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アート界の嫌われ者?アメリカ的な商業主義をアート作品へと昇華させたジェフ・クーンズの功績

2024.02.02

POPAYEシリーズ&HULK ELVISシリーズの発表

21世紀に入ってもクーンズは精力的に活動していきます。2003年に発表された「POPAYE」では、コミックのキャラクターであるポパイを絵画作品の中に登場させていきますが、真の目的はポパイではなく、レディメイドの再検討といわれています。

特に組み合わせに注目しており、限りなく本物に近いものと、本物が組み合わされています。「HULK ELVIS」シリーズもコミックの登場人物をモチーフ(アンチヒーロー)としています。レディメイドを最新技術をつかって拡大しようと試みており、本物とコピーを限りなく分からない曖昧なものとすることに成功しています。

ANTIQUITYシリーズを発表

2009年からはじまった古代の名作をモチーフとしたシリーズで、絵画や彫刻などを最新のCTスキャンなどのイメージ技術を使って作品にしています。古代からの美術史のなかでの「クーンズ」という歴史的な立ち位置を明確にしています。

GAZING BALLを発表

2013年からはじまった「GAZING BALL」は美術教材の石膏像とアメリカ郊外の庭先に飾られているガラス玉に触発された最新シリーズで、「ANTIQUITY」からの流れのなかにあり、古代ローマやギリシャのヴィーナス、英雄像がモチーフとなっています。ヴィーナスが持っている鏡のようにピカピカに磨かれたガラス球は、鑑賞者を映し込む作品となっており、まるで未来を占う水晶玉のようにも見えてきます。

クーンズと資本主義の観点

ジェフ・クーンズのアートは、資本主義の文脈で見ると、大量生産と商品文化、そしてアートとしての商業的成功という要素が結びついています。

クーンズは商品の美と現代文化のアイコンを取り入れ、それをアート作品に昇華させました。彼の作品はしばしば商業的な要素や大衆文化の象徴を取り入れており、これは資本主義社会において商品が人々に与える影響や欲望とも結びついています。

また、クーンズはその作品を高い価格で販売し、ギャラリーとの関係も重要な要素となっています。彼の成功は芸術家としてだけでなく、ビジネスとしても確立された一例と言えるでしょう。

クーンズにとって作品が市場で高値で取引されることは、アートが資本主義経済の一部として機能していることを象徴しています。

一方で、「MADE IN HEAVEN」シリーズのような露骨な作品は、芸術と商業、個人のプライベートな要素との複雑な関係を問い直すものとも言えます。これは資本主義社会における個人のプライバシーと公共スペースの境界線を問い直す試みではないでしょうか。

このように、クーンズのアートは賛否両論ありますが、彼の活動は資本主義社会においてアートがどのように位置づけられ、機能しているかを考える上で興味深い事例となっています。

そもそもアートは娯楽とは異なり、「社会の中」に閉じ込められた人々に「社会の外」を突きつける営みと考えるならば、アートはしばしば人々に対して、彼らが想像しているような理想的な世界ではないという鋭い指摘を行なうからです。

娯楽が逃避や回復を提供するのに対して、ときにアートは現実と向き合い、社会の中に潜む闇や複雑さに触れさせます。

また資本主義の観点から見ると、ジェフ・クーンズの作品もこの文脈で理解できるのではないでしょうか。なぜならクーンズは、資本主義社会の本質やその影響に対して独自の視点を提供していると考えられるからです。

彼の作品は、一見娯楽的でポップな要素を含んでいるものの、その裏には社会への鋭い批判や問いかけが存在しています。

これがクーンズ作品が持つ特性ではないでしょうか。

おわりに

クーンズはアメリカ生まれであり、その文化的背景も注目したいポイントです。

大学時代にデュシャンのレディメイドにはまり、卒業後はニューヨークへとわたっている。そのときはまだアメリカにはポップアートがありウォーホルも生きていた時代です。若きクーンズが影響を受けていないはずがないのです。

既製品と大量生産とアメリカ的な商業主義をベースにアート作品へ昇華させたアーティスト。それがクーンズをクーンズ足らしめているのではないでしょうか。

クーンズ作品は2007年、存命する芸術家の最高額を更新(約26億)しています。また2019年には彫刻「ラビット」が約100億円で落札され、これも存命アーティストの最高額を更新しています。

なにより、クーンズは自身の作品価格が上昇することに意図的です。これは同時代を生きる画家のゲルハルト・リヒターが自身の作品価格の上昇を望んでいない姿勢とは対照的であり、興味深いものがあります。

少なくともクーンズは、歴史に残る現役のアーティストとして、今後も賛否両論を浴びながら時間と共に価格が高騰していくのではないでしょうか。

なぜならアートマーケットは今後も資本主義経済の発展とともに拡大していくことが予想されるからです。

文/スズキリンタロウ(文筆家・ギャラリスト)

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