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集団において、多数派と同様の考えや行動をしなければならないと感じさせる、心理的なプレッシャーを「同調圧力」という。学校や会社などで、同調圧力を感じたことのある人も少なくないはず。
同調圧力が良い方向に働くこともあるが、悪い方向に働くと、いじめやパワーハラスメントなどの原因ともなりうるため、言葉への正しい理解が必要となる。
そこで本記事では、同調圧力の意味と具体例、メリット・デメリットを解説する。同調圧力に屈しない人の特徴もチェックしてほしい。
「同調圧力」の意味と具体例
まずは、「同調圧力」の意味と具体例を見ていこう。
■同調圧力は「集団に働く暗黙の強制力」
同調圧力とは、集団に働く心理的な圧力のこと。具体的には、少数意見を持つ者を、多数派と同様の考えや行動に強制するような圧力を指す。
似た意味を持つ言葉としては「同調行動」がある。同調行動は、意識的、または無意識的に自身の行動を周囲に合わせること。同調圧力が多数派と同じような行動を起こす「原因」であるのに対して、同調行動は同調圧力によって引き起こされる「結果」を表した言葉といえる。簡単な例を挙げると、ファッションの流行に乗ることも同調行動の一種だ。
■同調圧力の具体例
職場や学校などでよく見られる同調圧力の具体例は、以下の通り。
・独創的な意見が述べづらい雰囲気のある会議
・周囲が残業をしていて帰れない
・親睦会に行きたくないが、ほとんどの人が参加するため断れない
・有給取得率が低く、休みにくい
・ドレスコードが指定されていない結婚式でも、「マナー」を気にして主役より目立たない格好をしようと気遣う
コロナ禍では、日本人の同調圧力の強まりが指摘された。外出自粛やワクチン接種、マスクの着用などに関して、多数派に従わない少数派の人々への批判がなされた状況は記憶に新しいだろう。
「同調圧力」のメリットとデメリット
ネガティブなイメージのある同調圧力だが、集団にとってメリットとなる場合もある。ここでは、同調圧力のメリットとデメリットを見ていこう。
■メリット
同調圧力が適度にかかっている状態の集団では、協調性のある雰囲気が生まれる。集団の多数派と考え方が同じであれば、「メンバーのために頑張ろう」という高いモチベーションが持てる。また、「メンバーに迷惑をかけたくない」との思いから不正が起きにくいとも言われる。
■デメリット
同調圧力を過剰に感じる集団では、メンバーが間違いを指摘できず、悪い文化が踏襲されてしまうことがある。また、優秀な人材が悪目立ちして足の引っ張り合いが起きたり、萎縮して新しいことに挑戦するメンバーが減り、多様性が生まれにくくなったりする。
同調圧力には古くからの文化が関係している?
日本は島国であり、昔から同一民族が助けあいながら生きてきた。衝突はなるべく避け、「和を尊ぶ」考え方が広まる。また、古くから農業が盛んな日本社会では、「村社会」が築かれ、秩序を守ることが重視されてきた。
そんな中でルールを破れば、仲間外れにされる「村八分」に遭う。そのため、日本社会では自分の属する家族やコミュニティーメンバーに迷惑をかけない行動が良しとされてきた。こうした背景から、現代の日本人にも「空気を読む」文化があるとされる。
■海外 でも同調圧力の流れはあるのか?
中国や韓国などのアジア地域やアフリカの一部地域では、家族や民族など集団の和を大切にする文化が根付いている。集団の伝統的な習慣を守り、調和を乱さないことを美徳とする価値観には日本と共通する部分もあるようだ。
また、個人の自由を尊重するイメージの強い北米やヨーロッパ諸国にも同調圧力は存在する。特にビジネスの現場や政治の世界では、組織としての統制を取るため、日本と同様、強い同調圧力が働いている。
同調圧力に屈しない人の特徴
同調圧力に負けないためには、対策が必要となる。最後に、同調圧力に屈しない人の特徴を見ていこう。
■自己洞察力が高い
自分の心身について把握する「自己洞察力」が高い人は、自身の置かれた状況や感情を客観的に理解する能力に長けている。物事に対して自分の意見を明確に持つ傾向があるため、周囲の意見に流されにくい。
自己洞察力を高めるためには、日記を書いて自身の思考と向き合うのがおすすめだ。
■自分軸を持っている
同調圧力に負けてしまう人は、判断基準が多数派の意見になっていることが多い。自分の中に判断基準を持っていれば、自分に自信を持てるだけでなく、不安や緊張から周囲の意見に合わせることもなくなる。
■孤独に強い
「仲間外れになりたくない」「嫌われたくない」といった心理が過剰に働くと、同調圧力にかかりやすくなる。反対に、孤独耐性がある人は、同調圧力に屈しにくい。孤独に強くなるためには、自分の居場所を複数持っておくのがおすすめ。「ここで仲間外れにされても大丈夫」というマインドが持てるようになる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部