目次
言葉の中には、特定の業界や産業で使われる用語が、一般にも広まっていくケースが少なくない。「有用性」もそのような言葉の一つだ。意味は見当がついても、具体的な使い方や、字面が似ている「有効性」との違いなどは、はっきり知らない人も多いはず。
そこで本記事では、わかるようでわかりにくい「有用性」の意味と、別の言葉に言い換える場合の類語表現について解説する。
「有用性」とはどんな意味?
「有用性(ゆうようせい)」とは、「有用(役に立つこと)」と「性(~の性質・状態・程度であること)」を合わせた言葉。ある特定の物事に対して、役に立つ性質を備えている物や事に対して使われる。
医療分野における「臨床的有用性」が有名だが、医療以外の分野でも、役に立つ性質を持つものやことに対して広く使用される言葉だ。
■医療における「有用性」とは
医療分野では、治療を評価する際に「臨床的有用性」という指標が設けられている。「臨床的有用性」とは、ある特定の治療が、医療の現場(=診療)においてどの程度有効かを評価するもの。HTA(Health Technology Assessment:医療技術評価)を提出する際の評価項目の一つとなっている。診療での評価において患者への安全性と有効性が高いことを「有用性がある(高い)」と表現するケースが多い。
■「有用性」と「有効性」の違いは?
「有用性」に似た言葉として「有効性(ゆうこうせい)」がある。「有効」とは「効きめのあること、効力のあること」を意味する言葉。また、「役に立つこと」を意味する場合もある。
「有用性」と「有効性」の違いは、役に立つことを強調したい時には「有用性」を、効果があることを強調したい時には「有効性」を使うと意味をイメージしやすい。
ただし、「有効」にも「役に立つ」の意味があるため、言葉の使い分けや選び方は、個人の感覚による部分も大きいと言えるだろう。
なお、医療分野では、治療の効果を図る指標として「臨床的有効性」という言葉が使われる。「臨床的有効性」とは、ある治療が臨床試験や実験室での試験において、どの程度有効かを評価するもの。 「臨床的有用性」との違いがわかりにくいが、「臨床的有用性」は、臨床試験等で得られた「臨床的有効性」に加え、治療の研究内容や患者の選択なども加味した診療=医療の現場全体で評価される。
「有用性」の使い方や言い換え表現
「有用性」は、「有用」の言葉の意味さえ知っていれば意味を理解することは難しくない。
プラスアルファの知識として、「有用性」をどのような場面で使うかの具体例や、相手に上手く伝わっていない場合の言い換え表現などもマスターしておくと、ビジネスシーンや日常生活で役に立つはずだ。
■「有用性」の使い方・例文
「有用性」は、物事の機能や手段、構造などが、ある特定の目的・ニーズに対して役に立つ場合に使う。「有用性」を使った例文を見てみよう。
【例文】
・敬語やマナーの有用性は、社会に出てからのほうが実感することが多い。
・ルーティンワークの自動化は、業務効率をあげる上で有用性が高い。
・有用性を確認できない薬品の一部は、すでに製造中止となっている。
■有用性の類語・言い換え表現
「有用性」は、役に立つことを改まって表現したい場合に便利な言葉だが、言い換えのバリエーションをいくつか知っていると、「有用性」という言葉を知らない相手にもスムーズに内容を伝えられる。
「有用性」と同じ意味で使える類語や言い換え表現は以下の通り。
・有益性(ゆうえきせい):有益であること。「有益」とは、利益があること、ためになることを指す。
・効果的(こうかてき):効果があるさま。目的とする効き目が現れることを言う。
・実利的(じつりてき):現実の利益になること。「実利」とは、実際の利益を指し、うわさや想像だけのことではなく現物の利益や実際に得られるメリットのことを言う。
「有用性」を英語で言うと?
仕事やプライベートで英語に触れる機会が多い場合は、「有用性」の英語表現もチェックしておくと良いだろう。
■「有用性」の英語表現
「有用性」を英語で表現する場合は、「usefulness(役に立つこと)」や「availability(有効)」などの語句が適する。「有用性が増す」は「increase in usefulness」や「become more(and more)useful」などで表現可能だ。
なお、日本語の有用性は、医療分野とその他で意味合いが若干異なるが、英語の場合は、医学・軍事・機械関連の用語で「availability」を使うことが多いものの、経済・ビジネス分野ではどちらの単語も利用できる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部