「リスキリング」「学び直し」促進のための支援策は「管理職のマネジメント能力の向上支援」が最多
導入率の平均が5割以上の「リスキリング」支援策は、導入率が高い順に「16.管理職のマネジメント能力の向上支援」「2.教育訓練プログラムの提供」「13.目標管理制度などを通じた、個人目標と組織目
標の連動の担保」「5.費用面での支援」である。
「2.教育訓練プログラムの提供」「5.費用面での支援」は「学び直し」支援としても平均して半数以上の企業に導入されている。「学び直し」支援としての導入率が「リスキリング」より高いのは「5.費用面での支援」「4.休暇制度の整備による時間面の支援」。
調査担当のコメント リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 主任研究員 藤澤理恵氏
新しい知識・スキルの獲得を従業員に求める企業は6~8割に及ぶが、それが何のためなのかを従業員に対して具体的にメッセージしている企業は4割前後にとどまっています(図表1)。
目の前の業務を推進する傍らで、将来のための漠然とした学習の優先度を高めることは簡単なことではありません。従業員に新しい知識・スキルの獲得を期待するのなら、自社がそれを求める背景や本気度を
伝える必要があるでしょう。そのメッセージの内容は、企業主導の「リスキリング」だから事業変革のため、個人主導の「学び直し」だからキャリア自律のため、などと単純に類型化されるようなものではありませんでした(図表2)。
一つ事例を挙げると、ある IT 系企業では技術トレンドの激しい変化を前に、雇用保障は難しい代わりに「キャリア自律のための学習環境を提供すること」を経営責任として宣言し、「学び直し」支援を積極的に行っているといいます。人的資本経営の時代といわれる今日、新しい知識・スキルの獲得のために会社と個人がそれぞれ何に投資する必要があるのか、お互いに確認する機会をもつべきと考えられます。
【生産性向上】【DX】【キャリア自律】の知識・スキル獲得の成果実感の有無については、関連する企画・推進プロセスへの関与部署、支援策、HRM 施策はそれぞれ異なっていました。図表6に示した「リスキリング」の企画・推進プロセスごとの関与部署についての各社の回答は、非常に貴重なデータです。
事業レベルの戦略策定は経営・事業責任者が行い、具体的なスキル開発プログラムを本社や事業部の人事機能が提供し、ライン管理職が個人の業績目標と成長目標をすり合わせるという企業が多いなか、新しい知識・スキルの獲得の取り組みへの成果実感がある企業群では、戦略策定から本社や事業部の人事機能が関与して人材開発戦略と個人のスキル開発目標を接続する具体的な手がかりを示し、事業部人事とライン管理職が協力して職場に学び合う風土や環境をつくっていることが示されました。
また、経営・事業責任者が、新しい知識・スキルを発揮し実践する場面をつくることにコミットしている様子も示されました。推進側である経営・人事・事業現場にこそ、部署・機能間の従来の役割分担を超えて関わり合う「リスキリング」が求められているといえるでしょう。
<調査概要>
構成/こじへい