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「働き方改革」や「社畜」「ワークライフバランス」など、仕事への向き合い方を表す言葉は、ビジネスパーソンにとってなじみ深い。「quiet quitting」もそんな働き方に関する言葉の一つだ。2022年に登場した比較的新しい言葉のため、意味を知らない人も多いだろう。
そこで本記事では「quiet quitting」の意味や言葉の由来、ビジネスパーソンから注目を集める理由などについて解説する。
「quiet quitting」の日本語の意味は「静かな退職」
「quiet quitting(クワイエットクイッティング)」は、「quiet(静かな)」「quitting(辞めること、退職。※辞めるを意味するquitの動名詞形)」で、日本語に訳すと「静かな退職」という意味になる。2022年に動画SNSの「TikTok」に投稿された「#QuietQuitting」が話題となり、アメリカのZ世代を中心に広まった。
■キャリアアップを目指さない働き方を意味する「quiet quitting(静かな退職)」
「quiet quitting(静かな退職)」に明確な定義はないが、実際の退職とは異なり、与えられた仕事を淡々とこなして必要以上に熱意を注がない、「こっそりと退職しているような働き方」のことを指すことが多い。
元々アメリカで普及していた、仕事に全力を注ぐ働き方「ハッスル・カルチャー」に対抗する考え方として登場した。
「quiet quitting」の価値観を持って働くビジネスパーソンは、キャリアアップや報酬アップを目指さない代わりに、残業や業務時間外の就労も断り、仕事から一定の距離を置く。仕事に対してやりがいや自己実現を求めない価値観が「quiet quitting」の特徴だ。
■「quiet quitting(静かな退職)」のメリットは?
「quiet quitting」の働き方は、従業員側にとっては自身のプライベートを充実させられるメリットがある。昇給や昇進を目指さないため、仕事への責任も限定されるケースが多く、心身に負担をかけない働き方が可能だ。
なお、雇用主側にとっては「quiet quitting」の働き方によるメリットはほぼなく、デメリットのほうが大きいと言える。
■「quiet quitting(静かな退職)」のデメリットは?
「quiet quitting」には、従業員と雇用主のそれぞれにデメリットがある。
従業員側のデメリットは、リストラや雇い止め、降格、減給などの対象となりやすい点。また、他の社員からの風当たりが強くなるケースもあるだろう。昇給を目指さないことで金銭的な不安に繋がりやすい点も「quiet quitting」のデメリットだ。
一方、雇用主側のデメリットは、仕事に熱意のない社員の存在により職場全体のモチベーションが下がる可能性が挙げられる。また、仕事に熱意を持って取り組む一部の社員に業務が集中し、「本人に負担がかかる」「業務効率が落ちる」などの問題にも繋がりやすい。
「quiet quitting(静かな退職)」が起きる原因
「quiet quitting」の働き方が支持され普及する背景にはさまざまな原因が考えられる。
■プライベート時間の重要性の高まり
「quiet quitting」の発祥であるアメリカはもちろん、日本においても働き方への意識は変化している。特に、働きながら育児や介護に従事する世帯が増加した点から、プライベートの時間を重視する傾向は強まっていると言えるだろう。
■キャリアアップへの展望がない
特に日本においては、平成から続く景気の低迷により、昇進や昇給が見込めない勤務先も少なくない。キャリアが低迷している社員に対するフォローがない職場では、従業員側も仕事への熱意を抱きにくい。
「quiet quitting(静かな退職)」への対処法は?
さまざまな要因が絡み合って起こる「quiet quitting」だが、メリットよりもデメリットのほうが大きいと感じる場合は、何らかの対策が必要となる。
■従業員側の対処法
社員をはじめとした従業員側にとって「quiet quitting」は一定のメリットがある働き方だ。しかし、金銭面など将来への不安が大きい場合は、「quiet quitting」を辞める方法を模索したい。
具体的には、「業務に熱意を持てる職場に転職する」「企業側とキャリアやスキルアップについて話し合う」「副業で収入を増やす」など、現状の不安を改善するための手立てを考えよう。
■雇用主側の対処法
企業などの雇用主側が「quiet quitting」に対処する場合は、まず該当する従業員と面談を行い、キャリアに関する本人の希望や悩み、所持スキル等をヒアリングすることからスタートしたい。
さらに、本人の適正を見極めた上で仕事を任せ、定期的なフォローをしつつ、成果に応じた評価を心がけることで、働く側が熱意を持って仕事に打ち込みやすい環境を整備できる。適切なスキルアップ制度と評価制度を整えていくことが、雇用主側の「quiet quitting」対策と言えるだろう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部