オーディオの奥深さを再確認できた。バランス型アッテネータを探している方はぜひBATT2をその候補に加えて、試聴してみることをお勧めする。
写真・文/ゴン川野