「つばめベース」の運営を通して考えるこれからの地方
冒頭でお話したとおり、総務省を退職して「つばめベース」の運営をしている筆者だが、当時の霞が関での仕事も充実していた。いち若手官僚ながら、新型コロナウイルス感染症対策や地方財政制度の根幹に携わっていた。冒頭でお伝えしたとおり、ひとりで数兆円の予算に携わることは、良い意味で“シビれる”経験だった。
そんなバックグラウンドなので、人口減少率や高齢化率、自治体の財政力指数などの定量的な指標によって地域の“将来”を考えることの重要性も理解している。しかし、「つばめベース」を通して思うのは、そうした定量的な基準と同じくらいに、地域にとっては“楽しい!”や“子どもがたくさんいる感”といった定性的な感覚も大事だということだ(誤解を恐れずに言うが、それは“子どもの数”という数値と同義ではない)。
地域に住む多くの人にとって、抽象的な指標は実感がなく、イメージも湧きづらい。人口や出生率が減少しているという漠然とした議論から、具体的なアクションプランの一歩を踏み出すことは難しい。そうした議論と同時に、目に見えるかたちでの地域の元気があるからこそ、そこに可能性を感じる大人たちの重い腰が上がるのだ。
つばめベースはそうした意味で、子どもたちの施設として子どもたちに“楽しい!”を提供するだけでなく、子どもたちの存在を大人たちに見てもらうことで、地域をよりよく動かす拠点にもなりうると考えている。「つばめベース」がもたらす子どもたちのリアルなエネルギーを地域の処方箋とすべく、これからも“楽しい!”遊び場を子どもたちに提供していきたい。
★つばめベース
新潟県燕市仲町3-10-1
11:00-17:30
年末年始 休(その他不定休あり)
★これからの物語をつくるフードバンクつばめ“チームでこぼこ”のメンバー
文/玉橋尚和(タマハシナオカズ)
特定非営利活動法人フードバンクつばめ理事。高校卒業後、航空自衛隊に入隊。その後、慶応義塾大学、京都大学公共政策大学院、総務省を経て、現在は新潟県燕市に拠点を置くNPOフードバンクつばめ理事。総務省時代は新型コロナ対策や地方財政制度に携わる。2023年11月、日本初となる「食べれば食べるほど、楽しめば楽しむほど、誰かを救うことのできる」施設、「宮町食堂」と「つばめベース」の立ち上げに参画。
イラスト/齋藤和実