メダカや金魚を屋外で飼育する際には、自然水系と隔絶する環境を!
松本 笠間さんが手掛けております「観賞魚を放流してはダメ!最後まで飼育しよう」の記事中では、メダカや国内外来種になりうる日本産淡水魚に、大陸系の魚の放流リスクについても警鐘を鳴らしておられます。
飼育者の間でも、まだ国内外来についての周知が不十分な中、屋外での飼育は推奨できないと断言している点が印象的でした。
最後に、熱帯魚以外であっても、メダカや日淡を水槽で飼育することの必要性につきまして、改めてお話をいただけますとさいわいです。
笠間さん 改良メダカブームにより近年ではメダカを屋外で飼育する方、熱心に品種改良や繁殖に力を入れているお客様が多くなりました。これらの改良メダカは、もともと自然の川に生息する原種のメダカとは異なる形質を持っており、自然の河川に放流された際には簡単に原種との交雑が起こりえます。
近年では、外国からやってきたものを「第1の外来魚」、国内の本来の分布域外からやってきたものを「第2の外来魚」として位置づけ、改良メダカのような観賞用の改良品種が自然環境に放たれたものを「第3の外来魚」として位置づけられています。
メダカや、金魚に関しては、屋外での飼育は古くから一般的に行われています。
もちろん屋内飼育に比べると逸出リスクはあるのですが、状態良く飼育するためには屋外での飼育が最適となるケースも多く、全てが全てを屋内飼育とすることは困難です。
したがって、メダカや金魚を屋外で飼育する場合は、池やビオトープ、トロ舟を自然水系から隔絶し、適切な逸出対策を行っていただきたいと思っております。
(筆者宅。ビオトープで改良メダカを飼う場合は、屋外に逃がさない工夫が必要)
また、日本産淡水魚も地域ごとにそれぞれ固有の特長、形質を持つ種が知られています。販売されている日本産淡水魚を『日本の生き物だからいいや』と川などに放流してしまうと、もともとその川に生息していた在来種と競合、交雑を起こす可能性があります。
その結果、地域固有の個体群に影響を与えてしまうことになり、日本の豊かな生態系ではぐくまれた多様性のひとつが失われることになりかねません。
これらの種に関しては熱帯魚と同様に、逸出させたり、野外の川に放流することがないように細心の注意をもって飼育して頂きたいと思っています。
日本産淡水魚の場合、在来の種ということであまり注目されませんが、こういった国内種による「第2の外来魚」問題についても多くの方にリスクを知って頂きたいと考えております。
近年入荷が見られるようになった大陸系の淡水魚は、従来の熱帯魚にはない発色を持ち、ヒーターによる加温も不要と大変魅力的なグループです。
しかしながら在来の魚種と競合する可能性が高く、また特にタナゴやドジョウ類などでは交雑のリスクも高い「第1の外来魚」でもあるのが懸念事項です。
大陸系の魚種に関しては逸出リスクを可能な限り0にすべく、できるだけ屋内で飼育頂きたいと考えております。
原則、飼育個体は終生大事に育てる!これが生態系に悪影響を及ぼさない一番の飼育法!
ということで、今回は株式会社チャームの笠間さんに、観賞魚を飼育する上で大切な、自然環境に悪影響を及ぼす事態を防ぐためのポイントについてお話を聞くことができた。
どんな魚であれ、一度飼育すればそれはもう人が介在した大切なペットとなる。
水槽に入れたら、その魚が天寿を全うするまでお世話をするという、当たり前のことをしていれば、生態系に影響を及ぼすこともない。
本来の生態系に存在しない魚だった場合、もしも安易に放流した先で定着してしまうと、元々いた別の生き物と競合し、住処を奪ってどんどん繁殖する可能性が出てくる。
こうならないように、飼育個体のリリース厳禁は当然として、逃がさない対策も大事となる。
笠間さんも指摘しているが、このところ外来種を安直に悪とみなす風潮というものは少なからず出てきている。
これは某水抜き人気テレビ番組のナレーションがやや大げさなことに起因したものと思われるが、元をただせば私たち人間の管理が不徹底であったり、十分な知識が伴いままリリースしていたことが原因。
外来種を敵視するのではなく、外来種の定着による生態系の破壊を招かないような心がけが、観賞魚を飼育する全ての人にとって必要となるのだろう。
文/松本ミゾレ
【取材協力】
株式会社チャーム
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