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「ご厚情」とは何か?意味と使い方
『ご厚情』は、ビジネスメールやあいさつ状、フォーマルなスピーチなどで使われる言葉です。よく見聞きしていても、意味や正しい使い方を知らない人は多いのではないでしょうか。
相手の気配りを敬って使う言葉
ご厚情の読み方は、『ごこうじょう』です。名詞の『厚情』と接頭語の『ご』から成り立つ尊敬表現で、相手の気配りを敬いたい場面で使います。
厚情(こうじょう)には、厚い情けや深い思いやりという意味があります。ビジネスシーンでは、取引先やお客さまといった『社外の人』に対して使うのが一般的でしょう。
社内の上司や先輩に対して、ご厚情を使うのは、やや堅苦しい印象があります。相手を立てる表現のため、自分と同等の相手や目下の相手には使いません。
「ご厚情のお気持ち」は誤り
ご厚情を使うときは、重複表現(二重表現)に注意しましょう。重複表現とは、文脈の中で同じ意味の言葉を繰り返し使うことです。
ご厚情という言葉の中には、『心』『気持ち』『情』という意味が含まれているため、『ご厚情心』や『ご厚情のお気持ち』という表現は誤りです。また、『深いご厚情』『厚いご厚情』も、『深い』『厚い』という意味が重なっています。
冠婚葬祭のあいさつや、フォーマルなスピーチで用いるケースが多く、使い方を誤ると、その場にいる大勢の人が違和感を覚えるでしょう。
「ご厚情」の類語は多い
類語には、『ご厚意(ごこうい)』『ご高配(ごこうはい)』『ご厚志(ごこうし)』などがあります。
ご厚意は、目上の人からの親切や思いやりを指す言葉です。ご厚情は、主にフォーマルな場面で使われるのに対し、ご厚意はビジネスシーンの会話でも使えます。
ご高配の意味は、目上の人からの配慮や心配りです。相手が自分を引き立ててくれたときは、その行為や結果に対し、「ご高配をいただき誠にありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えます。
ご厚志は、目上の人からの深い思いやりや親切心を指しますが、ビジネスシーンでは、『目上の人からいただいた金銭』を意味する場合もあります。
例えば、歓迎会や新年会に際し、上司からお金をもらった場合、幹事は乾杯の前にcと報告するのが一般的です。
「ご厚情」の例文をシーン別に紹介
ご厚情は、日常会話ではほとんど使われない言葉のため、意味は知っていても使い方が分からないという人は少なくありません。シーン別に例文を挙げて紹介します。
あいさつやスピーチで使う場合
ご厚情は、冠婚葬祭や式典のあいさつ、昇進・就任のスピーチといったフォーマルな場面にふさわしい言葉です。例えば、告別式や送別会では、これまでお世話になったことへの感謝の気持ちを伝えるために、ご厚情を使います。
昇進・就任のスピーチでは、「ご厚情にお応えできるように、精いっぱい頑張ります」という言い回しが使えるでしょう。個人に対して使うこともあれば、広く大勢に使う場合もあります。
【例文】
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今回の辞令により、関西支社へ異動する運びとなりました。皆さまの多大なるご厚情に、心から感謝申し上げます
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本日は、創立記念式典に足を運んでいただき、誠にありがとうございます。30周年という節目を迎えられたのも、皆さまのご厚情とご支援のおかげです
書面やビジネスメールで使う場合
年賀状・お礼状・あいさつ状などの書面およびビジネスメールでは、相手のご厚情に対する感謝を伝えるのが一般的です。弔電を出す場合には、『生前のご厚情に深く感謝いたします』として、故人の温情に感謝を示します。
【例文】
- 旧年中は格別のご厚情を賜り、ありがとうございます。貴社のますますのご発展を祈念しますとともに、本年もより一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます
- このたびはご厚情あふれるお言葉とお祝いの品をいただき、感謝の言葉もございません。まだまだ未熟ではございますが、〇〇部長のお言葉を胸に刻んで、精進してまいります
「ご厚情」を用いたフレーズ
ご厚情は、日常会話ではほとんど使われない、かしこまった表現です。言葉の使い方を間違えると、相手に礼を欠くため、フレーズで覚えておくとよいでしょう。あいさつ状やスピーチでよく使われるフレーズを紹介します。
ご厚情痛み入ります
『ご厚情痛み入ります』の『痛み入る(いたみいる)』とは、相手から懇意や恩義を受けた際に、深く恐縮することを意味します。
単なる感謝と違い、自分にはもったいない・恐れ多い・申し訳ないという気持ちが含まれているのが特徴です。謙遜表現の一つで、上司や取引先、お客さまといった目上の人にしか使えません。
【例文】
- 激励のお言葉をいただいた上に、すてきな花束まで頂戴し、ご厚情痛み入ります
- プロジェクトに参加できるようにお口添えいただいたと聞き、ご厚情痛み入る思いです
相手から、「ご厚情痛み入ります」と言われた場合は、以下のように返答しましょう。
- こちらこそお気遣いいただきありがとうございます
- とんでもないことでございます
- お気になさらないでください
- お気になさらずに
ご厚情に深謝いたします
『ご厚情に深謝いたします』は、目上の人のご厚情に感謝を伝えるフレーズです。『深謝(しんしゃ)』には、深い感謝と深い謝罪の二つの意味がありますが、ご厚情の場合は、深い感謝を意味します。『御礼』『感謝』よりも、よりフォーマルで丁寧な印象を与えるでしょう。
【例文】
- 平素のご厚情を深謝いたしますとともに、皆さまのますますのご繁栄を心からお祈り申し上げます
- 父が生前に賜りましたご厚情に深謝いたしますとともに、皆さまのご多幸を心よりお祈り申し上げます
深謝には「深く感謝する」「深く謝罪する」という意味なので、『とても』『大変』などの意味を強める副詞は不要です。『深謝いたします』『深謝申し上げます』とストレートに伝えましょう。
ひとかたならぬご厚情を賜り
『ひとかたならぬご厚情』とは、並々ならぬご厚情と同義です。『ひとかたならず(一方ならず)』は、物事の程度が普通ではないことを意味します。
『賜る(たまわる)』は「もらう」の謙譲語であり、『ひとかたならぬご厚情を賜り』は、相手から並々ならぬご厚情を受けたときに使うフレーズで、後に感謝の言葉を続けるのが通常です。
【例文】
- 平素はひとかたならぬご厚情を賜り、心より感謝申し上げます
- 昨年中はひとかたならぬご厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます