東京都は2024年5月、スタートアップの一大拠点となる「Tokyo Innovation Base」(TIB)をグランドオープンする。2022年10月に掲げたスタートアップ戦略「Global Innovation with STARTUPS」に基づき、5年でユニコーン数10倍、起業数10倍、行政とスタートアップの協働プロジェクト10倍を目指すという高い目標を達成する上での本拠地になる予定だ。TIBは2023年にすでにプレオープンを行ない、大きな話題を呼んでいる。
改めて、国内最大級となるスタートアップ企業交流の本拠地たるTIBとその根底にある東京都のスタートアップ戦略について振り返ってみよう。
「Tokyo Innovation Base」はスタートアップの活性化の起爆剤となるか
東京23区のスタートアップ企業は10年で2000社以上
まず、東京都をとりまくスタートアップ企業の現状からみていきたい。
帝国データバンクによれば、東京23区内に設立されたスタートアップ企業はここ10年で2549社にも上る。
エリア別の内訳をみると、「港区」が22.6%で最も高く、幅広い業種が顔を並べている。次いで“若者の街”として賑わう「渋谷区」(22.1%)が続き、EC、エンタメ、ファッションなど個人向けサービスを展開している企業が多い。さらに、大手町・丸の内エリアが代表的な「千代田区」(14.8%)ではDX、FinTechなどのテック系企業、大手製薬会社の本社が集う「中央区」(11.2%)ではヘルスケア系企業の集積が目立ち、各地域でさまざまな特色が表れている。
また、スタートアップ企業を独自の事業分野別でみると、「DX」が12.2%で最も多く、次いで「バイオ・ヘルスケア」「くらし」(8.2%)などが続いている。
これまでにない革新的/特徴的なビジネスモデルを武器に成長を目指すのがスタートアップ企業であり、その源泉としてITなどの新技術を用いる傾向が強いことから、テック系関連が上位に多く並んでいる。
5年で起業数10倍を目指す東京都
こうした背景の中、2022年11月、東京都が打ち出したのがスタートアップ戦略「Global Innovation with STARTUPS」だ。そして、同戦略の理念は「挑戦者が生まれ、世界から集まり、挑戦者を応援する東京へ」である。
モデルナ、スペースエックス、ウーバーなど、世界の変革と成長を牽引しているスタートアップの名前を挙げるときりがない。そして、イノベーションは社会課題の解決に必要不可欠である。東京都は、こうしたイノベーションの発信地としての顔を作り上げるためにもスタートアップ戦略を立ち上げ、スタートアップ企業を後押ししようと考えているのだ。
そのための具体的な数字として掲げているのが「10×10×10のイノベーションビジョン」である。
グローバル×10:東京発ユニコーン数5年で10倍
裾野拡大×10:東京の起業数5年で10倍
官民協働×10:東京都の協働実践数5年で10倍
「10×10×10のイノベーションビジョン」のイメージ図
このビジョンのための具体的な取り組みとしては次のようなものがある。
海外のベンチャーキャピタルやアクセラレーターを誘致しスタートアップ企業がグローバル市場にチャレンジしやすくする仕組みの構築、起業の‶魅力〟を高校生や大学生に伝える刺激的な体験を提供し若者の起業家性の醸成、スタートアップの技術・製品等を活用した提案を募集し都政現場で実装、公共調達を大幅拡大し実証フィールドを拡大、そして、国内外からスタートアップに関わる様々な団体等が集まり重点的な支援を提供する一大拠点「Tokyo Innovation Base」の設置だ。