若年層男性の香りに対する意識が変化
さらに大きいのが、購買層に若年層の男性が増えていることだ。
「そういったお客様のお話を伺ってみると、今まではフレグランスは自分の体臭を消すためのエチケットのような形で使っていた方が多かったのですが、自分自身のファッションとしての表現や、自分の生活のシーンや外出先のシチュエーションに合わせて香りを選んでいくように目的が変わっています。
他人に対しての香りではなくて、 自分を表現したり自分が嗅いで楽しむための香りの取り入れ方っていうところが、非常にこのコロナ禍ですごく変わってきたのではと感じています」(伊勢丹新宿店 化粧品バイヤー 中尾さん)
香水購買層の拡大は、他の業態でも表れている。@cosme STORE/@cosme TOKYOなど店頭でビューティアドバイザーとして顧客に接している村上宏明さんは、購入層の拡大に加え、購買品目にも変化があるという。
「香りに対する、メンズ・レディースという概念に変化が現れてきていると思います。男性が女性用のフレグランス、女性が男性用のフレグランスをつけるという方も昨今増えてきたと思いますし、いわゆるふんわり香るライトフレグランスなどではなく、香りの持続時間の長いパルファンやオードパルファンをお求めの方が多い印象です」(@cosme ビューティアドバイザー 村上さん)
2024年も香りに対する消費欲求は続くと予想。入門編として10mLサイズなどのミニサイズの需要が高かったところから、50mL、100mLと容量の多いフレグランスを購入する層が増えていくのではとも予想している。
「ファッションブランドのフレグランスだけでなく、他者と被らない『ニッチフレグランス』の勢いも増していくのではないかと思います。男女ともに年齢問わず、フレグランスにかけるお金を惜しまないようにもなってくると思います」(村上さん)
創業者がオペラ歌手だった母とパリ・オペラ座を訪れた思い出からインスパイアされて誕生したフレグランスブランド「アンソワール・ア・ロペラ」。オペラやバレエの演目を題材にした香りが日本に2024年に本格上陸。
ヘアミストなど周辺にも配慮した香りのアイテムはさらに拡充
@cosmeのプランナー、原田さんによると、@cosmeの口コミでは今年「万人受け」というワードが昨年同時期の1.4倍に増加しているという。これはコロナが落ち着いたことで人に会う機会が増え、そこから周囲への配慮、気配りをしながら香りを楽しんでいる姿が窺えるという。
「今年のベストコスメアワードで髪をほのかに香らせる『ディオール / ミス ディオール ヘアミスト』がベストフレグランス第3位を受賞しています。こちらの商品は、2018年から2020年までベストコスメアワードにランクインしていたのですが、直近2年間コロナ禍ではランクインしていない商品となります。こうした商品のラインナップの変化からも生活者の気持ちを垣間見ることができます」(原田氏)
ディオール ミス ディオール ヘアミスト 5,940円(税込み)
ヘアフレグランスをはじめ、香水ブランドが展開するヘアミストやボディクリームなど、香水に抵抗のある方も楽しめる商品が増加。それはキャンメイクなどプチプラのものもあり若年層の関心も高まるものと考えている。
「発売から10年経過する『おいせさん / お浄め塩スプレー』が2年連続でベストコスメアワードを受賞するといった動きも見られており、テンションをあげる、リフレッシュする、癒される、睡眠美容に寝香水、そうした需要も高まっていくのではないかと予想しています。また、シェアコスメも進んでいくのではないでしょうか」
消費の低価格化の拡大傾向のなか、高額商品が売れているコスメ分野。なかでも香りの商品はまだ未体験の層も多く、今後も成長が期待される。かつてバブル期にあった特定の商品ではなく、自分好みの香りを探し求めることは、体験型商品ともつながっており、ネット経由で情報は仕入れても体験のために店舗へと誘導するキーアイテムとなることも期待される。
取材・文/ライター 北本祐子