ポイントその3)
OODAは変化に瞬時に対応できる考え方のひとつ
PDCAサイクルでは品質やサービスの向上、環境保全、企業の存続といった一つの目標に対して、永続的にサイクルを回しながら活動を続ける。しかし、OODAループははっきりとした目標や目的が無い。課題が出た時に、瞬時に正しい判断を下すための思考法である。
コロナ禍や自然災害など、これまで体験したことが無かったような事態においても、瞬時に正しい判断が求められる時代になっている。経営においても、従来の考え方が通用しない。絶え間なく変化するニーズを捉え、現状に合った行動ができる考え方が求められるようになってきた。
特にボイド氏はOODAの最初の Observe(観察)で、仮説等の先入観を持つことなく、公平かつ客観的に観察すべきだと強く訴えている。過去のしがらみにとらわれることなく、今現在の状況を正しく観察することが大切だとも主張している。
また、戦闘機乗りは上司からの判断や指示を得ることなく、ひとりで正しい判断を下さねばならない。教育や指示を受けなくても、社員が独自で正しく判断できる思考が身に付けば、組織にとっての負担は大きく軽減される。経営者が、OODAループに飛びついた理由のひとつでもある。
■あらゆる領域で適用できるOODA
OODAループを提唱したボイド氏は軍人としては破天荒で、戦闘機マフィアや、空軍のジンギス・カン(ジンギス・ボイド)とあだ名で呼ばれていた。しかし、その考え方は実践的で、あらゆる領域で適用できると高く評価されている。最後にOODAの4つの要素を解説しながら、ビジネスシーンでの応用を紹介しておこう。
Observe:観察
周囲の状況を観察する。
ビジネスシーンでは、固定概念や期待する想定に固執することなく、あらゆる情報を収集し、市場の動向や環境変化など現状をできるだけ正しく認識する。
Orient:方向づけ
観察したものが何を意味するのか、現在の状況を的確に判断し、方向づけをする。
ビジネスシーンでは観察によって入手した情報を、過去の経験にもとづくアイデアなどと組み合わせて、行動の順序や手段を決定する。
Decide:意思決定
状況判断に従って、どのように実行していくかを決定する。
ビジネスシーンでは、経営者ならば組織をどうしたいのか、社員ならばどう仕事をしたいのかを確認し、考えられる選択肢をなるべく多くリストアップし、そのなかでもっとも効果的だと思えるものを選択する。
Act:実行
決定に従って行動する。
ビジネスシーンでは実行後、再び観察に戻ったり、観察や状況判断をそのままにして瞬時に新たな意思決定を行っても良い。また、実行した結果にはこだわることなく、失敗だったとしてもそれを次のループをまわすための情報と捉える。
OODAでは想定外のことが起きた場合の対処が前提となっているため、ビジネスシーン以外でもたくさんの応用が効く思考法となっている。特に問題点を把握できないまま、売り上げが下がっているケースや、新規事業展開といった明快な答えが見つかりにくいケースなどで、威力を発揮する。知っておくだけでも、いつか必ず何かの役に立つこの思考法、困った時のウーダと脳裏の片隅に置いておきたい。
参考資料
経済産業省資源エネルギー庁ISO50001エネルギーマネジメントとは
文/柿川鮎子