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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
Xさんが、動悸息切れを患う病気に罹患。
会社
「あなた、現場監督できる状態じゃないですよね」
Xさん
「事務作業ならできるんですが」
会社
「無理です。自宅待機してください」
Xさんは「事務作業ならできる」と書かれた診断書を根拠に再び申し入れましたが、会社は自宅待機命令を継続。4ヶ月分の給料を払わず、ボーナスも一部カット。
―― 裁判所さん、鉄槌を。
裁判所
「Xさんは事務作業できるっつってんじゃん!給料とボーナス払え」
(片山組事件:最高裁 H10.4.9 2)
以下、わかりやすく解説します。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
・土木建設の施工などを行なう会社
・従業員数 約130名
▼ Xさん
・現場監督(21年以上)
★会社との契約では職務内容が現場監督に限定されていなかった
どんな事件か
▼ 体調に異変が……
平成2年の夏、Xさんが現場仕事をしていた時、体調に異変を感じました。病院に行ったところ「バセドウ病」との診断を受けました。通常の症状は、動悸、息切れで、進行すれば心不全の危険がある病気でした。
しかし、Xさんは病気のことを会社に伝えませんでした。「休め!」って言われて給料がなくなるのが怖かったのでしょう……。
▼ 事務作業に移る
翌年(平成3年)の2月まで現監督業務を続けていましたが、担当する現場の工事が終わったので、その後は事務作業に配置変更してもらいました。
▼ 現場監督をせよ!
しかし、その半年後の8月、現場工事がスタートします。すると会社から「現場監督をせよ」との業務命令を受けました。
―― Xさん、現場に戻れるくらい病状は軽くなっていたんですか?
Xさん
「いえ。でも、戻らざるを得ませんでした。会社には『バセドウ病に罹患しているので現場作業はできない』と伝えたのですが、聞いてもらえませんでした……」
▼ 自宅待機せよ!
翌月、会社はXさんに対して自宅待機命令を出しました。「Xさんに現場監督業務は不可能」と判断したからです。「10月1日~自宅待機せよ」との命令です。
▼ 事務作業ならできます
10月12日、Xさんは会社に診断書を提出して「事務作業ならできます」と伝えました
(★ここ超大事です。「~ならできます」と伝えておきましょう)。
しかし、会社は診断書を見て「現場監督業務ができるとの記載がない」という理由で自宅待機命令を解きませんでした。
その後、翌年の2月4日までの約4ヶ月間、Xさんは働くことができませんでした。
―― その間の給料は?
Xさん
「ナシです……。12月のボーナスも一部カットされました。裁判を起こして請求しました」