現在、日本各地では高齢化が加速したことで、住む人がいなくなって久しい空き家。もしくは長期間家主が戻ることができない家屋が増え続けている。また、元々は親が所有していた家屋を、現在はその子供世代が相続したものの、空き家状態で持て余しているというケースも少なくない。
ご存じの方も多いと思われるが、家というものは使わないと思った以上に早く老朽化する。
定期的な換気をしなければ家の中はカビが発生するし、庭がある場合は雑草問題も生じる。
地震や台風によって損壊することも考えられ、その場合は即座に現状を確認しなければ家財へのダメージにも気付くことができない。
しかし、所有している空き家が、所有者の住むエリアと離れた場所にあるというケースでは、こういった適切な管理も難しくなる。
地方では年々、空き家問題は身近なものになりつつあり、平成27年に施行された「空き家対策の推進に関する特別措置法」は、令和5年12月に改正施行され、ますます自治体が所有者に管理を促すケースが増えてくるものと思われる。
そんな中でも徐々に、空き家の管理を代行するサービスを展開する企業や団体も登場している。
今回は、新潟県を中心にこの空き家問題を解決しつつ、さらに障がいを有する方の就業支援にも結び付けた事業を展開している、空き家見守りサービス「House Cat 株式会社(以下:ハウスキャット)」に取材を申し込んだ。
創業は2022年12月と新興の企業ではあるが、なぜこのサービスを開始したのか。
そしてなぜ障がい者就業支援も行う形態となったのか。
この辺りの理由を、代表の長井誠さんに伺う。
最初は健常者に業務を任せる予定だったが、障がい者就業支援施設から「私たちに任せてもらえばできるのに」の一声で業務委託を決心
松本 まずハウスキャットの活動についてのご質問です。
障がいのある方を雇用しての空き家管理という事業を、思いついたきっかけについて教えてください。
長井さん まず、障がいのある方を雇用するのではなく、障がい者就労支援施設に業務を委託し、委託を受けた同支援施設は、施設を利用する障がい者により実際の業務を行ってもらう体制となっています。
(建物を管理することの難しさを認識することができる1枚。ハウスキャット提供)
構想当初は、健常者に業務を担ってもらうことを想定していましたが、ある障がい者就労支援施設と、たまたま、空き家の管理の話をしていた折に、同事業所から「私達に任せてもらえればできるのに?」との話があり、空き家問題と障がい者の就業支援が同時に行えることを思いついたことによります。
また、障がい者の就労による所得があまりにも少なく、これの手助けをしたいということもありました。
なお、離島および山間地等においては、高齢化がますます進んでおり、障がい者による労働力は貴重な戦力となっていくと思われます。
松本 経緯のご説明、ありがとうございます。
もう一つ、作業に従事する障がい者の方々は県内各地の就労支援事業所に所属しているとのことですが、各地の施設との連携をするにあたって、気を付けたポイント。心がけた部分などがあれば教えてください。
長井さん 障がい者就労支援施設にごとに本事業に対する取り組み姿勢が違うため、当社が希望する統一したサービス提供を行うことが可能な施設を選ぶことに注意を払いました。
作業全体での事業所の負担をできるだけ省けるように、報告書自体を画像ファイル化すると同時に、作成報告書等をクラウドフォルダへの添付で完了する体制としました。
また、作業実施のための物品(iPhone、充電式掃除機、手提げ金庫、車両表示ステッカー、懐中電灯、ビブス)の無償貸与も行っています。